大阪市全域で「路上喫煙禁止」となってまもなく1年。取材すると”不満”そして”限界”という声も聞こえてきた。
「すんませ~ん。ここタバコあかんの知ってました?」
去年1月、万博開催に向けて条例で定められたルールだが、街にはまだ喫煙する人の姿が多く見られる。
その理由を愛煙家たちに取材すると、聞こえてきたのは「喫煙所が圧倒的に少ない」という声。
大阪市内には「3000カ所の喫煙所が必要」という専門家の試算もある中、整備・維持にも費用が掛かる現状に、設置するたばこ店は「もう嫌」という嘆きが聞こえてきた。
■「路上喫煙率は4割減った」? 1時間の取材中も18人の違反を確認
観光客でにぎわう大阪・ミナミ。鋭い眼差しでパトロールするのは路上喫煙防止指導員だ。
路上喫煙防止指導員:大阪市の路上喫煙(防止指導員)の者ですが、たばこ今隠してますけど…。
大阪市は去年1月から、市内全域で路上喫煙を禁止とする条例を政令指定都市で初めて施行。違反者からは「過料1000円」を徴収している。
ミナミでは外国人の喫煙者も多く、指導員は「ノースモーキングエリア(禁煙エリアです)、ペナルティ、ワンサウザント(過料1000円)」と英語で説明する。
ある外国人観光客は、英語で「喫煙所」と書かれている張り紙の前で喫煙していたが、喫煙所が”店内にある”ことは日本語でしか書かれていないため、吸ってしまったようだ。
「カードしか持ってない」という外国人観光客に、指導員は「ノーキャッシュ?(現金ないの?)」と確認。現金払いしか受け付けていないため、悪戦苦闘しながら徴収している。
去年1月には17人だった指導員を92人にまで増員し体制を強化。
大阪市の調査によると、1年で「路上喫煙率は4割減った」ということだが、取材をした1時間だけでも指導員は18人の違反を確認した。

■「周りに流されて吸ってまうっすね」と路上喫煙する人
大阪市北区のオフィス街でも、喫煙禁止の場所で喫煙する人の姿が多く見られる。
街のあちこちで路上喫煙をする人の姿が。いったいなぜなのか、ワケを聞いてみると。
愛煙家:この辺りに(喫煙所が)ないから。周りがみんな吸ってるし。
愛煙家:周りに流されて吸ってまうっすね。
愛煙家:税金払ってるねん!もうちょっと温かい目で…。
愛煙家:喫煙所が圧倒的に少ない。
多く聞かれたのは「喫煙所の不足」を指摘する声。
大阪市は路上喫煙を禁止する代わりに、およそ400カ所の喫煙所を確保したが、条例が施行された後、大阪市には「喫煙所の増設」などを求める陳情書が、71件も寄せられているのだ。

■「足りない、全然」喫煙所からあふれ出る人
陳情書で「喫煙所不足」の声が上がっていたエリアを取材班が訪れると、禁煙のエリアに吸い殻が落ちている。
大阪市が指定する喫煙所があるものの、中は人がぎゅうぎゅうの状態で、外に人があふれ出ている。
人通りが多いオフィス街で、喫煙所から常に人があふれた状態に。この堂島エリアに喫煙所は、ここを含めて2カ所しかないのだ。
「足りません!全然!喫煙所たくさん作ってください!」と路上喫煙をしていた人は訴える。

■月に維持費だけで約10万円「もう嫌です!」喫煙所を設置するたばこ店
しかし、喫煙所を増やすのは簡単ではないようで…。
「喫煙室を作って”維持費”がかかりますので、ことし創業50年になりますけど、初めて赤字出しました」と入江たばこ店の入江哲治さんは語る。
大阪市の補助金で喫煙所を設置している入江さんのたばこ店では、冷暖房の費用のほか、1人では掃除に限界があるため、清掃業者も雇っていて、月に維持費だけで10万円ほどかかるのだ。
市の補助金が支払われるのは来年度ということで、入江さんは「こんな状態ではやっていけない」と話す。
(Q.喫煙所設置を断ることもできる?)
入江たばこ店 入江哲治さん:5年間の縛りがあるんで、そこまでは頑張ろうと…。
(Q.続けてと言われたら?)
入江たばこ店 入江哲治さん:もう嫌です!!もう閉めます(喫煙所を)完全に。
”増設”どころか、今ある喫煙所ですら維持できない状況が明らかになった。

