注目の政治家とフジテレビ平井文夫解説委員の対談シリーズ【平井文夫の聞かねばならぬ】
今月は、総裁選出馬への意欲を示す野田聖子総務相(兼:女性活躍担当相)に話を聞いた。
第1弾≪「7歳の息子の為に日本をちゃんとしなくちゃ」野田聖子女性活躍担当相が明かした想い≫はこちら

自民党総裁選へ出馬

 
 
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平井:
総裁選には出馬なさるんですか?

野田:
推薦人が確保できれば、出して頂きたいと思っています。

平井:
確保できそうですか?

野田:
まだやっていないです。安倍首相ともお約束をしたんですが、「大臣をしてほしい」と言われた時に支持率が低迷していたので、それを引っ張り上げる役割を仰せつかりました。「でも私、次の総裁選に出たいと思っている」と申し上げました。そうしたら、「それは結構だ」と。でも、2人の間では、「国会が終わるまでは大臣に専念するから」と言ってあります。会期延長になりましたので、しばらくは大臣職に専念するつもりです。約束をした以上、大臣職を通じて自民党政権を安定させたいと思っています。

平井:
ということは、安倍さんには「次の総裁選は前回のように妨害するな」と?

野田:
そういうことは言ってません。(笑)お願いします、と。

平井:
「足りない場合は(推薦人を)貸してくれ」と頼んだ?

野田:
「足りない場合は貸してくれ」ということは言っていません。

平井:
「貸してあげるよ」と?(笑)

野田:
そんなことも言っていません。なるべく自力で、無派閥の方とか、一緒に仕事をやってきた身近な仲間とか。前回、推薦人になってくれた人とも繋がっていますし、自ら取り組んでいこうと思っています。前回のように総裁選を「やらない」という方向を自民党が決めてしまって、すべての人が白い目で見て「反党行為だ」というようなことは今回は全くないです。
この3年でいろいろなお付き合いもできました。とにかく「やらない」という選択だけはしないでくれ、と。

平井:
ちなみに、前回は何人くらい集まったのですか

野田:
えーっ、もう時効ですか? 惜しかったですよ。

平井:
20人近かった?

野田:
近かった、というか超えていたんです。集まった人数は。だけど、そこから…

平井:
1人剥がされ、2人剥がされ…と?

野田:
やはり権力闘争ですから。それはやむを得ない。私もあの当時は突然だったし、自分にこの人たちの身分を保証できる裏付けはなかったから。

平井:
ということは、今回は、安倍さんがそういう妨害をしないと言っているのですね。

野田:
安倍さんは妨害していないですが(笑)いろいろな思惑があって…

平井:
では、20人集まりますね。

野田:
いろいろなところで申し上げているのは、「とにかく総裁選挙をやりましょう」ということ。自民党の持ち味というのは、多様性だし、開かれていること。
喧嘩はするけれど最後はまとまる。これが、他の党にはない自民党の持ち味なんだから、そういうのを見せましょうと。
安倍さんが「女性の活躍」と言ってくれているのだから、自民党の一角を成すような努力をしたいと。そう言っていると、以前は口も聞いてくれなかったような人たちも、多少は「そうだよね」と言ってくれるようになっています。
 

 
 

平井:
総裁選というのは、われわれ国民、有権者にとっては3年に一度、次の首相は誰になるのかという“顔見世興行”なんですね。

野田:
だからやらなきゃいけないんですよ。民主主義国家ですから、間接的であっても、誰かに選ばれなければ。

平井:
その人の政策もそうですが、人品骨柄も見定めて、「こいつはダメだ、こいつはいい」と国民は決めたいんですよ。そういう意味で、やったほうがいいと思うのですが、野田さんは来月か再来月には、政策集を発表するとおっしゃっていましたよね?

野田:
8月までにはできると思います。大臣になってからいろいろと学んで増えたので。
 

幼児教育の義務教育化と全入化を進める

 
 

平井:
野田さんは「女性が輝く社会」という言葉はあまり好きではないとおっしゃいます。
今、安倍政権で、例えば少子化対策として、保育園を増やしたり無償化したりしていますが、今後、女性が母親になった後ももっと働きやすくなるために、果たして保育園の無償化の方は意味があるのかなと僕は疑問に思うんです。
野田さんは、少子化対策としてどのようなことをするべきだと思いますか?

