バーには欠かせないボトルやグラス、シェイカーが宙を舞いー。
華麗な技に客は酔いしれ、歓声が上がる。

バーテンダーの中でも、特異な存在感を放つ「フレアバーテンダー」。

日本トップレベルの技を持つ男性が、大阪ミナミにいます。

知られざるフレアバーテンダーの世界を取材しました。

■日本のカクテルブームのきっかけは”トムクルーズ”

日本に「フレアバーテンダー」の名が広まったのは1980年代です。

トム・クルーズが主演した映画がきっかけでカクテルブームが巻き起こりました。

大阪ミナミでバーを開いている井戸貴典さん。

常連客からは「何でも話せる兄貴的な存在」で「愛のある昭和の男」と慕われています。

店の売りは、目の前で繰り広げられる技の数々です。


■陸上、卓球、自衛隊、プロボクサー…異色の経歴からバーテンダーの世界へ

実はフレアバーテンディングは国内外で競技としても広がっていて、井戸さんは日本チャンピオンになったこともあります。

【井戸貴典さん】「ショーの途中すごく楽しそうにしてくれてるところを見ると、フレアやってきて良かったなって思いますし、その瞬間は、自分にとってもすごく良かったなって思う瞬間なのかな」

井戸さんの出身は愛媛県で、身体能力の高さがずば抜けていました。

中学時代は陸上1500mで四国大会に出場し、卓球でも全国大会に出場しています。

高校卒業後は自衛隊に入隊しましたが、プロボクサーを目指すために辞め、20代前半は徹底的にトレーニングに励んでいました。

しかし、思うような成績は残せず…そんな時に出会ったのが、フレアバーテンディングでした。

【井戸貴典さん】「フレアも大会があるっていうのを知って、僕もずっと勝負することが好きだったので、大会出るようになった。負けず嫌いというか」

■豆ができ骨が変形する…文字通り”血のにじむ”努力

バーテンダーになっても、徹底的に体をいじめ抜く生活は変わりませんでした。

世界大会を1か月後に控える中、練習に励みます。

一見、軽く技をこなしているようにも見えますが、井戸さんの指は柔道選手のように変形していました。

【井戸貴典さん】「(ボトルなどに)当たって、初めはすごい擦りむいてマメができるんですよ。そこから骨に当たって、骨がでかくなってみたいな感じだと思います」

時には割れた瓶のガラスの破片が刺さり、流血することも…。

フレアバーテンダーとして最大の武器は、スポーツに打ち込んできたキャリアです。

【全日本フレアバーテンダーズ協会 神村美幸副会長】「日本人でもちろんトップの1人です。『それ取れる?』みたいなものが野生的な運動神経で取れてしまうところとか。アイテムの数で言うと一番多いですし、難易度も常に高いレベルでずっと投げ続ける。それが彼の”必殺技”みたいな感じ」

■日本でもひと握りの実力者だけができる「大技」

今回の世界大会は、5分間演技をしながら課題のカクテルとオリジナルカクテルを作るというものです。

技の完成度はもちろん、味も問われるため、レシピ通りの正確な分量を注ぐ技術も求められます。

演技のクライマックスは、「6つのアイテムを同時に投げる」大技!

井戸さんの決め技で、日本でこの技を繰り出せる人はほんのひと握りです。

投げ始めから投げ終わりまで、この間わずか5秒です。

■「トップに食らいついて一番に」

大会3日前。この日は関西のフレアバーテンダーたちが集まって、合同練習会を行っていました。井戸さんは先生として指導にあたります。

練習会が終わり、1人、また1人と減る中、井戸さんは最後まで残って練習を続けました。

【井戸貴典さん】「自分の思い描いてる演技だったり順位だったりとか、『悔いを残して終わりたくはないな』っていうのがあって。世界のトップと戦うことで、トップに食らいついて一番になれたらいいな」

■世界大会特有の緊張感の中、5分間に懸ける

そして迎えた大会当日。「EXTREME WORLD FLAIR 2025」が開幕しました。

戦う相手は各国から招待されたトップバーテンダーたちです。

世界大会特有の緊張感が会場を包み、精鋭たちもミスが出る中、ついに井戸さんの出番です。

ミスはあるものの、懸命に立て直していきます。

そして、いよいよクライマックス。結果は―。


■「結果がすべて」リベンジ誓う

入賞することはできませんでした。

【井戸貴典さん】「結果がすべてって感じです。まだ自分もできなかった部分、悔しい部分めっちゃあるんで、また来年頑張ります」

世界を酔わせるフレアバーテンダーへ。頂点への道は続きます。

(関西テレビ「newsランナー」2026年1月22日放送)

関西テレビ
関西テレビ

滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山・徳島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。