真冬の短期決戦と目された衆議院選挙は、蓋を開けてみれば自民党の圧勝に終わりました。
終盤の情勢調査の中央値をさらに上回る「上振れ」が起き単独で定数の3分の2を超える316議席を獲得し、1つの政党が獲得した議席数としては、戦後最多を記録しました。
関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」は2月9日の放送で、この歴史的勝利の背景を多角的に分析。
午後8時からの開票特番に出演した橋下徹氏は、「もうこれは当然の結果だと思う」と語り、高市早苗首相の勝負感と政治家スタイルを高く評価しました。
一方で、「法律全部通っちゃうから」と、巨大与党が生まれた後のメディアと野党、そして有権者の責任にも言及しました。
■「本来330議席」比例名簿不足が象徴する想定外の大勝
橋下氏はまず、316議席という数字そのものに注目しました。
【橋下氏】「実は14議席、比例の名簿に書き足らなくて、14議席が他党に移ってますから、これ合わせると本来330議席ですよ」
比例名簿の登載数が足りず、本来自民党が獲得できたはずの議席が他党に流れたという事実は、自民党自身も想定していなかった「大勝」を物語ります。
この解散については、コメンテーターや学者から批判の声もありました。しかし橋下氏は、「高市さんのこの勝負感に基づいた勝負、結果を出したこの状況、政治家としては立派だと思います」と評価しました。
ただし同時に、「僕はただ考え方違うところたくさんありますので」とも述べ、政策面での立場の違いを明確にしました。
■投票率56.26%、期日前は600万人増 動いた無党派層
総務省の発表によると、今回の投票率は56.26%。前回の衆院選よりも2.41ポイント上昇しました。真冬の悪天候が予想されたことが影響しているのか、期日前投票者数は前回より600万人増加しました。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は、「期日前に関しては出足悪かった。それが最後の1週間、後半ぐらいになって一気に上がった」と指摘。
さらに、「大体、投票率が高いと『無党派が動いた。自民に不利』と昔は言われてたんだけど、今は全くそういうのは関係ないというのが分かりました」と述べ、かつての選挙の「常識」が通用しなくなったことを強調しました。
また街頭演説の様子を「人気というよりは、熱狂に近かった」といい、「一目見に来た」という支持者が多く、高市氏への期待が単なる政策支持を超えて、「熱狂」のレベルに達していたことがうかがえます。
■永田町の匂いがしない政治家 橋下氏が見た高市スタイル
橋下氏は、高市氏の勝因を「雰囲気」という言葉で表現しました。
【橋下氏】「僕は高市さんと考え方が違うところたくさんありますけれども、政治家のスタイルとしては、高市さんのようなスタイルを僕は目指してきたつもり」
その象徴が、「飲み食い政治」との距離だと言います。
【橋下氏】「もうずーっと言ってきた“飲み食い政治”。高市さんからそういう雰囲気出ないじゃないですか。いわゆる“永田町臭”というか、永田町のにおいがしないわけですよ」
橋下氏が飲み食い政治を批判すると、東京の政治記者から「橋下は政治を分かってない」と言われることもあったということですが、「国民は高市さんのような根回しもしない、飲み食いも嫌い、でも政策は勉強する。働いて働いて働いてと、この雰囲気ですよ」と述べ、国民が求めるリーダー像が変化したことを強調しました。
【橋下氏】「熱狂を作るって、口で言うのは簡単ですけど、やろうと思ったらほんと大変。それは今までの積み重ねてきたものとかが雰囲気で出てきてる。そこに国民が支持をした」
■勝利の背景には「石破政権の反動」と鈴木哲夫氏
鈴木氏は、高市人気のもう一つの背景として、「石破さんの政権の反動」を挙げました。
【鈴木氏】「石破さんがなかなかやれなかった、その反動で今度のリーダーはやってくれるという期待感」
選挙戦中の高市氏の「討論会欠席」については…。
【鈴木氏】「討論会を欠席したりしましたよね。具体的な議論になるところは、うまく避けてきてる。これも、危機管理という意味ではプラス。だけど本当は、解散したのは高市さんなんだから、ちゃんと出てきて、僕は説明責任果たしてほしかった」
こうした戦術が結果的にはプラスに働いたと分析しつつも、民主主義の観点からは疑問符をつけました。
■野党の闘い方の変化
橋下氏は、自民党以外で自らの政策を積極的に打ち出していたのは「みらいと参政党と国民民主と、維新」だと指摘しました。
青木源太キャスターは「野党の闘い方」を考えないといけないと話します。