野田:
なんだか手の内を明かすようで…でも平井さんのその笑顔に騙されて話すとするならば(笑)
保育園の無償化というのは、やらないよりはマシだと思いますが、本来は、幼児教育の義務教育化、全入化を進めるべきなんです。
例えば、保育園の無償化というのは、保育園に入れる人が限定されたまま無償化なんです。でも私は、保育園、幼稚園という早期の幼児教育が、これからの日本のカギになると思っています。「人づくり」をしなければならない中、保育園は任意でしょう。行かせても行かせなくてもいい。幼稚園もそうですよね。そうではなくて、どんな子でも2歳、3歳になったら、幼児教育を受けるというかたちにする。ただでさえ子供が少ないのだから、質を上げていくためには、似て非なるものなんですよ、義務教育化と、無償化というのは。
義務教育化の場合は、保育園と幼稚園を合体して何か統一基準を作って、すべての子供が早いうちから親元を離れて、「園」で社会性を学び、さまざまな教育を受ける。これは実は、いろいろな問題の解決にもなる。

今、虐待がとても多いです。この間も、5歳の女の子が亡くなるという事件がありましたが、これは保育園などに行かせていないとわからないんですよね。でも、毎日小学校のように行かせるとなると、痣や傷などの様子がすぐに第三者にわかって、通報しやすくなって、事件を未然に防ぐことができる。今、10人に1人といわれている発達障がい児も、早期発見できると、早期のプログラムによって、さまざまな可能性が担保できるということが明らかになっている。そういったことを考えたときに、保育園の無償化というのは、相変わらず保育にかける親のためというか、措置的な部分があるので選別されてしまいますが、そんな時代はもうとっくに終わっているのではないかと。

 
 

不都合な真実を明らかにする

平井:
野田さんが安倍さんと一番違うところは何ですか?

野田:政策でいうならば、敵対しているというわけではなくて、スパン(期間)だと思います。安倍首相は、再選されても長くとも2021年までですよね。そこまでに、どうにかしようと考えられるんだと思います。
でも、私は2040年をターゲットにしようと思っています。
生きていますかね?私たち。

平井:
まだまだ生きてますねー。

野田:
2020年がハイライトイヤーだとすると、2040年というのは、その真逆の一番苦しい時。人はどんどん減り続ける。東京が人口減少に転じ、高齢者がマックスになる。私たちの子供達が社会の中核になった時、果てしない私たちの借金払いに負担をかけていいのか。今からでは遅いかもしれないけれど、それまでには不都合な真実を明らかにして、痛みを共有できる、信頼できる政治活動をしていきたいと思います。

平井:
「不都合な真実を明らかにする」というのは、例えば、無駄なものを切るということですか?

野田:
例えば、私たち国会議員の数を減らすと言いながらなかなか進まないこと。これまでのしがらみのない私だからこそ、「国民、有権者のための国会議員であるらば、どういう行動をとるべきか」ということを、志を同じくしている仲間たちと進めていきたいと思います。

私は結構なデータマニアです。データで見ると、間違った情報が伝わっていることがあります。
公務員が多いのではということで削減が続いていますが、実は、主要先進国に比べると公務員があまりにも少ないという実態があります。これからの日本の行政を司るシンクタンクが劣化しているかなと。
そのあたりももう一度、エピソードではなくてエビデンスを明らかにして、きちんと国民に「みんな公務員が多いと思って切ってきたけれど、実はそうではなかったんですよ」と示したい。人が減るということは、力がなくなるということ。
パブリックの土台をしっかりするには、どうすればいいのかということを新しく考え直さなければならない。

何でも「民」でと言ってきたけれど、その「民」のパワーがなくなる時代に入っている。「民」は儲からないところからは逃げてしまう。すでにGDPで見ると製造業はどんどんシュリンクして海外に行ってしまっているでしょう。「民」も大事だけれど、状況が悪くなった時には、やはりパブリックがすごく活きてくるんです。

また、一番問いたいのは「この国は民主主義国家ですよね」ということ。民主主義国家の源泉は、国民各自の「支え合い」です。そのひとつは、税を払っていくこと。今は、未来への借金に依存していますが、そろそろ私たち大人は、それもやめていかなければならないのではないかと。無責任に子供に背負わせている国家は、民主主義ではない。

そういう話をすると一部の学者さんたちは、財政がどうとか財務省寄りだとかおっしゃいますが、そんな小さな話ではなくて、民主主義を守るためにそれぞれが負担し合っていかなければならないと、丁寧に話したいと思います。
 

