~今こそラグビー~その魅力②懐かしい習慣

カテゴリ:芸能スポーツ
提供:早稲田大学ROBクラブ

40代、50代のサラリーマンが酒を片手に「あの頃は良かったな~」などと昔を懐かしむ光景はいまどれくらいあるのだろうか。自分がその年代に達していて思うのだが、昔のラグビーは朴訥としていた。 プロ化が進み、ビジネスの側面を避けて通れなくなったラグビーだが、昔には昔の良さがある。今回は、昨今のラグビーでは決してみられない「懐かし」の慣行を紹介する。オールドファンは懐かしく、にわかファンは新鮮な気持ちでご一読を。

パンツは穿かず

試合で相手の突進を止めるため、必死の思いでジャージや短パンを掴む、というプレーは今回のW杯でも随所に見られた。掴まれた短パンがずり落ちて下のアンダーウェア「スパッツ」が見えてしまうこともしばしばだ。

南アフリカ戦(時事)

だが、このスパッツが出てきたのは90年代初頭。それまで短パンの下には何も穿いていない選手がほとんどであった。W杯でいえば尻が丸出しになっていたはずだ。大試合は昔からNHKで生中継されていたから、よく不体裁が出なかったな、と今にして思う。
実際に短パンが破けてしまうこともよくあった。その際は選手が円陣を組んで即席の「更衣室」を作り、その中で選手が短パンを穿き替えた。緊迫する試合が少しだけ和み、笑いがクスクス漏れる。そんな光景を覚えている方もいるだろう。
ちなみに当時の大学生の選手たちは寮周辺の日常でもパンツは穿かず、短パンのみを穿くのが常であった。夏冬問わずサンダル・短パン・Tシャツは、三種の神器である。

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魔法の水

繰り返される激しい衝突で、グラウンドに倒れる選手が見られるのは今も昔も同じだ。しかし以前はコールドスプレーやテーピングといった応急処置の道具はなかった。「メディカルサポーター」「セーフティーアシスタント」などという専門家もいない。持って行くのは薬缶に入った水だけである。

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しかし不思議なもので、その水を患部にかけると選手はむっくり起き上がり、プレーに復帰するのだ。「魔法の水」と呼ばれたが、実際タネも仕掛けもない、ただの水だ。
やかんが選手の元に届くまである程度時間がかかるので、それまでに選手が回復、そのタイミングで水をかけるので水で選手が蘇ったかのように見える、というのがよく言われる説だ。
頭を強打した際に行う「脳振とう」の検査も簡素そのもの。片足で立てれば「OK」だとしてプレーに復帰していた。試合の記憶がない選手などはいくらもいたが、その彼らも試合後に普通に酒を飲んで騒いだりしていた。今からは考えられないケアの仕方だが、以前はそれだけ「大らか」でもあったと言えるだろう。また、当時は戦術的に選手を交代させることは出来ず、ケガでプレーが不能になった場合にのみ選手交代が認められるルールだった。

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理不尽な練習

大学などでは体力や技術に劣る下級生を指導するのは上級生の大事な役割だ、という建前の下、1年生は時として特別練習を課されることがあった。グラウンドをグルグル回らされ、ランパスを繰り返し、とにかくひたすら走らされる。「上級生に生意気な口をきいた」「部室が汚かった」「無断欠席者がいた」など、下級生の「粗相」が理由になる場合もある。もちろん反論は許されない。

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早稲田では「シボリ」、慶応では「マワシ」と言われていた。
早稲田ではグラウンドを10周、ランパス10往復、ダッシュ10本が基本で「ジュウジュウジュウ」、転じて「焼肉」というシャレた命名がされていたが、走らされる1年生はたまったものではない。
特別練習の原因を作った選手は同期から叱責され、下級生同士の関係悪化にもつながる。当時は荒んだ人間関係に閉口したが、少子化が進んだ今は部員を大切に育てるため、この習慣はあまりないという。
ちなみに昔のグラウンドはほとんどが土だったので、選手は身体のあちこちに擦り傷があった。カサブタになる前の、傷口が湿った状態は「ビフテキ」と呼ばれていた。
「焼肉」といい「ビフテキ」といい、やはり選手は肉が好きなようだ。

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ラグビーはルールがどんどん変わる不思議な競技である。観戦者がより楽しめるよう、攻撃側に有利になるよう変更されたためで、過去の反則は反則でなくなり、過去の良いプレーが反則になってしまったこともある。
得点も「トライ」は5点が入るが、以前は4点。大昔はトライそのものに得点はなかった。元々トライは「ゴールキックにトライする権利が与えられる」の意味である。
ただ、どのようにルールが変わっても、仲間への信頼や対戦相手への敬意といった、根底に流れる思い、精神は今も昔も変わらない。
そんな世界を少しでも広く、深く知って頂きたいと願うばかりだ。

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(フジテレビ政治部デスク・山崎文博)

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