内閣府は2025年12月に、首都直下地震による被害想定を12年ぶりに更新した。

最悪のケースの場合、首都圏では、建物は約11万2000棟が全壊し、死者は1万8000人、災害関連死は最大で4万1000人にのぼると算出された。

救急車の数は限りがあるのと同じで、災害時の国や自治体による支援は限りがあると考えたほうがいい。

被害軽減へ“共助”が大事な要素

被害を軽減するためには、国や自治体などによる“公助”とともに、自らが自らを守る“自助”、そして地域やグループで助け合う“共助”が大事な要素となってくる。

しかし、東京や神奈川など都市部においては、隣人との交流が希薄となっていることや、防災訓練を実施していても、隣近所を把握していない地域やマンションも少なくない。

地震による家屋倒壊やがけ崩れのほかに、津波の被害も想定されている神奈川県。

神奈川県くらし安全防災局危機管理防災課(応急対策グループリーダー)の加藤達也さんは共助の必要性について、「神奈川県は、海や山、川など多様な地形を有しており、津波や河川の氾濫、土砂災害など様々な災害が発生する可能性がある。特に、首都直下地震のような大規模災害では、地域住民の力が欠かせません。しかし、地域で活動する消防団員は全国的にも減少傾向となっており、団員の確保が年々、難しくなっています。そのため、これからは特に若い世代に防災に関する興味関心を持っていただくことが必要です。一人ひとりの生活や価値観が多様化している中、防災対策も一人ひとりに沿った個別対応が求められていると思います。地域が違えば、発生する災害も異なるため、それぞれの地域で様々な団体が活動し、地域全体、県全体の防災力向上につながることが期待されます」と語った。

加藤さんは、県防災課で働きながら、地元・海老名市の消防団の団員としても活動している。

また、海岸に面している茅ヶ崎市では、災害が起きた場合に行政だけに頼らず地域コミュニティの中の助け合いで命を守るという、街の共助力向上を目指したプロジェクトが進んでいる。

災害時「助け合いのプラットフォーム」

「みんなの防災プロジェクト」と名付けられたこの取組では、災害が起きた後に活躍しうる人のスキル・モノ・場所が市内のどこに存在するかを可視化する「助け合いのプラットフォーム」作りを目指している。

「みんなの防災プロジェクト」のサイト
「みんなの防災プロジェクト」のサイト
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例えば、地震で怪我をしたけれど病院側がパンクしてしまって受け入れてもらえない時に、そのプラットフォーム上でSOSを出すと、元看護師など応急手当てをできる「スキル」を持っている人とのマッチングをする。

また、避難所で窮屈な思いをしている子どもたちをどこかで思い切り遊ばせてあげたいという親の悩みがあった時には、同様に「場所」を提供できる人とのマッチングをする。

災害時にはマニュアル化しきれない大小様々な困りごとが発生するが、これらの情報の可視化とマッチング機能により公助を待たずに地域内で無数の助け合いを産み、災害関連死を含めて命を守ることを目指す。

正式なプラットフォーム化や具体的な運用方法については検討を進めている最中だが、地域を巻き込みながら作っていけるよう、各所との意見交換などを進めている。

プロジェクトの中心的な役割を担っているのが、防災士の古島真子さん。茅ヶ崎市と岩手県陸前高田市の2拠点で生活をしていて“3・11”の東日本大震災をきっかけに防災士の資格を取得し、茅ヶ崎市で防災活動を取り組んでいる。

古島さんは「まずは、防災の大切さや知識を一人でも多くの市民に知ってもらう活動を行っています。そして、有事の際、地域の住民がそれぞれのスキル・モノ・場所を使ってお互いを助け合う。そのためには日ごろからイベントを行い、お互いの距離を縮めるイベントも開催しています」と話す。

防災士の古島真子さん
防災士の古島真子さん

古島さんの考える防災もユニークだ。

人も会社も地域も個性があるのだから、10人10色のカラフル防災を目指そう。

1つの防災の形が、みんなに当てはまるはずがない、という視点から、1人1人の家族構成やライフスタイル、居住エリアなど個性に応じた防災を市民と一緒に考えながら提案している。

「例えば、防災グッズはまとめて寝室に置く、というのが一般的かもしれませんが、一日の大半を車で生活している人の場合は、防災グッズの一部を車に置くことも大事かもしれません。多様な条件を加味してピッタリな防災を一人一人に合わせて考えていきたいと思っています」と古島さんは言う。

被害軽減に向けて、新しい防災の考え方、地域住民による共助の在り方が模索されている。

大塚隆広
大塚隆広

フジテレビ報道局社会部
1995年フジテレビ入社。カメラマン、社会部記者として都庁を2年、国土交通省を計8年間担当。ベルリン支局長、国際取材部デスクなどを歴任。
ドキュメントシリーズ『環境クライシス』を企画・プロデュースも継続。第1弾の2017年「環境クライシス〜沈みゆく大陸の環境難民〜」は同年のCOP23(ドイツ・ボン)で上映。2022年には「第64次 南極地域観測隊」に同行し南極大陸に132日間滞在し取材を行う。