「 女の私じゃ成功できないの!」

日本でも4月公開予定の映画「ヴァイス」で元米副大統領ディック・チェイニーの奥様リンが、大学を追い出され飲んだくれのディックに叫びます。1960年代はじめのエピソードですが、当時 アメリカ人女性の大学進学率は2%、働く女性は22%。給与格差も大きく職種も限られていました。

リンの時代、女性にとって衣食住を満たし社会的地位を得るには結婚が必要だったのです。

ピューリサーチ公式HPより
ピューリサーチ公式HPより
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それが2012年ピューリサーチセンターの調査では1960年に8%だった未婚率が17%に倍増しており、今後未婚女性はますます増えていくと言います。

そこで年末年始にかけて仕事と休暇で東西南北アメリカ中を駆け回り、いく先々で「未婚が増えているのはどうしてだと思う?」と大勢の女性に話を聞いたら、なるほど、な事実が浮かび上がってきました。
 

選ぶ側に回った女性

女子の高等教育を支援する全米最優秀女子高生コンクールの代表と過去の参加者(右端がボークさん)
女子の高等教育を支援する全米最優秀女子高生コンクールの代表と過去の参加者(右端がボークさん)

それは、女性の生きる道に男性以外の選択肢が増えた、ということ。

まずは女性の経済的自立です。現在女性の大学進学率は71%で男性の61%を超えており、女性の働く割合は2010年に66%となり初めて働く男性の割合を超えました。1960年には男性に対して7割だった女性の給与も2012年には男性100に対し女性は93、また3割の女性は男性よりも収入が多いという調査結果もあります。

女性の経済的自立とキャリア構築が可能になった今、衣食住そして社会的地位を得るために結婚は必要じゃなくなりました。

そして多様化した女性の生き方があります。キャリア、同棲、シングルマザー、人工授精、中絶など、時代の流れとともに女性は選択肢を広げてきました。多くのカップルは結婚前にまたはずっと同棲を選び、その数は1990年から2007まで88%も上昇しています。

4割の赤ちゃんがシングルマザーの元に生まれ、ピルで何人子供を産むかの決定権を握り、卵の冷凍保存でママの年齢も様々。科学の進歩は一人での妊娠を可能にし、中絶は女性を望まない結婚から解放しました。結婚という契約自体が古すぎるという声すらあります。

同ピューの調査で未婚女性の5割が、20代においては67%が「結婚より大切なことがある」と答えています。離婚率45%、男性のフルタイム率は1960年の93%から2012年には82%に減少している今、結婚は安定を保証するものではなく、生きるための唯一の選択肢でもなくなりました。 女性は生き方を選べる時代となったのです。

未婚という選択肢

一人の充実感を存分に味わっていた留学当時の写真
一人の充実感を存分に味わっていた留学当時の写真

「食べさせてもらう」よりは「自分で稼ぐ」方が確実で、自由に家計をやりくりし、下手したら職を失った夫の面倒を見るなんてこともなく、子供を作るか作らないかの決定権を握り、離婚時に面倒な結婚という契約を結ぶ必要はない。

なるほど、な未婚の理由ですよね。

未婚といえば私に「結婚だけが女の幸せなのだろうか?」と考えるきっかけを作ってくれたのは母でした。私は30歳で3年間留学しますが、その間毎週土曜日「早く結婚して!」と母が電話をかけてきたのです。プレッシャーから勉強そっちのけで無毛な婚活に奔走した挙句に思ったことは、留学先でまで人生の目的が結婚だなんて、私の人生って何?

その時から私の留学は経済的に自立して、自分らしい人生を生きるためのものと変わったのです。

女性支援に奔走する男性

経済的にも精神的にも自立した女性が自分らしい幸せな人生を選ぶ。その過程に未婚や結婚という形の選択があると思っています。

私には20歳の娘がいますが、彼女に願うことは、幸せに生きること。幸せの形は関係ありません。私は結婚という形を選びましたが、バツイチシングルの友人たちはみんな口を揃えて「結婚はもういい」と言います。経済的に自立していて夫の面倒を見ることはなくシングルの友人が周りにいて、デートサイトもある。そんな「ぼっちじゃない一人が楽しい」のだそう。わかるなあ、その気持ち。夫には悪いけど(笑)。

未だかつてこれほど女性に可能性と選択肢のある時代はありませんでした。 だからこそ女性は自分らしい幸せの形を探し求めていいのではないでしょうか? 

女性の未婚が増え結婚以外に幸せと安定を手に入れる選択肢が増えた今、結婚したいアメリカの男性は選ばれる側となりました。育児と家事の手伝いが嫌、なんて言っていたら結婚はもう遠い話かも。だからでしょうか、結婚したアメリカの男性は育児と家事をバッチリこなしている人が多いようです。我が家も含めて。

執筆:ボーク重子

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ボーク重子
ボーク重子

Shigeko Bork BYBS Coaching LLC代表。ICF(国際コーチング連盟)会員ライフコーチ。アートコンサルタント。
福島県生まれ。30歳目前に単独渡英し、美術系の大学院サザビーズ・インスティテュート・オブ・アートに入学、現代美術史の修士号を取得する。1998年に渡米、結婚し娘を出産する。非認知能力育児に出会い、研究・調査・実践を重ね、自身の育児に活用。娘・スカイが18歳のときに「全米最優秀女子高生」に選ばれる。子育てと同時に自身のライフワークであるアート業界のキャリアも構築、2004年にはアジア現代アートギャラリーをオープン。2006年、アートを通じての社会貢献を評価され「ワシントンの美しい25人」に選ばれた。
現在は、「非認知能力育成のパイオニア」として知られ、140名のBYBS非認知能力育児コーチを抱えるコーチング会社の代表を務め、全米・日本各地で子育てや自分育てに関するコーチングを展開中。大人向けの非認知能力の講座が予約待ち6ヶ月となるなど、好評を博している。著書は『世界最高の子育て』(ダイヤモンド社)、『「非認知能力」の育て方』(小学館)など多数。