奇妙な会談

 
 
この記事の画像(5枚)

奇妙な会談だった。
外交は頭撮りを見ればすべてわかる、が私の持論。

今回は、トランプが、金正恩の父、正日に会った小泉純一郎のように、怒った顔で会うのか、あるいは、金正恩に会った文在寅のように、満面の笑みでハグするのか、楽しみにしていたのだが、意外にも、ハグもせず、当惑したようなこわばった笑顔だった。

金正恩の方はもっと緊張していた。
こういう場合は、うまくいかない。
 

「沈黙は金、饒舌は銀」

 
 

終了後の調印式と会見も妙だった。

2人は大きな成果があった、素晴らしい会談だった、と声を揃えたが、何が成果なのかは、最後まで二人とも明らかにできなかった。
トランプは何かに怯えるように意味のないことをずっとしゃべり続けていたが、金正恩はほとんど黙っていた。
まさに「沈黙は金、饒舌は銀」だ。
 

単なるB級政治ショーだった

 
 

トランプは事前に約束していた、CVID・完全かつ検証可能で不可逆的な非核化という言葉が声明に入らなかった理由を「時間がなかった」と言い訳して失笑を買った。

この人、本当にリーダーとして不適格ではないのか。

残念ながら、「歴史的な会談」ではなく、単なるB級の政治ショーであった。つまらない映画を見た後、時間の無駄だったと後悔するあの気分。

面白いのは、トランプがうまくいったと騒いでる割には、金正恩には何も与えていない。
軍事演習の中止は対話の間だけ、在韓米軍の撤退は可能性だけ、朝鮮戦争終結も約束してはいない。
制裁も続けるとしている。
 

こんな二人に歴史を変えることは出来ない

 
 

一方の金正恩も、当然ながら、非核化すると言いながら、具体的なスケジュールは何も示していない。

だから実は双方とも損はしてない。
損するのは真に受ける人だけだ。

この会談は決裂だけはかろうじて回避した、
と言うか互いの都合で決裂できなかった、成功と言うしかなかったが実は、何の合意も得られず、事実上の失敗であった。

 弾劾されたくない米国大統領と、命を助けてほしい北朝鮮の独裁者による、つまらない政治ショーはこれからも続く。

こんな二人に歴史を変えることができるのか?

(執筆:フジテレビ 平井文夫 上席解説委員)

平井文夫の言わねばならぬ】すべての記事はこちら

【平井文夫の聞かねばならぬ】すべての記事はこちら

【米朝首脳会談】関連のすべての記事はこちら

平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ報道局上席解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。