消費税”増税”はやる

 
 

平井:
2019年の消費税増税は、安倍さんはやると言っていますが…

野田:
これはやります。当然やっていかないと。
もうひとつ、日本特有の問題で、消費税を上げた後の落ち込み、これもやりようだと思うんです。
他の国々でも消費税を上げているけれども、ここまでにはならない。日本のやり方が、「価格転嫁をしてはいけません」と言いすぎた結果、上がる前に買って、いらないものまで買って、そうして上って、買いだめして落ち込む。

他の国々の取り組みも勉強しながら、「消費税をあげると景気が悪くなる」という言い方をせずに、もっと長期的に国の運営を考えていく。何でも借金ではなくて、人が増えなくてどんどん減っていくように、時代が変わったことを認識して、民主主義の中でどう生きていくかということをきちんと説明したいと思っています。
 

拉致か核かの選択を迫られたら

 
 

平井:
最後に、北朝鮮問題について。総裁選でも恐らく話題になると思います。
もしかしたら、日朝首脳会談もあるかもしれません。拉致問題が進展するかもしれませんが、解決した場合に、日朝平壌宣言で、拉致と核と両方解決すれば国交正常化するという取り決めがあります。拉致問題が進展すれば、日本も北との交渉に前向きになるべきだと思いますか? それとも、北は信用できないと、厳しく向きあった方がいいですか?

野田:
実は先日小野寺防衛大臣に会って「また変わった」と。北朝鮮は中国の習近平さんと会い「段階的に」と言ったようです。小野寺大臣に言わせると、この「段階的」というのは、「やらない」ということに等しいと。「また振出しに戻った」と私たちに報告してくれました。日替わりでコンディションが変わっていくので、私たちは、まずは落ち着かなければいけない。日朝をやるのはいいことだけれど、まずは北朝鮮と近しい国々からきちっと様子を聞くのも大事。向こうが言っているからといって単独で乗ろうというのは、一番危険なのかなと。

平井:
答えにくい質問だと思いますが、首相になったら決断をしなければいけません。
拉致と核とどちらかを選べと言われたら、どうしますか?

野田:
それは無理でしょう。そもそも、そういうことを言う人とは議論ができなくなってしまう。
私は、譲れないところは譲れません。
拉致の解決も具体的にどのようなことを意味するのか、特定されている人たちが全員戻ることを解決とするのか、そこもまだ日本の中で決まっていません。まだまだ、と伸ばされる可能性もあるので、あくまでも原理原則とこれまで積み上げて来たものの両方を主張し続けることが大事だと思います。
日本だけでは会談は成功しないと思います。他国も巻き込んで、昔の6者協議に近い形で取り組まなければならないと思っています。
 

日産のゴーンのように異端児として

 
 

平井:
総裁選は9月なので、あと3か月後ですが、勝てば総理大臣です。今の時点で、「9月から私が総理大臣です。安倍さんもうお引き取り下さい」と言う自信はありますか?

野田:
「お引き取り下さい」というよりも、バトンタッチをして、これから日本が歴史的にも危機的な時を迎える中で、これまでにない発想を持ってやっていきたい。
かつて日産が危機的な時に、全く見ず知らずのゴーンさんが来て、厳しいけれどもリストラをして立ち直ったように。
そのくらい日本のかじ取りというのは、危機的だと思っていますから。
決して前任者やこれまでを否定するわけではなくて、残念ながら時代は変わってしまったと。
それに追いついていく政策は、しがらみのない私が、今までにやっていないやり方でやっていくしかないと思っています。

平井:
日産のゴーンのように、「私が日本を再生させる」ということですね。

野田:
いつも思うんですが、リストラと女性活躍って本当に似ているんですよ。しがらみがあるとリストラはできないでしょう。男性を女性に変えることもできません。なので、よっぽど異端の人が来ないと…

平井:
ご自身が異端児だと?(笑)

野田:
私はど真ん中だと思っていますが、世間的には(笑)謙虚な気持ちで異端だと受け止めています。    

平井:
頑張って下さい。ありがとうございました。

野田:
ありがとうございました。
 

 
 

(対談:フジテレビ 平井文夫 上席解説委員)
(写真:フジテレビ 瀬井貴之)
(編集:FNN PRIME online)

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平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ報道局上席解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。