時速194キロ死亡事故 危険運転か過失運転か 刑の重さに大きな違い
2021年に大分県大分市で発生した時速194キロの車による死亡事故について危険運転が認められなかった控訴審判決を不服として遺族は1月29日、最高裁への上告を求め約7万人分の署名を福岡高等検察庁に提出しました。その後遺族は会見で「このままでは終われない」などと胸の内を明かしました。会見の内容を詳しくお伝えします。
この事故は2021年大分市大在の県道交差点で右折車を運転していた小柳憲さんが時速194キロで直進してきた車と衝突し亡くなったものです。当時19歳の男が危険運転致死の罪に問われています。福岡高裁は1月22日「進行制御が困難な高速度だとは認められない」などとして危険運転を認めた一審判決を破棄し、過失運転致死罪を適用。被告に対し懲役4年6か月を言い渡しました。遺族は判決の翌日から、上告を求めるためインターネットで署名を開始。28日までの5日間で7万254人分の署名が集まり29日、福岡高検に提出しました。その後の会見で、遺族の長文恵さんが心境を語りました。
◆小柳憲さんの姉 長文恵さん
「非常に残念な判決を受けたが『このままでは終われない』という気持ちもあって、その翌日から福岡高検に対して『上告をして欲しい』という思いを、国民の皆様の声と共に伝えていきたいと思い署名活動を始め、5日間で7万人を超える署名をいただきました。それを本日、福岡高検にお届けして『上告をして欲しい』という思いをお伝えしてまいりました」
控訴審は「危険運転認めず」上告求める署名 5日間で約7万人
(Q高検は申し入れを真摯に重く受け止めると言っていたようだが、その態度や姿勢などをどのように受け止めたか)
「先に要望書も出していたので(福岡高検は)上告をお願いするであろうと思って私達と面談してくださったと思っている。その思いを受け止めていただけたという印象は私の中ではありました。先のことはまだ分からないが、私はそこに期待をして待っていたいと思いました」
(Q5日間で7万超える署名が集まったが、この数の多さであったり熱量や強さをどのように感じたか)
「時速194キロというこの速度がいかに危険な速度であるかというのを、私や国民が個別で問うことはできないですけど、こうした署名活動によって『この判決はおかしい上告すべきだ』という声が集まったのだと思います。5日間で7万人というのは私も実際驚きましたが、やはりこれだけ国民の社会的一般常識と、かけ離れた判決であるというのは明らかだという気がして、きょうはその署名を直接お渡ししてまいりました」
「遺族感情だけでない、常識と乖離していることに対する国民の怒り」
(Q上告の期限まであと1週間というこのタイミングで今の心境を改めて教えてください)
「これから1週間というのは非常に短い期間かもしれないけど一番重要な期間のような気持ちでいます。それまでなかなか日常の生活が手につかないような気持ちもちょっとしていますが、その日(上告される日)を待っていたいと思います」
(Q検察に対して署名を提出するというのは今回で2回目ですが、思いは?)
