「子どもに『ここにいるよ!』と安心を与えられる距離感です。例えば、在宅勤務中に、子どもに『できるから大丈夫』と声かけしただけで、仕事に集中してしまうのは放置です。仕事をしながら、『ここにいるよ』と安心させる一つの方法としては、同じテーブルで作業したりするのがいいかもしれません」

見守りのベースは「子どもを信じること」だとボークさん。

大人でも、例えば夫が家事の過程をじっと見て、「野菜の切り方がおかしい」「洗濯のやり方が変」などと言われたらイヤなはずだ。そして、それは見守りではなく監視になる。

「いつかできるようになるよ、が大切です。その子を信じること」を親は意識してほしいという。親は子どもの“できる力”を信じて、自分でできる訓練の機会を増やす。それが、「自分でできる子」につながるのだという。

自分でできる子になるために大切なこと

自分でできる子になるために大切なのは4つ。「心の余裕・余白」「信頼」「見守る」「やり方を見せる」。

最後の「やり方を見せる」は、教えることと少し違う。子どもは何も知らないから「教えてあげる」のではない。ただ、やり方を知らないだけ。

子どもができないからやってあげたり、教えてあげたりするのではなく、やり方を見せてあげる。それが、やり方を自ら学ぶチャンスになり、「自分はできる」という自己効力感も養い「自分でできる子」のベースになる。

「非認知能力を育む上で、親ができる基本が『やり方を見せること』。そして、生き方を見せるんです。朝の支度もやりなさい!と命令するのではなく、やり方を共有する。問題解決の過程を見せることで、子どももやり方を学んでいきます。

学んだやり方を、どのように工夫して実践するかは子ども次第です。決して、同じやり方を強制してはいけません。教えた瞬間に子どもの中で“言われたから”になります。ですが、自分でやり方を見つけるとその影響はすごく大きく、次第に自分でやるようになるんです」

大切なのは、親が見せたことを、子どもがすぐに実行、理解するとは限らないという心持ちでいること。できるようになるまで、または見習うまで数週間後、数カ月後、数年後になることもあるのだ。

ボークさん自身も、子どもの頃に何気なく見ていた夢を追う母親の姿が、20年後に自身の身と重なったときに初めて、母親が見せてくれていた“生き方”を理解し、見習おうと思い、自分の生きる力になったという。

最後に、子育ては正解もなく、不安なことの連続で、「同じ年齢の子ができているのに、うちの子はできない」などと比較して焦ってしまうこともあるだろう。

そんな時は、「だから、何?」と自分に問いかけてほしいとボークさんは言う。

「比較は負けです。自分の子より上の子は世界のどこかにはいるので、必ず負けます。どんなに今いる場所で一番だとしても。本能で比較はやめられないかもしれません。だからこそ、自分で比較を“するか・しないか”を選びましょう。

もし、比較してしまっても、『そういう子もいるよね、でも私にとってはうちの子が一番、最高だから』と思う方が心の健康を保てますよね。何ができるとか、持ってるわけではないけど、私にとっては『うちの娘・スカイが世界最高』。だから、比較しませんし、比較したとしてもうちはうち、よそはよそを徹底しています」

誰もがみな子どものことを思い、「自分でできる子」に育ってほしいと願い、日々育児に奮闘しているだろう。これまでの子育てを変えるのではなく、少しだけマインドを変えることで違う景色が見えてくるかもしれない。

『しなさいと言わない子育て 普段の育児のままで子どもが変わる小さなしかけ』(サンマーク出版)
『しなさいと言わない子育て 普段の育児のままで子どもが変わる小さなしかけ』(サンマーク出版)

ボーク重子
Shigeko Bork BYBS Coaching LLC代表。ICF(国際コーチング連盟)会員ライフコーチ、アートコンサルタント。ワシントンDCで非認知能力育児に出会い、研究・調査・実践を重ね、自身の育児に活用。娘・スカイが18歳のときに「全米最優秀女子高生The Distinguished Young Women of America」に選ばれる。2006年アートを通じての社会貢献が評価され「ワシントンの美しい25人」に選ばれた。現在は、セカンドライフをライフコーチとして、全米・日本各地で子育てやママに向けたコーチングを展開中。著書に『世界最高の子育て「全米最優秀女子高生」を育てた教育法』(ダイヤモンド社)『「非認知能力」の育て方 心の強い幸せな子になる0~10歳の子育て家庭教育』(小学館)など多数

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。