「未来だ」

米国の保守系の大衆紙「ニューヨーク・ポスト」紙はこの一言と共に、フロリダ州のロン・デサンティス知事が家族と共に選挙で勝利の祝福を受けている写真を9日の一面全紙に掲載した。

「ロン・デサンティスは、彼が共和党の未来であることを示した」

ニューヨーク・ポスト紙(9日)
ニューヨーク・ポスト紙(9日)
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本文の記事はこういう見出しで、次のように書き出す。

「古い諺に『犬が吠えても幌馬車隊は進む』というが、今回はトランプがうるさく吠えてもデサンティスは勝利に突き進んだ』ということだ」

いうまでもなく8日行われた中間選挙でデサンティス知事が大差で再選を果たした一方で、トランプ前大統領は数多くの候補者を擁立しながら有権者の反発を招いて苦戦させ、共和党の伸び悩みの原因になったと言われることへの当て付けに他ならない。

トランプ前大統領
トランプ前大統領

これを9日のワシントン・ポスト紙はもう少し素直に表現した。

「トランプは共和党の敗戦の責めを一身に受け、その間にデサンティスは地滑り的大勝利で輝いた」

ワシントン・ポスト紙(9日)
ワシントン・ポスト紙(9日)

さらに9日のニューヨーク・タイムズ紙はその先を予見する。

「これでロン・デサンティスは2024年の(大統領選の)共和党の最有力候補になったのか?」

ニューヨーク・タイムズ紙(9日)
ニューヨーク・タイムズ紙(9日)

今回の中間選挙は2024年の中間選挙の前哨戦のようにも位置付けられ、トランプ前大統領が共和党大勝の勢いに乗って出馬宣言すると考えられていた。その中でデサンティス知事は新型コロナ対策などで評価が高かったが、せいぜい副大統領候補にと言われていた。

それが今回の中間選挙で「トランプに代わる保守の新しい星」として俄かに注目され始めたもので、その評価は海外でも高まっている。

「トランプはバックミラーで見る存在(過去の人)になった」

デイリーメイル紙(9日)
デイリーメイル紙(9日)

9日の英紙「デイリーメイル」電子版の記事見出しで、米共和党関係者の次のような談話を紹介している。

「昨夜トランプの政治的棺桶に最後の釘が打ち込まれた。負けられない選挙だというのに彼の愚かしさ故に余りにも多くのものが負けたからだ。今こそデサンティスが(共和党という)船の船長になる時がきた」

フロリダ州知事選で勝利スピーチするデサンティス氏(9日)
フロリダ州知事選で勝利スピーチするデサンティス氏(9日)

トランプ前大統領は15日にも2024年の大統領選への出馬宣言を行うと言われるが、今米共和党にそれを素直に受け入れる余地はないのではないか。機を見るに敏な政治家が「負け馬」でなくとも「勝てない馬」に乗るわけがないと思えるからだ。

それでもトランプ前大統領は出馬宣言を強行するかもしれない。しかし米共和党の政治家の多くは、デサンティスという「勝ち馬」に乗って2024年に向かうことになるのではなかろうか。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。