データ提供 PR TIMES
本記事の内容に関するお問い合わせ、または掲載についてのお問い合わせは株式会社 PR TIMES (release_fujitv@prtimes.co.jp)までご連絡ください。また、製品・サービスなどに関するお問い合わせに関しましては、それぞれの発表企業・団体にご連絡ください。

プレスリリース配信元:公益財団法人スプリックス教育財団

スプリックス教育財団 基礎学力と学習の意識に関する保護者・子ども国際調査2025

                                       2025年12月24日

 概要

公益財団法人 スプリックス教育財団(本部:東京都渋谷区/代表理事:常石 博之)は、基礎学力に対する意識の現状を把握することを目的に、「基礎学力と学習の意識に関する保護者・子ども国際調査2025」を実施しました。今回の第6回目の報告では、保護者の『子ども観』と『将来への期待』の国際比較に焦点を当てました。

本調査では、日本を含む世界11か国の小中学生の保護者2,313人に「あなたにとってお子様はどのような存在ですか」「お子様に、将来どのような人になってほしいと思いますか」と質問しました。その結果、日本の保護者は『家族や友人、自分の意見を大事にしてほしい』と身近な幸せを子どもに期待する傾向が強い一方で、 調査に参加した日本以外の国の保護者は『社会に貢献し経済的に自立すること』等、将来の社会的な役割を子どもに期待する傾向が明らかになりました。
調査結果のポイント

(1) 子ども観:『感情的な関係』を強く意識する日本の保護者、『社会的役割への期待』をする他国の保護者
日本の保護者にとって子どもは「喜び」(90%)であるという回答が他国より多く、次いで「かすがい」(32%)「心配の種」(26%)と『感情的な関係』を強く認識する回答が続きました。一方で、他国の保護者にとって子どもは「喜び」(67%)に次いで「社会貢献」(45%)「自立」(44%)が多く、日本と比べて『社会的役割』への期待が強い傾向にありました。

(2) 将来への期待:『身近な人間関係』を重視する日本の保護者、『社会的・経済的な成功』を期待する他国の保護者
日本の保護者は子どもの将来に「自分の考えをしっかり持つ」(68%)を最も期待しており、次いで「家族を大切に」(58%)「他人に迷惑をかけない」(46%)「友人を大切に」(38%)といった『身近な人間関係』を重視する回答が続きました。他国の保護者は「家族を大切にする人」(46%)を最も重視しているものの、「経済的に豊か」(41%)「社会のために尽くす」(35%)といった『社会的・経済的な成功』を期待する回答が多い傾向にありました。

(3) 親の『子ども観』が『将来への期待』に影響か
日本は「親の喜び」や「家族のつながり」といった身近な幸せを認識することで、個人の考えや身近な人間関係を重視する傾向があります。一方の他国は「独立した存在」で「将来の社会の一員」といった役割期待を認識することで、経済的な成功や社会貢献を重視する傾向につながっていると考えられます。このように、『子ども観』と『将来への期待』は明確に一貫性を持っていることが示されました。

 調査の背景

子どもの学習意欲を高める要因として、親の励まし、学習環境の整備、適切な指導などが指摘されています。これらの要因には、保護者自身の『将来への期待』が存在します。つまり、親が「子どもをどう見ているか」「何を期待しているか」という意識が、子どもに対する教育的な働きかけや、子どもが学習に向かう動機付けに影響を与える可能性があります。

幼児期の家庭教育国際調査(ベネッセ総合教育研究所、2018年)では、4か国の保護者を対象に『子ども観』と『将来への期待』の関係性について調査し、国ごとに傾向が異なることが報告されています。本調査では、この調査を参考に調査対象を世界11か国に拡大し、「親にとってお子様はどのような存在か」「お子様に将来どのような人になってほしいか」を質問することで、各国の文化背景による意識の差をより広範に検証し、その実態を明らかにすることを試みました。

 調査方法


留意事項
・ 学校調査(エクアドル、ペルー、エジプト、インドネシア、ネパール、日本)では、回答者はランダムに抽出されたものではありません。そのため、便宜上「国名」として記載していますが、特定の地域や学校の結果であることにご留意ください。
・ 本報告では、日本の調査結果をインターネットパネル調査の5か国合計(以下パネル5か国と記載)および日本を除く学校調査の5か国合計(以下学校5か国と記載)との比較を中心に報告しています。日本以外の各国の回答については、付録のPDFをご参照ください。
・ 本リリースに関する内容をご掲載の際は、必ず「スプリックス教育財団調べ」と明記してください。

