高齢化や人口減少により、耕作放棄地が拡大する日本。
今、広島県にある離島で、イノシシが大繁殖している。海を渡って島に入り、今やその数は島民の数を優に超え、数と力で圧倒。
専門家はこの島を「将来の日本の縮図」として、警鐘を鳴らしている。

農作物を荒し、石垣崩してやりたい放題

雑木林の中に現れた1頭のイノシシ。
カメラを警戒したのか、少し立ち止まった。

兵庫県立大学の研究グループが設置したセンサーカメラにうつるイノシシ。少し立ち止まったが…
兵庫県立大学の研究グループが設置したセンサーカメラにうつるイノシシ。少し立ち止まったが…
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再び歩き出すと…その後ろには、小さなウリ坊の姿があった。
ウリ坊は次々と現れ、数えてみると、全部で8頭いる。

歩き出したイノシシの後ろには、全部で8頭のウリ坊が
歩き出したイノシシの後ろには、全部で8頭のウリ坊が

この映像が撮影されたのは、広島県の生野島(いくのしま)。周囲約12.5キロのこの島は、瀬戸内海に浮かぶ人の住む離島だ。

人が住む離島の、生野島(広島県)。20年ほど前までは、イノシシはいなかった
人が住む離島の、生野島(広島県)。20年ほど前までは、イノシシはいなかった

20年ほど前まで、この島にイノシシはいなかった。
しかし取材班が島を訪れると、倉庫の奥にイノシシを確認。

実は現在、島民の数よりもイノシシが増え、イノシシに占拠されたような状態だというのだ。
なぜ、そこまで増えたのだろうか。

泳いで海を渡るイノシシ。瀬戸内海は、島と島の距離が割と近い
泳いで海を渡るイノシシ。瀬戸内海は、島と島の距離が割と近い

兵庫県立大学・栗山武夫 准教授は、「瀬戸内海は割と島と島の距離が近いものですから、本州か四国から入ってきたイノシシが、そこで増えて。(より良い環境を求めて)近い隣の島に次々と移ってくると」と話す。

イノシシが、橋で繋がっていない島に泳いで渡ってきたのだという。

先週、兵庫県立大学の研究グループが、調査のため島に渡った。
研究グループは、イノシシの生息数を把握するため、2023年6月から島内にセンサーカメラを設置。

調査のため、島に入った兵庫県立大学の研究グループがカメラを設置
調査のため、島に入った兵庫県立大学の研究グループがカメラを設置

するとそのカメラには、冒頭で記した通り、警戒した様子で立ち止まるイノシシと8頭のウリ坊の姿が記録されていたのだった。

イノシシは畑のフェンスを乗り越え、農作物を荒らすほか、急勾配の斜面に築かれた石垣を崩すなど、やりたい放題。

画面右奥、石垣がイノシシによって崩されてしまったのだという
画面右奥、石垣がイノシシによって崩されてしまったのだという

今や、数と力で島民を圧倒しているのだった。

駆除が繁殖ペースに追いつかず 専門家「他の島でも次々と起こるのでは」

島の人に話を聞くと、
「島民、住んでるの何人だと思ってるの、8人しかおらんのやで(笑)。まぁそりゃイノシシは何十頭もおるわな。100頭じゃきかんのとちゃう?」との声が。

現在、生野島で暮らす8人のうち、最年少の西野道春さん(58)も、ほぼ毎日野生のイノシシと遭遇するという。
「抜本的な解決っていうのはもう無いし。これがあと10年続いて、もうみんな90歳近くになったら、一緒に出て(対策を)やりましょうというのも難しくなってきますよね」と話す。

生野島では、猟友会による駆除も行っているが、繁殖ペースに追いついておらず、数は増すばかりだという。

兵庫県立大学・栗山武夫 准教授は「将来の日本の縮図が、たぶん今、生野島で既に起きていて。他の島でも次々と起こるんじゃないかと危惧しています」 と警鐘を鳴らす。
(「イット!」9月26日放送より)

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