物価高が続くなか、今年8月から医療費も値上げされようとしている。しかも対象は、我々の“命のセーフティネット”「高額療養費制度」だ。

高額療養費制度を利用する人は、がんや難病の患者だけではない。骨折や盲腸、白内障の手術などで利用したという人も多いのではないか。

1年前、患者たちの声で凍結されたはずだった見直し。しかし先月、厚生労働省はすべての所得区分が値上げされ、最大で38%の負担増になるという案を取りまとめた。

驚いたのは、今回の見直しで削減される給付費2450億円のうち、44%にあたる1070億円は「医療費の負担増によって受診をあきらめること」によるものだというのだ。

患者側の立場に立ち国の姿勢を追及する、全国保険医団体連合会の本並省吾事務局長は、「患者がどのように受け止めるか、真剣に考えてほしい」と再度の見直しを訴える。

■利用者は15人に1人。高額療養費は他人事ではない。

【全国保険医団体連合会 本並省吾さん】
「高額療養費制度」は、病気やケガで保険医療を受け、自己負担額が高額になった時に、一定額を超えた分が払い戻される制度です。

2023年度の利用者は821万人。国民の15人に1人が利用していることになります。

決して、ガンや難病などの患者さんだけが利用するものではないのです。

高額療養費制度は、大きく「一年間の利用回数が1回~3回まで」と「3回以上」に分けられます。
3回以上利用すると、『多数該当』となって4回目以降の自己負担額が大幅に下がるのです。(例:3回目まで月8万円程度の自己負担額が、4回目からは月4万4400円の自己負担額になる)
長期療養中の患者さんにとってまさに“命綱”です。

今回の見直し案では『多数該当』の上限額は据え置きとなっています。

厚労省は、このことなどを例にあげて「セーフティネット機能は強化している」と説明しています。

しかし高額療養費制度を利用している821万人中、「多数該当」となっているのは、2割。

つまり、制度の利用者のうち、8割の人の負担が増えることになるのです。

■最大38%値上げ 今回の見直しで負担額はどうなる?

12月24日、上野賢一郎厚生労働大臣と片山さつき財務大臣の合意により、「高額療養費制度」の見直しが決定しました。

上限額は、今年8月と来年8月に2回に分けて引き上げられる見込みです。

例えば年収260~370万円の世帯は、現行の月額上限57,600円から、来年8月には69,600円となり、21%の値上げとなります。

年収650万円~770万円の世帯は、現行の月額上限80,100円から、110,400円と、38%もの値上げになるのです。

■なぜ厚労省は試算に“長瀬効果”を組み込むのか?

厚生労働省は今回の見直しで削減される給付費2450億円のうち、44%にあたる1070億円は「医療費の負担増によって受診や治療を控えることによるもの」と見込んでいます。

これは「長瀬効果」と呼ばれ、「制度的な保険給付率の変更に伴って、患者の受診行動に変化が生じること」を指し、保険数理技師の長瀬恒蔵氏が1935年に著した「傷病統計論」に由来しています。

2022年の高齢者の医療費改革の試算にも長瀬効果は組み込まれ、そして実際に試算に近い形で医療費が減少しました。

こういうことから、厚労省は、長瀬効果に対して「かなり正確だ」と自信を持っているのです。

しかし、「命がかかった治療を支援する高額療養費制度」の給付を削減し、機械的な計算とは言え、1070億円もの受診抑制を見込んでいることを患者さんが知ったらどのように受け止めるか、真剣に考えてほしいです。

物価高や低賃金で経済的にも精神的にも追い詰められている子育て世代を追い込むことになります。

1年前の見直し案でも同様の「効果」を試算し批判を浴びたというのに、また同じことをしている…全く反省していないことに愕然としました。

12月26日の大臣会見で上野賢一郎厚労大臣に「(一年前)厚労省が受診抑制を見込んでいたことに大きな批判を受けたが、なぜ同じことを繰り返すのか」と質問しましたが、「単なる計算結果に過ぎない」と答弁しました。

本当に他人事ですし、単なる計算結果であれば、予算を修正すべきだと思います。

■親の命を諦めさせたお金で子育て支援をするのか…

4月から医療保険料の負担が増えます。
新しく『子ども・子育て支援金制度』が始まり、その財源の一部を「社会保険料に上乗せする形」で国民全員から徴収することになっているのです。

金額は、会社員など社会保険料の人は月額500円、国民健康保険は300円とされています。※こども家庭庁の試算による

しかし本来、医療保険は病気やケガを治療する際に医療費の経済的な負担を軽減するための制度です。

それがなぜ、児童手当や、育児給付の拡充などに充てられるのか。

しかも、財源の一部の700億円は、高額療養費の引き上げで捻出されたお金を充てるというのです。

子育て世代の親に病気の治療を諦めさせたお金で子育て支援をするということでしょうか。

子育て支援は国民全体で取り組むべきだと思いますが、国全体の問題だからこそ、税金の投入などの策を考えるべきです。

国民の命のセーフティネット「高額療養費制度」を犠牲にすべきではないと思います。

(全国保険医団体連合会 本並省吾さん)

関西テレビ
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