東京都の環境局に対して、2024年度を対象に公認会計士による外部監査が実施された。

5年で予算は4倍以上に

環境局を監査の対象にした理由として、「2024年度の環境局全体の予算(環境費)は5年前の2019年度が417億円だったのに比べて、4倍以上の1758億円となっている点。そしてそのうちの1379億円はゼロエミッションの実現にかかる予算となっているなど、内容の進化や規模の増大が著しい。重要施策・事業だけに、改めて課題を整理する時期に差し掛かっていると思われる」としている。

監査報告では「環境局が所管するゼロエミッション東京戦略、東京都生物多様性地域戦略等、各種の計画・戦略に関して、EBPMの考え方に基づいているものの、ロジックモデルが明確でなく、行動変容や意識の変化、理解の促進などに関する指標も一部織り込まれていないなど、改善の余地がある」と示されたほか、来館者数が少ない東京スイソミルについては「運営規模の縮小などを検討する必要があると考えられる」など、様々な意見や指摘がなされている。

都が示した数値「誤解招くおそれ」

そのなかでも注目したいのが、家庭のゼロエミ政策における、当局が示した削減効果の数値に関する監査人の意見だ。

行政が作る発表資料や説明資料などに使う数値は、「東京都によると」として様々なメディアで発信されていく。
その数値に、監査人から意見が出されているのだ。

東京ゼロエミポイント事業は、省エネ性能の高いエアコン・冷蔵庫・給湯器・照明器具を購入または買い替ええをした都民の方に対して「東京ゼロエミポイント」を付与する東京都が実施する事業だ。

東京都は2024年当時、「15年前と最新のエアコンでは電力消費量が約23%削減」と削減効果について約23%だとしていた。
しかし、監査人が妥当とされる算出方法で計算したところ、削減効果は約8%だったとして、「試算された効果について誤解を招くおそれがある」と意見がなされている。

数値の算出条件に“差異”

なぜ2つの数字が出たのか―。
報告書は次のように説明している。

監査人が担当者に「23%」の根拠を確認したところ、比較元の2008年のモデルは平均値にした一方、比較先の2023年のモデルの型番については、最上位機種で削減効果を算出したと説明している。

この点について、監査人は「数値の算出方法について比較元と比較先の算出方法は同じであることが妥当」として、比較先も比較元同様、2023年製品の平均値で算出したところ削減率は約23%ではなく約8%であったとしている。

監査人は、「算定条件を明示せずに最上位機種の買い替ええ効果のみを記載し説明することは、 試算された効果について誤解を招くおそれがある。したがって、説明資料については、算定根拠を適切に表示するとともに、前提条件を揃えた数値を示すことを検討されたい」との意見を監査報告に盛り込んだ。

担当者は監査人に対し、比較先を最上位機種にした理由について、「当該事業では高効率機器に更なるポイントの上乗せを実施し、最上位機種への買い替ええを促すことを目的としているため」と説明したという。
一方で、監査人によれば、東京都環境審議会第54回企画政策部会(2024年8月26日実施)で、委員から「当事業における効果が限定的になっていないか」との質問も出ており、買い替ええ時の効果に関する数値は「委員の間でも関心が寄せられていたと考えられる」と監査報告のなかに記載されている。

行政が使う数値は、どうしても信じてしまいがちだし、それが正しいとさえ、思えてしまうことが多い。

しかし、今回の監査報告のように算出方法が記載されずに“誤解を与えかねない数値”が、行政の資料にも使われている可能性があると考えるべきであることがわかる。
(フジテレビ社会部 都庁担当 大塚隆広)

大塚隆広
大塚隆広

フジテレビ報道局社会部
1995年フジテレビ入社。カメラマン、社会部記者として都庁を2年、国土交通省を計8年間担当。ベルリン支局長、国際取材部デスクなどを歴任。
ドキュメントシリーズ『環境クライシス』を企画・プロデュースも継続。第1弾の2017年「環境クライシス〜沈みゆく大陸の環境難民〜」は同年のCOP23(ドイツ・ボン)で上映。2022年には「第64次 南極地域観測隊」に同行し南極大陸に132日間滞在し取材を行う。