【青木源太キャスター】「(野党は)高市総理のネガティブなことばっかり言っていて、野党のそれぞれの政党が持つ政策が日本にとってどうポジティブなのかっていうことを、ほとんど言ってない」、「だから国会においても、つまらないことをいつまでも言うとか、揚げ足取りの質疑応答をするというのが、果たして野党の戦略として今後いいのかというのが、1つ分岐点になるんじゃないか」
橋下氏はメディアの政治報道の在り方についても指摘します。
【橋下氏】「これまでのように政治に、政権に文句ばっかり言ってるような政治批評、政治報道をやっても国民の耳に全然届かない。それから誰と誰が飯食ったとか、内部情報がこうだとか、そんな話もほとんど意味をなさない。しっかりとこれから高市さんが打ち出す政策について、政策論でメディアも議論していかなきゃいけない」
■中道改革連合の明暗 公明28議席、立憲21議席
連立与党を組む維新は36議席を獲得しましたが、中道改革連合は49議席にとどまり惨敗しました。
内訳を見ると、公明党出身者が全員当選し、前回の衆院選を上回る28議席を獲得した一方、立憲民主党出身者は21議席と公明党を下回る結果となりました。
鈴木氏は、中道改革連合の立ち上げについて、野田佳彦氏への一対一取材で聞いた裏話を明かしました。
【鈴木氏】「そもそも今回の選挙は、『新党までは無理だから、統一名簿、ここまで行こう』と構えていたら、公明党のほうから『新党』と言ってきた。だから野田さんとしてもびっくりして、でも『覚悟をそこまで決めてるなら行こう』となった」
しかし、「政策のすり合わせも、比例の上位も」公明党主導で進められたといい、「本当なら1位公明、2位は立憲とかそういうこともできたけど、公明に譲った。だから公明主導での新党」で、その結果、旧立憲側に反発が多く、「これが今後どうまとまっていくのか、難しいところだ」と鈴木氏は述べました。
関西テレビ江口解説デスクは「立憲民主党の支持者が中道改革連合についていけずに離れた可能性」を指摘しましたが、橋下氏は別の見方をします。
【橋下氏】「そんな票よりも、一番強いのは無党派層を捕まえられるかどうか。だから立憲の元々のガチガチのリベラル派の人たちが逃げたとしても、それを上回るだけの無党派層をつかめばいいわけなんですよね」
■「他人の力を当てにすることほど負け戦はない」橋下氏の痛烈な指摘
橋下氏は、中道改革連合の敗因について、国防にも通じる原則を持ち出します。
【橋下氏】「国の防衛でも言えることなんだけども、他人の力を当てにすることほど、負け戦になることはない。
自民党がなんで不甲斐なかったかというと、公明党の票を当てにしていた。で、今回、公明党の票を当てにできないから自分たちで必死になってやった。今回、立憲民主党が公明党の票をもし当てにしてたんだったら、その時点で負けですよ」
さらに、比例代表の議席配分についても批判しました。
【橋下氏】「しかも公明党に比例代表の議席を上位で与えたら、公明党が動くわけない、もうそこで当選決まってるんだから。もうその時点で、選挙目当ての組織マネジメントで、最初から負けが見えていた選挙だと僕は思っていました」
選挙後のインタビューで、野田氏と斉藤氏は「分かれない」「一緒にやっていく」と語り、参議院議員も合流する意向を示しました。
■「徴兵制だってやろうと思ったらできる」単独議席数3分の2超の重み
橋下氏は、自民党が単独で3分の2を超えた意味について、重大な警告を発しました。
【橋下氏】「法律全部通っちゃうから、場合によっては、これ憲法違反かどうかはいろいろ議論あるけど、やろうと思ったら『徴兵制』だってできる」
青木キャスターが「こと、数の力という点で言えばということですよね」と確認すると、橋下氏は「やるかどうかは別ですよ」と前置きしつつ、こう続けます。
【橋下氏】「だから今後、メディアの方も政策論でしっかり有権者の耳に届くような情報発信をしなきゃいけない。野党もこぞって、もう昔ながらの永田町の匂いがするような政治家は全部退場しましたから、やっぱり野党も変わらなきゃいけない」
ただし、自民党自身にも課題があると指摘します。
【橋下氏】「高市さんは永田町の匂いはしないけれども、自民党には永田町の匂いだらけの人がいっぱい当選してますから、こういうところもしっかり有権者として、我々は見ていかなきゃいけない」
鈴木氏も、自民党内部での消費税減税をめぐる反対論の存在に触れ、「自民党自身も変わんなきゃいけない」と述べました。
(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」2026年2月9日放送)