東日本大震災からまもなく15年です。
岩手県宮古市出身で、震災を機にプロレスラーになった女性・MIRAIさんは、当時小学5年生でした。今度は自分が勇気を届けたいと奮闘しています。
Q:きょうは誰目当て?
プロレスファン
「MIRAIちゃん、かわいいから」
「MIRAI選手ですね。男性に負けないくらいのパワーとガッツがあるので」
試合前に笑顔でファンに挨拶するMIRAIさん(26)は、東北を中心に活動する団体「みちのくプロレス」に所属する唯一の女子プロレスラーです。
入団翌月の2025年12月、岩手県滝沢市にあるみちのくプロレスの道場で行われた3対3のタッグマッチに出場し、堂々と正面からぶつかっていく持ち味のストロングスタイルを披露し、集まったファンを魅了しました。
MIRAIさんがリングで闘う理由、そこには東日本大震災が深く関わっていました。
みちのくプロレス MIRAIさん
「震災のときに見たプロレスラーたちはヒーローみたいで、今度は自分がヒーローになってみんなに勇気や元気を届けていきたい。どんどん強さを見せていきたい」
MIRAIさんは海に囲まれた宮古市重茂半島の出身です。
現在は県外での試合に参戦することもあるため東京と岩手の2拠点生活ですが、帰省した際には、ふるさとの「浄土ヶ浜」を訪れ心を落ちつけています。
みちのくプロレス MIRAIさん
「お気に入りの場所です。宮古に帰ってきて『どこに行きたい?』と親に言われたときに、『海に行きたい、浄土ヶ浜に行こう』と連れてきてもらっていた」
小学生の頃から柔道に打ち込み、格闘技の道を歩んでいたMIRAIさん。
5年生だった2011年、東日本大震災が発生しました。
自宅は高台にあり家族は無事だったものの、漁業を営んでいた父親の船と作業小屋が流されるなど、津波の恐ろしさを目の当たりにしました。
みちのくプロレス MIRAIさん
「ミニチュアみたいに色んな物が壊れているし、車とか『そこにそんなものがいかないでしょ』という場所にいっぱいあったので、自然の力は怖いというのを実感した」
日常が一変した中、彼女の人生を決定づける出来事となったのが宮古市で行われた新日本プロレスのチャリティーマッチでした。
MIRAIさんは現在、両親とともに盛岡市で暮らしています。
自宅には10年以上かけて集めてきたというプロレスグッズがひしめいていました。
MIRAIさんは震災後に観戦したチャリティーマッチで、逆境に屈しないプロレスラーの姿と、復興に歩む町とを重ね合わせていたと語ります。
みちのくプロレス MIRAIさん
「『頑張れー!いけー!』って言うと『うんうん!』と。自分たちの声が届いて、立ち上がってまた闘う姿がすごくカッコいいと思ってひかれた」
その憧れを胸に、MIRAIさんは高校卒業後すぐにプロレス界へ入りました。
関東にある4つのプロレス団体を渡り歩いた後、2025年11月にみちのくプロレスに移籍しました。
闘う姿を見てもらうことが震災の被災地を勇気づけ、あの日の記憶を風化させないことにつながると考えたからです。
みちのくプロレス MIRAIさん
「『震災を通してプロレスラーになった人がいるよ』と伝えていけたら、(震災が)忘れられないと思うので、自分がもっともっと活躍して、プロレスラーになった経緯をみんなに伝えていけたらいいと思う」
MIRAIさんは2025年の年末から2026年の年始にかけて、女子プロレスの国内タイトルマッチで2つのベルトを獲得、大きな注目を集めるレスラーに成長しています。
多忙な生活の中で支えとなっているのが、両親の存在です。
かつてはプロレス界入りに反対していましたが、今ではほぼ全ての試合に応援に駆け付けているといいます。
母・まり子さん(58)
「プロレスラーにならなければ出会えなかった人たちがいっぱいいるので、行くのが楽しい」
父・邦彦さん(62)
「自分が選んだ道だから、いいのではないかと思った。けがだけが心配ですね」
みちのくプロレス MIRAIさん
「もっといいところをいっぱい見せられるよう、頑張らなければと思う」
2026年1月、MIRAIさんは一つの大勝負を迎えました。
400人の観客を前に、みちのくプロレスの創設者でもあるザ・グレート・サスケ選手との初めてのシングルマッチに挑んだのです。
MIRAIさんは序盤、スピード感あふれるロープワークからラリアットを連発、体格差をものともしない豪快な投げ技で何度もフォールを迫るなど、試合の主導権を握ります。
その後もたたみかけるように攻撃を仕掛けますが、一瞬の隙を突かれ「フロント・ネックロック」で敗れました。
勝利したザ・グレート・サスケ選手は試合後、MIRAIさんの戦いぶりをこう評しました。
みちのくプロレス ザ・グレート・サスケ選手
「やっぱり強い、さすが2冠王。簡単に追い越されてしまうのではないか。それはそれで、追い越されたときは私はうれしいと思う。大いに追い越してほしい」
MIRAIさんは惜しくも敗れましたが、その果敢に攻め続ける姿勢は子どもたちの胸に響いていました。
観戦した小学生
「やられてもあきらめないで、立ち向かっていったところがカッコよかった」
「カッコよかったです。MIRAIちゃん次の試合は絶対勝ってね」
地元からの真っ直ぐなエールは、さらなる成長への原動力となっています。
みちのくプロレス MIRAIさん
「(会場を)試合前に通っていくときに『頑張ってね』と小さい子が言ってくれて、すごくパワーになる。MIRAIみたいにプロレスラーになりたいと言ってくれる子が出てくるように、もっとカッコいいヒーローになりたい」
震災後の宮古市でプロレスに魅了された少女は、あれから15年後の未来でリングの上から勇気を届ける存在になっています。