「狭くて窮屈…」仮設住宅での生活

2020年2月、岩手・陸前高田市気仙町の高台で地鎮祭に臨む家族の姿があった。
会社員・中山浩さん(59)の一家。

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市による宅地の造成に時間がかかったこともあり、この日を迎えるまでに9年が過ぎていた。

中山浩さん:
やっと家が建つんだなみたいなところですね

震災前、同じ気仙町にあった中山さんの自宅は津波に流され跡形もなくなった。

その後、市内の滝の里仮設団地に移り、4畳半2間の部屋に、浩さんと母、長男、長女の4人で暮らしてきた。

中山浩さん:
圧倒的に狭いです。とても不便に感じる、狭くて窮屈で

長男・稜太さんは、2019年度の岩手県高校総体陸上400メートルのチャンピオン。

長男・稜太さん:
人生の半分を暮らしているということなので、普通の家じゃないのでこんなところに友達も誘えるわけないし

仮設に多くの人が住んでいた時期は、団地内の集会所をヘアカットのボランティアが訪れたり、住民同士でおしゃべりしたりと、交流が盛んだった。

しかし、市内最後のプレハブ仮設になった滝の里仮設団地でも住民の退去が進んでいて、9月末時点で残るのは20世帯となった。
親しい人たちを多く見送ってきた浩さんの母・ヨツ子さん。複雑な思いを抱えていた。

母・ヨツ子さん:
「行って待ってるからな、早く来いよ」と、先に行く人はそうやっていくわけだが、本当に行かれてしまうというのは寂しいもんだよ本当、本当に寂しい

震災から9年7カ月…新居へ引っ越し

そして10月9日、震災から9年7カ月の時を経て、ついに高台の新居へ引っ越す日を迎えた。

中山浩さん:
やっとこの日が来たかみたいなところですけど、だいぶ待ちましたね

ヨツ子さんも胸の高鳴りを感じていた。

母・ヨツ子さん:
ドキドキしています。ドキドキだ、本当。なんとも言えない、うれしいはうれしいね

長男の稜太さんは、この日 大学がある宮城県から駆けつけた。

長男・稜太さん:
ここら辺にあるもの使うんでしょ。バーっと(箱に)入れちゃえばいいじゃん

長女・美穂さん:
ずっと9年間ここに住んでいて、少し切ないというか寂しい気持ちになりますね

2人の姉弟は震災当時小学生だった。
それぞれに9年間を思い返しながら、荷物をまとめ、仮設に別れを告げた。

それぞれが新しい生活に期待を膨らませている

新居までは仮設から車で10分ほど。
間取りは5LDK。仮設住宅とは比べ物にならない広さだ。
それぞれが新しい生活に期待を膨らませていた。

長男・稜太さん:
広さが違う。今までは自分のスペースなんてベッドの上だけで1畳くらいしかなかったんじゃないですかね。それがもうこれですからね、8倍

さまざまな支援金があるとはいえ、住宅ローンは高額で、不安もないとはいえない。
しかし、元の自宅近くの新居で暮らせることに浩さんも安堵している。

中山浩さん:
狭いところにずっといたので、新居はどうしても広い方がいいなと。のびのびとゆったりとした気持ちで過ごせればと思います。元々気仙町だったし、元々の近所の人と一緒にワイワイやれればいいかなと思います

実は、引っ越しはヨツ子さんの誕生日に合わせて行われた。
新居で87歳のお祝いをした。

中山浩さん:
ヨツ子さんにいいプレゼントになったかな

母・ヨツ子さん:
まだ何もないにしても、誕生日をこの新しい家で祝ってもらって、うれしかったですよ

引っ越しから1週間、まだ新生活には慣れていないというヨツ子さんだが、新居の住みやすさを実感している。

母・ヨツ子さん:
広い部屋は、のうのうとしていて、いいよね

広いリビングで体操をするのが、ヨツ子さんの日課になった。
震災から10年目での住宅再建。
一家は喜びをかみしめながら、新たな一歩を踏み出した。

(岩手めんこいテレビ)