「最初の目的は『訴因変更』でした。1ヶ月半から2ヶ月ぐらいで3万人分ぐらいの署名が集まって大分地検に提出しました。ですが今回は、期日が非常に短い期間に上告を求めなければならないということもあり、オンラインで署名を始めました。(しかし)、一つ勘違いしていただきたくないのは、署名をしたから何かが変わる、例えば判決が変わるとかそういったことではなく、この一般市民の社会的一般常識がなかなか伝わらないのではないかと思うので、やはりそこを『国民の声を届けたい』という気持ちです」
「今回も遺族感情だけで上告してくださいと言っているわけではなくて、高速度がこのままでいいのかという気持ちは、署名してくださった7万人の皆さんの『こういった判決おかしいだろう』という意見。これが国民の怒りだと私は思っています。私たち遺族のためだけの事件じゃなくて、今後の高速度の事故の扱われ方が左右される大きな事案だと思っているのでたくさんの方たちが賛同してくれたのじゃないかなと思っている」
「皆さんのお声を支えにしなければならないことに、本当に申し訳ない気持ちと、あとは感謝の気持ちと、そういった思いを持ってきょう2回目の署名を届けてきました」
一審は裁判員裁判 「国民の意見には全く耳を貸さないのか」
(Q検察と面談して、具体的に高検側にどういったことを伝えた)
「法律家3人とともに行っています。私は法律に詳しいわけでもなく、市民感覚を持った人間の1人として参加しているような感じです。ただ私が皆さんと違うのは、やはり『この事故の被害者遺族』であるということ。この遺族の思いは私しか伝えられない。今回、私が直接検察官と刑事部長にお話したことは、今まで訴因変更をしてから、警察と大分地検がすごく尽力して捜査を重ねてきたこと。そして、それを国民から選ばれた裁判員の方たちが(大分地裁と)一緒に議論を重ねて出した一審判決を、控訴審判決で全て否定されたということ」
「こういったことが実際あっていいのか』と思いますし、裁判員裁判自体を否定してるのか、国民の意見には全く耳を貸さないのかっていう、私にとっては非常に残念な判決。理由についても『実際に同速度の実証実験をやっていない』ということ、こういった言葉が一般的に通用する言葉なのか。私が事故当時ずっと、警察にも検察にも訴え続けてきたのは『実際にあそこの(事故現場)の道路で時速194キロで走ってくれ』っていうのはもう何度も本当に訴えてきて、でもそれが実現出来なかったのは、あの一般道でその速度を出すことが非常に危険だからだったんです」
「そこを実現できていないこと、そこをやっていないから立証できないということ。そしたら警察とか検察が、『もしかしたら命を落とすかもしれないけど、危険な行為(証明)かもしれないけれどやってくれ』『できなければ立証できていない』って言ってるようなもので、そこには弟の命だけじゃなくて、例えば警察や検察の方たちの命までも脅かすような、そういった文言が発せられるこの現実が私としては驚き以上のものをはない。実際それ(立証)をやれていなかったから『過失(運転致死罪)』というふうに簡単に片付けられるものなのかというのが非常に残念であることを直接刑事部長に話しました」
「この判決で終わるのはあり得ない、日本は大変なことになる」
「(事故を起こした車が)希少性のある限定車であったことや高級外車であったことを考えても、なかなか手に入れられるものでもない。ましてや、その車を手に入れたとしても運転するのは誰かと考えたときに、例えば名乗りを上げてくれる人がプロのドライバーかも知れない。でも、本人じゃないから立証できないと言われてしまうのでしょうし、そうしたら加害者なのかとなったときに、この高速度を出した実行の立証は、(本人が)再現しなければ立証できないのかというのを言っているようなもので、こんなおかしなことはないっていうお話をしてまいりました」
(Q法制審の議論で新しい法律ができれば今回の事故というのは当たり前のように危険運転とされる中で、現行法では適用されないというところの理不尽さも含め、上告への思いは)
「今後の法制審、あと法改正に向けてという具体的なものが今完成してるわけではないのでどう言ったらいいか。数値基準が設けられたと仮定して、数値に満たなかった場合、危険運転をどう立証していくのかとなった時に、時速194キロのこの事故で、何年間も苦労して立証してきたことが認められないとなると、『この数値以下は認められない』ということになってしまいます。それぞれの事故には悪質性というのは存在すると思いますし、速度が大してなくても、満たなくても、本人の技量により事故が起きるということも当然あります。いくら車が高性能であっても、本人の技術というのは今回の判決では特に盛り込まれていない」
「例えば、使われた車は(最高)速度が時速250キロとか300キロが出るんでしょうけど、『そこまでは安定性があるから性能が良いので制御困難な状態にはならない』というような表現にもとることができるので、誰が乗っても高性能な車で事故を起こしたら危険運転は適用されないですよね。なので、この事故が危険運転が適用されない先例になってしまうのは、だめなことだと思っているので、私はこのままこの判決で終わってしまうというのは、もう考えられない。あり得ないこと。これを許してしまえば日本は大変なことになってしまうんじゃないかなと思っています」
上告の期限は2月5日。検察の判断が注目される。