今月8日に投開票される衆院選。まちの真ん中に位置する米軍基地から影響を受けながら暮らす沖縄県宜野湾市の人々は、どのような思いを1票に託すのだろうか。有権者の声をお伝えするシリーズ「暮らしの現場から」。

■跡地開発に寄せる期待

宜野湾市で自営業を営む新垣雄一さんは、生まれも育ちも普天間地区だ。

彼が学生だった頃の商店街は、多くの店舗が撤退し「シャッター通りというようなイメージだった」という。しかし近年、アメリカ軍西普天間住宅地区の基地返還跡地の開発が進み、まちの様子は変わりつつある。

「またおしゃれな飲食店が増えてきてちょっとずつ活気が戻ってきている実感がある」と新垣さんは語る。特に、琉球大学病院が移設された西普天間地区には「まちも急激に発展するのかな」と大きな期待を寄せている。


■「夢物語ではない」現実的な経済政策を

市内で商売を営む立場として、新垣さんが今回の選挙で最も重要視するのは「経済政策」だ。普天間基地の早期返還と、その跡地を活用したまちづくりが現実のものとなることを望んでいる。

「そこに企業を誘致して新たな雇用が出来るとか色々語れるとは思うんですけど実際にそれが出来るのかどうか」と候補者の政策を冷静に見極めようとしている。

新垣さんが求めるのは単なる夢物語ではない。「妄想とか夢とか物語で話すのではなくて現実を直視してリアルに導いてくれたり考えてくれる政策を僕は重視しています」と力を込めた。

■危険性除去の願いと、辺野古移設への複雑な思い

一方で、生まれたときからそばにある普天間基地の移設問題も無視できない。

一日も早い危険性の除去と跡地を活用したまちの発展のため、辺野古への移設を進めてほしいと考えている。

「名護辺野古に住んでいる方たちには申し訳ないという気持ちも強いんですけど」と複雑な胸中を明かしつつも、「危険性は住んでいる以上感じることはありますから早く辺野補に移設してもらって返還させていただけたらそうすれば宜野湾市ももっと発展して明るい未来になるんじゃないか」と切実な思いを語った。

■地域の聖域を脅かす「見えない汚染」

基地跡地の開発が進む一方で、基地から派生する問題は解決されないまま足元に横たわっている。

同じく宜野湾市に暮らす呉屋初子さんが住む喜友名区には、地域の人々が大切に守ってきた「喜友名泉(チュンナーガー)」という湧き水がある。

「生まれたときから死ぬまでずっと私たちの生活と関わりのあるところだから私たちにとっては聖域です」と呉屋さんが語るように、国の重要文化財にも指定されているこの泉は、古くから地域の伝統行事や家庭菜園の散水に使われ、子どもたちの水遊び場としても親しまれてきた。

しかし、この大切な湧き水から、人体に有害な有機フッ素化合物PFASが検出された。

最も高い時で国の暫定指針値の44倍にあたる1リットルあたり2200ナノグラムという高い数値が記録されている。県の調査では汚染源は基地内である蓋然性が極めて高いとされているが、特定には至っていない。

呉屋さんは「あのニュースが流れてからは子どもたちを連れてこない」と寂しそうに話す。「とても良いところなんだけどね」。

喜友名区自治会長の知念桂子さんも思いも同じだ。「本当は基地内への立ち入り調査が出来れば一番良いと思う。元を絶たないことにはどうしようもない」と問題解決の難しさを指摘する。

■特定できない汚染源 苛立ちと切なる願い

1996年に日米両政府が普天間基地の全面返還に合意してから30年。返還は進まず、基地から派生する問題が置き去りにされている現状に、知念会長は半ば諦めの思いもにじませる。

「私も正直半分諦めています。私たちが元気なうちには多分戻ってこないだろうなと」。それでも「私たちが元気なうちにもう少し変わってほしい」という願いは捨てていない。

知念会長は今回の選挙で子どもたちの未来のため、そして安全な地域の湧き水を取り戻すため、日米両政府に働きかけてくれる候補者を選びたいと話す。

「選挙に出る皆さんがPFOSに対してどれくらいの意識を持っているか。もちろん経済云々も大事だと思うんですけど、本当はそれにも力を入れていただきたい」。


■1票に託す思い

一日も早い基地返還という共通の思いを抱きながら、経済発展を最優先に考える人、基地から派生する環境問題の解決を最優先に考える人。

アメリカ軍基地が生活に大きく影響する宜野湾市で有権者はまちの未来を、そして市民生活を守るための一票を投じる。

知念会長の「安全で安心して使えるチュンナーガーの水にしてもらえればそれだけです」という言葉が、地域の切実な声を代弁している。

沖縄テレビ
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