“デジタル後進国”日本のデジタル化に向けて重要な「人材確保」

菅首相が国会での所信表明演説でも力を込めて訴えた目玉政策「デジタル社会の実現」。コロナ禍を受けての現金10万円給付でオンライン手続きに不具合が生じるなどし、日本が“デジタル後進国”であるという側面が表面化したのを受け、政府はデジタル化の司令塔となる「デジタル庁」を来年中に発足させるべく準備を急いでいる。

菅首相
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平井デジタル改革相は「今このデジタル庁というもの、状況でいいますと何もありません。人・モノ・金、根拠となる法律もない、なんの権限もない」と現状はまさにゼロベースだと強調しているが、年内には基本方針を策定し、年明けにはデジタル庁を発足するために必要な法案を国会に提出する方針だ。

平井デジタル改革相

そのデジタル庁が司令塔に相応しい能力を発揮するために不可欠なのが、各省庁からデジタル化に関わる人や予算を集約することだ。一方で「自分たちの予算や権限を奪われる」として各省庁の抵抗も予想され、政府内にはデジタル庁が十分な力を持った存在となれるかは「未知数の部分も多い」(内閣府関係者)という懐疑的な見方もある。

こうした中、自民党側のキーマンの1人としてデジタル庁設置を推進している人物がいる。この10月から自民党のデジタル社会推進本部の事務総長に就任した小林史明衆院議員だ。

小林史明衆院議員

小林氏は国会議員になる前にはNTTドコモに勤めた経験もあり、これまで総務大臣政務官などの立場で情報通信関連の規制改革などにも関わってきた。そしてこの1年間は党青年局長として自民党のデジタル化を考えてきた。小林氏は政府全体のシステムを更新していくデジタル庁の成功のカギについて次のように語った。

「なにより人。人材をいかに確保できるかということが一番大きいです」

人材確保に必要なのは「給与」に加え「やりがい」「転職に有利」も

小林氏が強調したデジタル庁にとっての人材確保の重要性。特に民間から「優秀なエンジニア」や「サービスをデザインできる人材」を確保することが、行政サービスをデジタル化する上での必要条件だと指摘した。その上でいま、その人材確保という点に不安を感じるという。

「給料だけでなく、特にエンジニア関係の人たちは世の中のためになるかという部分を志としてもっている方が多いので、誰と働けるか、そしてどんな意義ある仕事ができるか、こういうところを総合的に見て日ごろから仕事を選んでいる人が多い」

小林氏は、民間からのいわゆるヘッドハンティングにおいては給与面の待遇に加えて、デジタル庁という組織の雰囲気や仕事自体の魅力・やりがいが重要だと語る。さらに「ここで働ければ5年・数年かもしれないけど、非常に大きなキャリアアップが得られることも必要」と付け足し、“デジタル庁勤務後に転職する際のメリット”を感じてもらう重要性を強調した。

デジタル化の「小さな成功体験」を積み上げることが大切

そして小林氏は、昨年秋からの1年間に自民党青年局でデジタル化を進めた経験を「なかなか大変だった」と振り返りつつ、デジタル庁の成功に向けて共通する要素があると指摘した。

「青年局ではまずはオンライン会議を有志でやることから始めて、小さな成功体験を作りました。デジタル庁でも、働く人たちを確保して、しかもモチベーション高くやっていただくには、やはり各省庁や自治体、そして国民の皆さんが小さな成功体験を1個1個積んでいって、行政がデジタル化するってことは自分たちの生活が便利になる、自分たちが自由になるということを感じることが重要だと思います」

小林氏が指摘した“小さな成功体験”の積み重ねの重要性。その仕掛けは政府のデジタル化に関しても既に始まっているという。

「実はハンコの問題。ハンコなくせるならFAXもなくせるんじゃないかと。これは成功体験ですよ。国民の皆さんにもこの成功体験を積んでもらいたい」

菅政権発足直後から河野行革相を中心に政府が取り組む「行政の脱ハンコ化」が成功体験になりつつあるというのだ。ただし政府与党内からは「ハンコだFAXだなんて、市町村の行政じゃないんだから。いちいち国が声高にアピールするようなものじゃない」(自民閣僚経験者)などと批判的な声も挙がっている。それだけに小林氏は。こうした改革は国民と一緒に進めていくことが大切だと強調した。

河野行革相

「置いてきぼりになっている人を見落とすと、最後はその人にブレーキを踏まれるということがあります。だから、先進国を追い越していくためには、国民と一緒に前進することですよ。やはり難しいものを説明せずに放っておくといつかそれがしこりになって出てくる」

「デジタルだけが行政ではない」デジタル庁に対する行政内の納得も必要

デジタル庁の設置に関わる人たちを取材すると、“日本に今までにないモノを作る”という熱気を感じるときがある。しかし、「別にデジタル関係だけが行政で大切なわけではない」とデジタル庁発足に向けた動きを冷めた目で見つめる関係者もいる。

平井大臣も「(デジタル庁に)反対されるというよりもやったこと無いので、みなさん多くの方が躊躇するということはあるのかもしれない」と政府内でもデジタル庁については様々な受け止め方があることを認めている。サービスを受ける国民はもちろん、それを提供する行政側も納得した形で作り上げなければ、デジタル庁の真の価値は生まれないのだろう。その行方を見守りたい。

(フジテレビ政治部 福井慶仁)