 調査結果

(1) 子ども観:『感情的な関係』を強く意識する日本の保護者、『社会的役割への期待』をする他国の保護者
「あなたにとってお子様はどのような存在ですか」という質問に対し、各国の保護者に表1の11の選択肢から、当てはまるものをすべて選んでもらいました。その結果を日本の保護者の回答が多い順に示したものが図1です。さらに、日本と他国の回答率の差が大きい6項目について、その回答率の差を図1右上挿入図に示しました。


図1. 日本とパネル調査5か国、学校調査5か国の保護者による「子ども観」の回答 「あなたにとってお子様はどのような存在ですか」という質問に対する回答。複数選択可能。パネル5か国は、アメリカ・イギリス・フランス・南アフリカ・中国の回答の合計、学校5か国はインドネシア・ネパール・エクアドル・ペルー・エジプトの回答の合計よりそれぞれ算出した。挿入図は日本と他国10か国で回答率の差が大きい6項目の回答率の差(ポイント)。

表1. 「あなたにとってお子様はどのような存在ですか」という質問の11の選択肢


日本の保護者の特徴として、子どもの存在は「喜び(私の人生に幸せと笑いをもたらしてくれる存在)」(90%)とする回答が圧倒的に多く、次いで、「かすがい(配偶者・パートナーと私をつなぐ存在)」(32%)や「心配の種(苦労や心配が多い存在)」(26%)といった感情的な家族のつながりを認識していることがわかります。その一方で、「自立(子自身が自立した存在)」(23%)や「社会貢献(将来の社会を担ってくれる存在)」(16%)は他国と比べて低い結果となりました。

一方、他国10か国の保護者の特徴としては、日本よりは少ないものの「喜び(私の人生に幸せと笑いをもたらしてくれる存在)」(パネル70%、学校59%)が最多で、次いで「社会貢献(将来の社会を担ってくれる存在)」(パネル44%、学校49%)や「自立(子自身が自立した存在)」(パネル45%、学校44%)が強く認識されていました。

日本は子どもの存在を「親の喜びであり、家族の絆であり、心配の種である」といった『感情的な関係』として強く認識していました。一方の他国は「親の喜びであるが、子どもは独立した存在であり、将来の社会の担い手である」と認識する傾向が強く、『社会的役割への期待』が日本より強いことがわかりました。
(2) 将来への期待:『身近な人間関係』を重視する日本の保護者、『社会的・経済的な成功』を期待する他国の保護者
お子様に、将来どのような人になってほしいと思いますか。」という質問に対し、各国の保護者に表2の11の選択肢から、当てはまるものを3つまで選んでもらいました。その結果を日本の保護者の回答が多い順に示したものが図2です。さらに、日本と他国の回答率の差が大きい6項目について、その回答率の差を図2右上挿入図に示しました。

図2. 日本とパネル調査5か国、学校調査5か国の保護者による「将来への期待」の回答 「お子様に、将来どのような人になってほしいと思いますか」という質問に対する回答。最大3つまで複数選択可能。パネル5か国は、アメリカ・イギリス・フランス・南アフリカ・中国の回答の合計、学校5か国はインドネシア・ネパール・エクアドル・ペルー・エジプトの回答の合計よりそれぞれ算出した。挿入図は日本と他国10か国で回答率の差が大きい6項目の回答率の差(ポイント)。

表2. 「お子様に、将来どのような人になってほしいと思いますか」という質問の11の選択肢

日本の保護者の特徴として、子どもには「自分の考えをしっかり持つ人」(68%)を最も重視し、「自分の家族を大切にする人」(58%)「他人に迷惑をかけない人」(46%)「友人を大切にする人」(38%)といった身近な人間関係を重視する回答が続く一方で、「社会のために尽くす人」(7%)「周りから尊敬される人」(6%)「リーダーシップのある人」(4%)などの社会的な成功への期待は他国と比べて極端に低いことがわかりました。

一方、他国10か国の保護者の特徴としては、日本よりは少ないものの「自分の家族を大切にする人」(パネル46%、学校48%)が最多で、「経済的に豊かな人」(パネル47%、学校26%)「社会のために尽くす人」(パネル34%、学校37%)と続き、社会的・経済的な成功を重視する傾向が表れました。

