「それについて答えんかいコラ!おどれなにもんじゃ」
大阪の一等地が狙われた地面師事件で逮捕されたのは、「法律のプロ」である司法書士。
“地面師”をめぐっては、去年、大阪・ミナミでもおよそ14億円がだまし取られる事件が発生。一体、なぜ大阪は狙われるのだろうか。
間一髪で被害を免れた不動産関係者が明かした。
■“地面師詐欺”詐欺未遂の疑いで男2人が再逮捕
4日、詐欺未遂の疑いで再逮捕された司法書士の男(34)と元会社代表の男(33)。
事件の舞台は、開発が進み地価の上昇が続く大阪・梅田近くの「キタ」エリア。
2人は去年、大阪市北区の土地と建物の所有者の男性(80代)になりすまし、不動産業者に嘘の売却話を持ち掛けて、代金4億1500万円をだまし取ろうとした疑いがもたれている。
他人の不動産の所有者になりすまし、多額の金をだまし取るいわゆる“地面師詐欺”。司法書士の男らの手口は…。
司法書士の男は立場を悪用し、不動産の本来の所有者である80代の男性とは、別の人物を本人だとする書類を作成。元会社代表の男が務めていた三重県の会社に、所有権が移転したという虚偽の登記申請を法務局にしたとみられる。

■売却話をもちかけられた不動産関係者を取材 商談の後「自転車で…」
取材班は、司法書士の男らに土地の売却話をもちかけられたという複数の不動産関係者を独自に取材。今回の事件の舞台裏が、徐々に見えてきた。
去年3月ごろ、不動産業者らの商談の場に現れた司法書士の男と元会社代表の男。司法書士の男が「お金に困っているので土地を売りたい」と話し、売却代金としておよそ4億円を提示してきた。
しかし、土地についての質問をすると、元会社代表の男は答えることができないなど不審な点が。
さらに、契約前に「元の所有者から土地を買った際の書類を確認したい」と求めると…。
土地売却をもちかけられた不動産関係者:『契約書も結んでないし、そういった書類はないですよ』と一点張り。契約書や重要事項説明書もなしに売買されたというのがちょっとおかしいなと思ってたので、その旨を伝えたところ、『探します』というような感じで。
さらに、高額な土地の売買をする際は、通常、売り手側に不動産業者がつくということだが…。
土地売却をもちかけられた不動産関係者:向こう側には、不動産業者がいてない。『では誰が主導してるの?主導権誰持ってんの?』って聞くと、『司法書士がやってます』と。
そして、2人への「違和感」が決定的になったのは、大阪での商談の後だったといいう。
土地売却をもちかけられた不動産関係者:2人で自転車で帰って行ったんで。三重県の会社で、自転車で来られたんかなと不思議な感じはありました。普通は電車で、お金持ってる人やったらタクシーで来るはずだが。自転車…はぁ…という印象ですよね。
不動産関係者は、「今考えたら、完全にど素人やろうね。やり方が」と話す。

■「こんなん現実にあるんですね」登記を勝手にかきかえられた男性
取り引きにおいて主導的立場にあったとみられる司法書士の男だが、逮捕される前の取材では、“地面師”詐欺について関与を否定していた。
(Q.地面師詐欺に関わってる?)
逮捕前の司法書士の男:関わっていると言うか、被害にあったことはある。私が地面師だったら、とっくの昔に…。免許証を偽造する技術もないですし。
しかし、取材を進めると、司法書士の男が他の土地も狙っていたことが分かった。
登記を書き換えられた男性:これが間に入っている司法書士の司法書士の男です。
男性が月に1度ほどしか訪れることがないという大阪市中央区の建物。
おととし11月、この建物や土地の登記が、司法書士の男に勝手に書き換えられ、所有権が名古屋市の会社に移転されたと主張する。
(Q.身に覚えは?)
登記を書き換えられた男性:全然ありません。こんなん現実にあるんですね。自分が巻き込まれるとは一切思っていなかった。“地面師”っていうのが普通の人ではないと思った。

