映画は「観る」から「参加する」へ。自分が物語の登場人物になれる。
XRで新たな映画体験
新宿で開催された映画祭。会場にいる人はスクリーンを見ず、全員がヘッドセットを装着している。ここでは、映画界の常識を変える “日本初の試み”が行われていた。
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現実世界と仮想世界を融合したクロスリアリティー=XR。
「Beyond the Frame Festival」は、XR作品のみを集めた日本初の国際映画祭だ。
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XR映画は、観客がヘッドセットを装着して映画の世界の中に入り、ストーリーを体験できるのが特徴だ。ヘッドセットの世界をのぞいてみると…
黒瀬翔生キャスター:
今、ゴーグルの前に手を出したんですけど、私の手を認識しています。
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ベネチア国際映画祭にも入選したXR映画「Clap」。
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観客とコミュニケーションを取りながらストーリーが展開していく。
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黒瀬キャスター:
凄い!ヨーロッパの街並みに降り立ちました。ものすごく立体的です。
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観客が手をたたくと…
黒瀬キャスター:
私の手拍子に合わせて空き缶が落ちてきました。手拍子に合わせて動きが変わりました。
(主人公が)何か元気になったぞ。
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この場面では、観客の拍手が主人公を勇気づけ、ストーリーを先へ進める役割を果たしている。
XR映画「Clap」伊東ケイスケ監督:
今までの2Dの映画だと無かった表現だと思う。 (キャラクターを)回り込んで見ることもできるし、触れ合うこともできる。体験者が中に入り込んで視聴する新しい形で、XRならではだと思います。
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世界三大映画祭でもXR部門を常設
XR映画市場は世界で広がっている。
台湾のカオシュン映画祭では、XR映画の上映施設を常設。チケット収入は通常の長編映画部門とほぼ同等だという。
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さらにベネチア、カンヌ、ベルリンの世界三大映画祭でもXR部門が常設され、クリエイターを支援する動きが加速している。
今回の新宿での映画祭は、小田急電鉄と映画制作会社・シネマリープの共同企画。開催の狙いはあらゆる体験価値の向上だという。
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シネマリープ・大橋哲也代表取締役:
(小田急電鉄は)電車だけでなく色んな施設を持っていて、それこそ箱根があったりとか。そこをXRによって体験価値を高めていく狙いが元々あります。
海外の映画祭に行くと、同時にマーケットもあり、そこにXR業界や色んな業界があり、そこでどんどん新しい企画が生まれたりしているので、(日本と)ギャップがあるのでそれを解消できたらと思います。
XR映画ができてまだ5年とか6年。色んな演出が世界初というか、一番新しいものを見られる映画祭として毎年やっていきたい。
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購買行動を促進するXR活用
三田友梨佳キャスター:
一橋大学ビジネススクール准教授の鈴木智子さんに聞きます。
XR=クロスリアリティ作品に特化した国際映画祭ですが、消費者行動などを研究されている鈴木さんの目にはどのように映りましたか?
一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
新型コロナの感染拡大でリアルな体験が制約を受けたため、XRを楽しむ消費者の市場は成長していて、コンサルティング会社の予測では、XRは2023年までに世界で18兆円以上の産業になるとされています。
今回はXRの世界そのものを楽しむ映画ですが、いま多くの企業で顧客が商品やサービスの購入に至るカスタマージャーニーのプロセスの中で、購買行動の背中を押すアイテムとしてXRの活用が始まっています。
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三田キャスター:
XRをビジネスに活用するということですが、具体的にどのような例があるのでしょうか?
鈴木智子さん:
例えば、IKEAは拡張現実と呼ばれるARを活用して、インテリアを自宅に置いた場合どうなるのかを可視化して見せるサービスがあります。
また化粧品業界などでは、これまでオンライン上で展開する商品の見せ方は二次元の写真や動画に限られていましたが、XRを活用することでリアリティのある三次元な見せ方も登場しています。
簡単でシームレスな体験の提供を
三田キャスター:
XRというとゲーム分野が先行していましたが、すでに幅広い活用が始まっているんですね。
鈴木智子さん:
XRが活躍する場面の拡大が期待される一方、 まだ一部の方の楽しみとなっています。
例えば、VRを楽しむには高価なヘッドセットが、ARならハイエンドのスマートフォンなどが必要になることも普及への課題になっています。
XRの真の可能性を引き出すには、可能な限り簡単でシームレスな体験を提供することが大切です。
具体的にはARの場合、既に多くの消費者が使用しているアプリケーションやデバイスに組み込むことが出来ると普及を加速できます。
XR体験が多くの消費者にとって「当たり前」の状態になったときに、そこからさらに想像を超えた世界が広がることを期待したいです。
三田キャスター:
日常に溶け込んだ時に、XR技術は私たちの生活をより豊かなものへと進化させてくれているのかもしれません。
(「Live News α」3月14日放送分)