日本は子どもに「自分の考えをしっかり持ち、他人に迷惑をかけずに家族や友人を大切にする」といった『身近な人間関係』を大切にすることを期待していました。一方の他国は「家族を大切にし、社会のために尽くして経済的に豊かになる」といった『社会的・経済的な成功』を期待していることがわかりました。
(3) 保護者の『子ども観』が『将来への期待』に影響か
では、保護者の『子ども観』と『将来への期待』はどのような関係があるのでしょうか。調査対象11か国で、『子ども観』と『将来への期待』でそれぞれ回答が多かった上位2つを表3にまとめました。
表3. 11か国の保護者による国別『子ども観』と『将来への期待』上位2項目
背景色は、灰色が日本含め多くの国で共通、青色が日本以外の多くの国で共通、橙色が1か国のみで回答があった項目。



まず、表からはすべての国で「子は親の喜びである」が上位に来ており、将来への期待にも「家族を大切に」は上位にきていることから、「親にとって子は生きがいであり、家族を大切に生きてほしい」という意識は世界共通の認識であることが示唆されました。また、日本以外の多くの国では「社会貢献」や「自立」を強く認識しており、それが将来への期待の「経済的に豊か」「社会に尽くす」につながっている可能性が示唆されます。

一方で、「かすがい」を「喜び」の次に選んだのは日本だけであったり、「自分の考え」を最も期待しているのは日本と中国だけであったりと、日本の家族観の独自性も改めて明らかになりました。日本以外でも、ネパールが「喜び」よりも「自立」を強く認識したり、将来の期待でも「家族を大切に」よりも「仕事で能力を発揮」や「自分の考えを大切に」が多かったりと国によって傾向が異なり、その傾向は『子ども観』と『将来への期待』である程度の一貫性があることが示されました。

これらから、日本の子ども観として「社会的役割よりも感情的な関係を重視」している結果、社会的な役割を重視している他国と比べて将来に社会的な役割や地位を期待していないという日本独自の価値観が一貫性をもって明確になりました。

 まとめ

今回の調査により、11か国調査においても国ごとに傾向が異なり、保護者の『子ども観』と『将来への期待』が一貫性を持っていることが確認されました。

例えば、日本の保護者にとっては、子どもの存在の意味は「親の喜びであり、家族の絆であり、心配の種」です。このような『子ども観』を持つ日本の保護者は、子どもに将来「自分の考えをしっかり持ち、他人に迷惑をかけずに家族や友人を大切にする」ことを期待します。親子関係や友人関係といった『つながり』を大切にする価値観が両者に強く反映されています。対照的に他国10か国の保護者は、子どもを「親の喜びであるが、子どもは独立した存在であり、将来の社会の担い手である」と認識する傾向が強く、それが「家族を大切にし、社会のために尽くして経済的に豊かになる」ことへの期待の高さにつながっていると考えられます。

こうした『子ども観』と『将来への期待』の違いは、子どもの学習動機づけにも影響を与えている可能性があります。例えば、日本では「友達が塾に通っているから行く」「友達がやめたから私もやめる」といった、身近な人間関係に基づく学習行動が見られることがありますが、これは保護者の価値観が反映された結果かもしれません。一方、他国では『家族の期待に応える』『社会的地位を獲得する』といった目標が学習の動機になりやすいと推察されます。こうした違いを理解することは、各国の文脈に適した教育環境を考える上で重要な視点となるでしょう。

なお、付録の「調査の詳細」に日本以外の各国の回答率も掲載していますので、ぜひご覧ください。本報告は、「基礎学力と学習の意識に関する保護者・子ども国際調査2025」に基づく第6回目の報告です。今後もスプリックス教育財団では、保護者の『子ども観』と『期待』がどのように子どもの進路選択や学習成果に具体的な影響を与えるかについて、詳細な分析を進めてまいります。

調査の詳細は下記よりご確認ください。
調査の詳細(PDF)

 備考:関連調査一覧

国際調査
・ 幼児期の家庭教育国際調査(ベネッセ教育総合研究所2018)
https://benesse.jp/berd/jisedai/research/detail_5257.html
公益財団法人スプリックス教育財団 概要
公益財団法人スプリックス教育財団は、社会的支援を必要とする学生に対して奨学金の支給を行うほか、教育に関する調査研究を行いその成果を広く一般に公表し、もって青少年の健全な育成に寄与することを目的としています。

名  称:公益財団法人スプリックス教育財団
設  立:2023年4月
代表理事:常石 博之
事業内容:奨学金の支給、調査研究
財団HP :https://sprix-foundation.org/

企業プレスリリース詳細へ
PR TIMESトップへ
PR TIMES
PR TIMES