岩手県大船渡市で発生した大規模山林火災から2026年2月26日で1年を迎える。被害面積は平成以降最大の3370haに及んだが、これまでに伐採が完了したのはわずか25haに過ぎない。復旧が進まない背景には、被災森林の7割を占める私有林所有者の負担問題がある。年金生活者には重い費用負担、そして倒木リスク。現場取材で浮き彫りになった森林再生への険しい道のりを追った。

焼け焦げた森に残る深刻課題

2025年2月に発生した大船渡市の大規模山林火災は、平成以降国内最大となる3370haの森林を焼失させた。
火災発生から1年が経過した現在も、被災地には焼け焦げた木々が至る所に残されている。

焼け焦げた木々が至る所に残されている
焼け焦げた木々が至る所に残されている
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京都大学の峠嘉哉特定准教授は、被災した森林で定期的に延焼の経緯や被災木の状況を調査している。

京都大学・峠嘉哉特定准教授
京都大学・峠嘉哉特定准教授

峠准教授は「出火してから約2~3時間の間に約600haが焼けるという事例。延焼速度の速さ、範囲の拡大の仕方は桁違い」と火災の激しさを振り返る。

迫り来る倒木リスク

焼損度が『激』と言われる被災木は、上側の葉が完全に焼失し、水を吸い上げることができなくなっている。峠准教授は「ほぼ確実に木は枯死していく」と説明する。

木の上側の葉が完全に焼失し水を吸い上げることができない
木の上側の葉が完全に焼失し水を吸い上げることができない

火災により焼け枯れた被災木は倒れる危険性が高まり、人の生活圏に影響を及ぼす可能性が指摘されている。

被害木の表面
被害木の表面

峠准教授は「倒木してそれが流木になって、生活圏に流れる場合もある」と話し、災害を防ぐため、危険性が低いうちに被災木の伐採を進めるべきと呼びかけている。

火災により枯死し倒木の危険性
火災により枯死し倒木の危険性

京都大学・峠嘉哉特定准教授:
これから枯死した木が、構造的にも弱くなり倒木が懸念されると作業ができなくなる。そういう状態になる前に、できるだけ多くを伐木することが今は必要。

復旧が進まない現実

しかし、復旧の取り組みは思うように進んでいない。2025年度にこれまでに伐採が行われたのはわずか25haで、被害面積の1%にも満たない状況だ。

思うように進んでいない復旧作業
思うように進んでいない復旧作業

復旧が進まない要因の一つに、被災した森林の7割ほどが"私有林"であることがあげられる。

費用面や高齢化などを理由に復旧をためらう所有者も多く、2025年10月に市が行った調査では、復旧を希望する私有林の所有者は52.3%にとどまり、47.7%が復旧を希望していない。

年金生活者の重い負担

赤崎町合足に住む古内嘉典さん(67)は、所有する森林のうち被災した8haについて復旧を希望したが、費用負担に頭を悩ませている。

所有する森林が被災した古内嘉典さん(67)
所有する森林が被災した古内嘉典さん(67)

「一番(の問題)はお金ですね、年間何十万もかかるので。年金生活者だから、どうしようかなと思っている」と話す古内さん。

復旧に当たっては市が主体となって被災木の伐採や植林を行うが、所有者には10年間の森林保険加入や、刈り払いで1haあたり4万8000円を5年間支払うことが義務付けられている。

古内さんは「(市に)お願いしますと言ってしまったので、何とかしなければならない。下草刈りの助成とか、保険は仕方ないが、(金銭的な)支援をお願いしたい」と支援の拡充を求めている。

被災木活用の新たな試み

一方で、森林再生を後押しする県の取り組みも始まっている。
2月12日から2日間、東京ビッグサイトで開かれた「WOODコレクション」で、県は山林火災の被災木を使った製品を展示した。

「WOODコレクション」で被災木を使った製品を展示
「WOODコレクション」で被災木を使った製品を展示

県などが2025年に行った強度試験では、被災木が健全な木材と比べて遜色ないと評価されている。
これを受け、県森林組合連合会など5つの企業・団体が「TEAM森林再生大船渡」を結成し、強度に優れた合板を製造している。

被災木の強度試験
被災木の強度試験

チームの一員で都内の木材流通会社の勝田幸仁朗さんは、「木を使い、森が再生するためにはお金がいるので、必要以上の安価にならないよう頑張らないといけない」と、さらなる需要喚起と販路拡大に意欲を示している。

東京ビッグサイトで開かれた「WOODコレクション」
東京ビッグサイトで開かれた「WOODコレクション」

県林業振興課の菊地明子林業・木材担当課長は、「利用先が生まれると伐採が進み、そこに植林すると復旧につながる。需要を生み出していかなければならない」と話し、今後もイベントなどに出展し、被災木の利用促進を図る方針だ。

長期戦への覚悟

森林の再生には数十年かかるとされている。
峠准教授は「大規模な領域を(いきなり)全て伐木し、復興するのは現実的ではない。今はできるだけそのような(被災木が残る)所を減らす。残存した木とどのように付き合うかを考えなければならない」と指摘する。

京都大学・峠嘉哉特定准教授
京都大学・峠嘉哉特定准教授

大船渡市は今後補助制度の拡充など、負担軽減に向けた対応を検討する方針だ。

被災木の伐採作業
被災木の伐採作業

被災木の伐採や植林を支援する国の森林災害復旧事業の期間は、2028年度までとなっていて、国の事業終了を見据えた財源の確保も念頭に、2026年度から本格的な私有林の復旧に取り組むとしている。

上側の葉までが完全に焼失し被災木の間から海が見える
上側の葉までが完全に焼失し被災木の間から海が見える

森林の再生を巡る様々な課題が浮き彫りとなる中、一つ一つの問題に向き合い、復旧のあり方を模索することが求められている。

岩手めんこいテレビ
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