レモンとオレンジをかけ合わせた「マイヤーレモン」です。長野県内の先駆者といわれる中川村の農家が栽培を始めて20年余り。特有の甘酸っぱい味が注目され、県内で生産する農家や取り扱う飲食店が増えています。「南信州レモン」として商標登録もされブランド化を進めています。
■人気スイーツに使用
長野県松本市の「アル コーヒー&ベイク」。2023年のオープン当初から人気のスイーツがあります。
「レモンケーキ」です。
レモンの皮を生地に混ぜて焼き上げ、自家製ジャムと一緒に食べることでより香りが楽しめるということです。
(記者リポート)
「ケーキからレモンの甘さと香りが優しく広がります」
このケーキに使われているのは、伊那谷産の「マイヤーレモン」。
レモンとオレンジの交配で生まれたとされ、普通のレモンより酸味が穏やかで糖度が高いのが特徴です。
アル コーヒー&ベイク オーナー・田中佑樹さん:
「飯田・中川村の方でレモンを作っていて、全然知らずに、最初に聞いたときびっくりした。作ってみたら、普通のレモンを使ったレモンケーキよりも、こっくりとした甘さ。絶対こっちの方がいいよねと」
■「南信州レモン」として商標登録
伊那谷産のマイヤーレモンは2024年「南信州レモン」として商標登録され、生産量も徐々に増えています。
中川村の農業用ハウス。
矢沢義幸さん:
「黄色っていい色ですよね。心が穏やかになりますよね。だんだんオレンジになっていく。この時期が一番楽しい。1年間苦労して」
矢沢義幸さん(57)。県内の先駆者といわれています。
今が旬のマイヤーレモン。皮が薄くそのままでも食べられるということで―。
(記者リポート)
「果汁はレモンの酸っぱい、爽やかな感じがしますが、皮がオレンジのような香りもするし、少し甘いです。不思議な感じがします」
矢沢義幸さん:
「果皮に関してはオレンジで、中のジュースに関してはレモン。それが癖になるというお客さんがいて『また買いに来た』と」
■きっかけはイタリア旅行での出会い
マイヤーレモンは中国原産。
戦後、日本でも栽培されるようになり、主な産地は三重県や和歌山県などです。
なぜ、矢沢さんは栽培を始めようと思ったのでしょうか?
矢沢義幸さん:
「たまたま旅行先でレモンを見て『うちのハウスにもあったらいいね』から始まった」
もともとリンゴ農家だった矢沢さん。
2003年、旅行で訪れたイタリア・シチリア島で見たレモンに興味を持ちます。
日本に戻り、ちょうど知り合いが持っていたのが「マイヤーレモン苗木」。
分けてもらい実験的に作り始めました。
■「南信州レモン」ブランド化への道
レモンの中では寒さに強い品種で、標高の高い伊那谷でも栽培できることが分かった矢沢さん。
その味にも魅了され、徐々に生産量を増やしていきました。
矢沢義幸さん:
「(栽培当初は)マイヤーレモンはなかなか知名度がなくて。そんな中、皆さんに食べていただいて、おいしいと評判で」
地域の直売所や飲食店、菓子店などにも受け入れられるようになり、今では20アールのハウスで年間3トンを出荷するまでになりました。
そして、2024年、「南信州レモン」として商標登録し、ブランド化を進めることにしました。
矢沢義幸さん:
「知名度を上げるにはブランドにした方が皆さんに土産にとってもらうにもいいのかな。市田にいい柿があったりするが、中川村になかなかお土産になるようなものもないので、村の特産になったらいいな」
■生産者グループ結成、仲間も増え
矢沢さんの思いに地域の農家なども賛同。
有志6人でグループを結成し、生産者を増やそうと勉強会や研修会などを開いてきました。
4年前、7軒ほどだった県内の農家は今は10軒まで増えています。
こちらは中川村に本社を置く農産物生産会社「アクアロマン」。
2万平米の農業用ハウスでネギの栽培やイチゴ狩りなどを行っています。
アクアロマン・大場孝幸社長:
「こちらでマイヤーレモンの栽培をしております」
2025年11月から試験的にマイヤーレモンの栽培を始めました。
アクアロマン・大場孝幸社長:
「新しいものは、これから皆さんにも広めていきたいし、周年雇用している中、労務確保のためにやってみようかということでやり始めた」
これまで農閑期だった冬に収穫するマイヤーレモンは新たな事業として魅力的だったということです。
今は140本の苗木を育てていて、2026年の12月ごろには収穫できるようになるということです。
アクアロマン・大場孝幸社長:
「地元から生まれたという部分もありますので、地元の活性化にもつなげ、会社としても大きく広げて進めていけたらな」
■菓子店や醸造所など約40軒に卸す
広がりを見せているのは生産者だけではありません。
矢沢さんは現在、菓子店やビールの醸造所など約40軒に卸しています。
冒頭で紹介した松本市の「アル コーヒー&ベイク」もその一つ。
定番の「レモンケーキ」のほか、「レモネード」も人気です。
アル コーヒー&ベイク オーナー・田中佑樹さん:
「僕たちもいいものを知ってもらいたいので、広めたい気持ちもあります。おいしいレモンなのでここで食べるだけでもいいし、それぞれご家庭でも楽しんでもらえれば良さが伝わるのかな」
■お茶専門店で味わう「変わり種」
伊那市のお茶専門店「お茶屋いちえ」では「変わり種」を味わえます。
お茶屋いちえ 代表・井口裕太さん:
「めちゃくちゃ香りいいですよね。普通のレモンより香りもいいし果汁も多いんですよ」
マイヤーレモンの果肉と皮を煮詰めたゼリーの上に、煎茶、凍らせたヨーグルト、ミルクジェラートをクラッシュしたものを注ぎます。
ホイップクリームやマイヤーレモンのジャムなどを添えて―。
(記者リポート)
「煎茶の香ばしさとマイヤーレモンの爽やかさ、皮をかんだときのほろ苦い感じがとても合っていて、おいしいです」
4年前、客から「地元産のレモンがある」と教えてもらい使うようになったということです。
お茶屋いちえ 代表・井口裕太さん:
「うそでしょって感じ、半信半疑だったんですけど。色もきれいだし、すぐ使おうと決めました。角がなく爽やかなので緑茶とけんかしない。酸味も少ない分、口当たりもいい。レモンの特徴とお茶の香りがマッチしている部分だと思います」
もちろんレモンティーも!
「はちみつレモンティー」594円。
果肉と皮を使ったシロップにクリアな味わいの紅茶「紅富貴」がよく合います。
お茶屋いちえ 代表・井口裕太さん:
「いろんなお茶と合わせて(マイヤー)レモンを楽しめるのはうちならでは。地元を盛り上げる起爆剤になってくれたら」
■「南信州の名物に」先駆者の期待
「南信州レモン」としてブランド化への取り組みが進む伊那谷産の「マイヤーレモン」。
生産者だけでなく、飲食店でも着実に広がりを見せています。
「先駆者」の矢沢さんは、そのおいしさをさらに多くの人に知ってもらい、南信州の名物になればと期待しています。
矢沢義幸さん:
「『市田柿』みたいに、伊那谷にもレモンあるんだよと知られればいいなと」