鹿児島県産牛肉への信頼を大きく揺るがす事件に動きがあった。鹿児島県指宿市の畜産加工会社・水迫畜産が牛肉の産地などを不正に表示・販売していた問題で、元取締役の男が8月18日、食品表示法違反などの疑いで逮捕された。不正表示が行われた牛肉の一部は、県内8つの市や町のふるさと納税返礼品として納品されており、その寄付総額は7億5500万円余りに上る。

仕入れから在庫管理まで「1人で担っていた」

食品表示法違反と詐欺の疑いで逮捕されたのは、鹿児島市紫原1丁目に住む水迫畜産の元取締役・水迫政輝容疑者(55)である。

逮捕された水迫畜産元取締役・水迫政輝容疑者(2026年4月)
逮捕された水迫畜産元取締役・水迫政輝容疑者(2026年4月)
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警察によると、水迫容疑者は2023年9月、他県産の牛肉を鹿児島県産の牛肉と偽装して、県内の企業に納品した疑いが持たれている。さらに2023年10月には、産地を偽装した商品の代金など約145万円を事業者からだまし取った疑いも持たれている。今回の容疑で偽装が行われた牛肉は120パック、約60キロとみられる。

水迫容疑者は事件当時、水迫畜産の取締役として、仕入れや在庫の管理、商品に使う肉の指示を1人で担っていたとみられている。警察は2026年4月に水迫畜産の加工場などの家宅捜索を実施。押収した仕入れに関する書類などの証拠品や関係者の供述などから、水迫容疑者が故意に偽装を行った疑いが高まったとして逮捕に至った。

水迫容疑者は「確認不足が原因で、意図して偽装したわけではない」と容疑を否認している。警察は他の事業者への不正表示など余罪も視野に入れて捜査を進めている。

ふるさと納税返礼品にも波及 8市町・総額7億5500万円超

今回の問題の影響は、ふるさと納税制度にまで及んでいる。水迫畜産による不正表示牛肉が使われた可能性がある返礼品は、鹿児島県内8つの市や町に納品されており、その総件数は4万6124件、寄付総額は7億5515万円にのぼる。

市町ごとの内訳は以下の通りだ。

  • 枕崎市:1万3903件、約3億5300万円
  • 南九州市:2万1806件、約2億4100万円
  • 指宿市:3784件、約4900万円
  • 鹿屋市:2249件、約4800万円
  • 鹿児島市:2142件、約2500万円
  • 姶良市:1249件、約2000万円
  • 垂水市:506件、約1400万円
  • 伊仙町:485件、約560万円

寄付額が最も多い枕崎市の前田祝成市長はコメントを代読し、「ふるさと納税制度に関わる方々の信頼を損なう事態と受け止めている。改めて心からお詫び申し上げます」と述べた。

「意図的であったかどうか、非常に重要」 各首長が厳しく受け止め

関係する自治体の首長からは、あらためて謝罪や今後の対応への言及が続いた。

南九州市の塗木弘幸市長は「寄付者の皆様をはじめ、市民の皆さまからの信頼を損なうことになり、誠に遺憾。厳粛に受け止めている」とコメント。鹿児島市の下鶴隆央市長は「今回の逮捕、捜査の容疑が本市のふるさと納税に関わるものかといった情報収集であったり、やはり意図的であったかどうか、ここが非常に重要」と述べ、捜査の行方を注視しながら今後の対応を検討する姿勢を示した。

食肉業界からも憤りの声が上がっている。県食肉生活衛生同業組合の肥後辰彦理事長は「逮捕されるのは時間の問題だろうということで話をしていた。組合も非常に迷惑な話。これは刑事事件なので、今までの取り組みを反省してもらい、鹿児島の黒牛の信頼を取り戻すために取り組んでいかないといけない」と強い口調で語った。

塩田知事は「捜査中の事案であることからコメントは差し控えたい」としつつも、「食品の不適正表示が二度と発生することがないよう、国とも連携しながら食品表示制度の普及啓発の徹底に取り組んでいる」とコメントしている。

畜産県・鹿児島が誇るブランド牛肉への信頼回復に向け、今後の捜査の行方と各自治体・業界の対応が注目される。

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