■火を消さずに“ポイ捨て” 火事の危険も「非常に怖い」
路上喫煙禁止から1年…頭を抱えているところは、ほかにもある。
大阪の道頓堀商店会では、路上喫煙が禁止になったことに合わせて、道端の灰皿を撤去。
すると逆に、花壇などへの吸い殻のポイ捨てが増え、地元の人たちが清掃に追われる事態となってしまった。
道頓堀商店会 谷内光拾事務局長:(商店街から)一本それたら、吸う人は前みたいに堂々とは吸いませんけど、こそっと吸うんですね。そうするとこんな形で、たばこの吸い殻がずーっと。今の(吸ってた)人も逃げたけど。
さらに火を消さないまま、タバコをポイ捨てする人もいて、火事の恐れがあるなど危険な状況になっている。
道頓堀商店会 谷内光拾事務局長:(ポイ捨てされた)紙と混在しているので、火が出やすい。実際、道頓堀商店街もボヤがありましたし。
ポイ捨てで火事になるというケースは、僕らも目の当たりにしているので。どこも吸うところがこの辺にないので、非常に怖い。
こうした声を受けて大阪市は、路上喫煙やポイ捨てが多い63のエリアで喫煙所を増やすことに。補助金を出して民間企業などにも協力を求める方針だ。

■「においつくのが嫌?」目の前に喫煙所があっても使われない
では、喫煙所を増やせば解決するのか。
来年度、新たに喫煙所が設けられるエリアの1つ、阪急・大阪梅田駅周辺。地域の清掃を行っている地元の商店街の会長に今、設置されている喫煙所に案内してもらうと…。
阪急東通第一商店会 加納利彦会長:(喫煙所が)目の前にあるけど、外で吸ってるでしょ。においつくのが嫌なのかわからないけど。
喫煙所のすぐ外でタバコを吸っている人の姿が。ポイ捨てされた吸い殻もたくさん落ちていた。
阪急東通第一商店会 加納利彦会長:万博の間はちょっと減ってましたけど、気が緩んでるんじゃない?『取り締まりけーへんわ』思ってるんちゃう?貼り紙してても一緒。マナーを守ってもらわないとね。
また、このエリアで見回りを行う警備員に話を聞くと、もどかしい現状も…。
「(路上喫煙を)見て見ぬふりする場合もあるんです。僕らそういう権限がないんでね、取り締まるとか」と語る。
現状、取り締まりや過料を取ることができるのは、大阪市の指導員だけなのだ。

■大阪市内に喫煙所は「3000カ所必要」と専門家「たばこ税の有効活用を」とも
こうした現状に地方自治体の条例に詳しい専門家は、「喫煙所を増やすだけでなく、取り締まりの強化も重要だ」と指摘する。
近畿大学経済学部 村中洋介准教授:取り締まりや罰則(によって)、やってはいけないということが浸透していかないと、”喫煙所で吸う”という行為にはつながらない。(過料の)金額だけ見ても、実際に取り締まりされなかったら1万円でも10万円でも変わらない。
また、求められるのが「たばこ税」の活用。
「大阪市だけで今、300億円以上のたばこ税収があるので、環境整備のために、そこからお金を出すということは必要だと思います」と村中准教授は指摘する。
現在、大阪市内の喫煙所は約400カ所だが、村中准教授によると、人流データに基づく計算では、約3000カ所の喫煙所が必要だとも指摘されている。
しかし、受動喫煙を望まない人もいるため、対策は難しいのが現状だ。
吸う人も吸わない人も過ごしやすい街にするために。行政のさらなる努力が求められている。
(関西テレビ「newsランナー」2026年1月15日放送)