■他にも3カ所の不動産登記を不正に書き換えたか
さらにこの他にも…。
記者リポート:こちら、張り紙に『この土地建物を売却予定はありません』と書かれています。
取材の結果、大阪市北区以外でも、中央区や浪速区など3カ所の不動産登記を、司法書士の男が不正に書き換えたとみられることが分かった。

■大阪で“地面師”事件が相次ぐ理由 “地面師”を見抜いた不動産投資家に聞く
そんな中、大阪を舞台にした“地面師事件”は、他にも。
去年、ミナミでは別の“地面師”グループにより、ビル3棟の不正な売買で、およそ14億5000万円がだまし取られる事件が発生。
一体なぜ、大阪で“地面師事件”が相次ぐのか。
取材班が話を聞いたのは、不動産投資家の図越寛さん。実は図越さん自身も、司法書士の男が登記を書き換えたとされる大阪市北区の土地購入を、4億円でもちかけられていたのだ。
ブエナビスタ 図越寛社長:『取引はやめましょう』と。そのまま進んでいったら非常に危なかった。

■大阪で被害が多発する背景は3つ
“地面師”を見抜いた図越さん。大阪で被害が多発する背景だというのが3つあると説明する。
1つ目が『競争エリア』。
ブエナビスタ 図越寛社長:今回の事件の舞台“中津エリア”も、うめきたグラングリーン大阪からも徒歩圏内。各不動産事業者が狙っているエリア。
再開発が進むうめきたエリア周辺は、まさに土地の奪い合いの状態。大阪は東京よりも地価が低く、投資目的で購入を急ぐ不動産業者に“地面師”がつけこむ“スキ”が生まれるというのだ。
2つ目が「海外投資家狙い」。
ブエナビスタ 図越寛社長:インバウンドの方は、いわゆる海外投資家。意外とキタよりも、心斎橋・難波、ミナミの方がお好きというのはありますね。去年の道頓堀の事件の場合は、被害に遭った買い手側が中国系の方。『インバウンド大阪』というキーワードは、マッチングしたんだろうなと。
インバウンド需要が多いミナミエリアは、日本の土地売買に不慣れな「海外投資家」が狙われる可能性があるということだ。
3つ目の「経済イベント」とは?
ブエナビスタ 図越寛社長:楽しみなイベントとして、うめきたのグラングリーン再開発。大変盛り上がった万博の開催。今後は『大阪IR』が楽しみになってくるフェーズになるので、まだまだ再開発、不動産価格上昇の余地。色んな経済イベントがある場所は狙われやすい。
IRなどでインバウンド需要が見込め、地価の上昇が期待できるということもあり、今後も大阪で“地面師事件”が相次ぐ可能性があると指摘する。
他人の土地を食い物にする“地面師”たち…知らぬ間に、あなたの土地も狙われているかもしれない。

■「見破るのは難しい」と菊地弁護士
番組コメンテーターの菊地幸夫弁護士は「司法書士に僕らの取引するときに書類を全部チェックしていただく。だからその人が『書類は全部OKですよ』と言えば、それを信じて取引する」とし、「その司法書士が“地面師”だったなら、なかなか見破るのは難しい」という。
菊地幸夫弁護士:でも今回は、その不動産について、『どんな土地?』、『最寄りの駅は?』とか、いろいろ質問されたんでしょうね。そういうのに答えられないとか、ちょっと詰めが甘かったんだと思いますけど。登記を書き換えちゃったりとか、そういうのはできてるわけですから、あなどれないですね。
不動産登記の書き換えで狙われやすいのは、駐車場や空き家など、“住んでいない土地”が狙われやすいということだ。
対策として菊地弁護士は「壁に『ここは売るつもりはありません』と貼り紙があったのは、僕はいいなと思います。現地へ見に行ったときに、『これはもしかしたら』と勘づくかもしれません」と話した。
現地へ行って分かることもあるということだ。
(関西テレビ「newsランナー」2026年2月5日放送)

