誰も足を踏み入れたことのない水中世界へ。プロダイバー・加藤大典(だいすけ)さんは、水中洞窟や沈没船の探検に20年間挑み続けてきました。命のリスクと隣り合わせの最前線で、未知に魅せられる理由に迫ります。
■20年間魅了され続ける水中世界
この道20年の日本を代表するプロダイバー・加藤大典さん(53)。2025年8月には、福岡県沖の水深約80メートルに沈む旧日本軍の輸送船「常陸丸」の世界初となる有人撮影にも携わりました。

その加藤さんからダイビング技術を学ぶのが、日本の洞窟探検家の第一人者として知られる吉田勝次さん(59)です。
吉田さん:
「(加藤さんは)陸で見たら普通の人だけど、水中に入ったら誰よりも頼れる男」

10年前から、加藤さんにダイビング技術を学んだことで、洞窟内部の地底湖にも安全に挑戦できるようになり、これまでに世界各地の洞窟を1000カ所以上探検。その功績が認められ、2024年には優れた冒険家に贈られる「植村直己賞」を受賞しました。
■人類未踏の地底湖へ
2人がやってきたのは、岐阜県山県市の山奥。

吉田さん:
「地底湖があっていまだに未踏。地下水脈がどうなっているのか、わかっていなくて」
加藤さん:
「『人類で誰も来ていない場所』と思うと、わくわくします」
60年以上前に発見されたという洞窟にある、人類未踏の地底湖への探検です。
その入り口は、森にある岩場の穴。人ひとりがやっと通れる大きさです。

その先を進むと、さらに狭い場所も。道中は、ライトがなければ完全な暗闇の世界。鋭く突き出た岩がいくつもあり、常に危険と隣り合わせです。
加藤さん:
「全部想定して、必要なものは持っています。何があってもいいように、呼吸装置も1人3つ」
地底湖の探検には、予備の酸素ボンベなど大量の機材が必要なため、運搬だけで一苦労です。

洞窟に入ってから約1時間半。ついに地底湖に到着。
■誰も踏み入れたことのない場所を目指して
総重量35キロの機材を身に着け、いざ地底湖へ。
しかし泥が舞い上がり、前は全く見えなくなりました。こうした中、命を守るのが、岩場に張り巡らされたライン。少し進むごとに、岩場に固定することで、帰り道の目印にしていきます。

加藤さん:
「次のラインを結ぼうとした時に、結び方が緩く解けてしまった。それでラインが一瞬なくなってしまって…。絶対パニックにならないっていうのが鉄則」
水中を探すこと約5分。何とかラインを見つけ出し岩場に固定。再び前へ進むことができました。すると、その先で頭上に広がる空間が見つかりました。
加藤さん:
「これが未知の空間。多分、人類未踏のドームだと思います。心の中でテンションがすごく上がる」

この日、進めた距離はわずか20メートルでしたが、誰も踏み入れたことのない場所を目にした瞬間でした。
■再び人類未踏のその場所へ
2026年、加藤さんは新たなプロジェクトに挑みます。
加藤さん:
「水深が100メートルまであるルートが別で見つかりました」

舞台は大分県の観光名所としても知られる、日本最大の「稲積水中鍾乳洞」。2024年、加藤さんがリーダーを務める探検チームが、水深100メートルとみられる新たなルートを発見しました。
人類未踏のその場所へ、2026年3月に調査に乗り出します。

水深100メートルの世界は、一般的なダイビングの5倍以上の深さとなり、トラブルが起きてもすぐ浮上できず、命のリスクは格段に高まります。それでも挑戦する理由は…。
加藤さん:
「誰も行ったことがないと思いながら進むのは、たまらない。常に冷静な状態でやっていくべきだと思っているので、静かな闘志を持ってやりたい」
誰も見たことのない水中世界へ。未知に挑み続ける加藤さんの探検は、これからも続きます。
