2025年の秋田県をキーワードで振り返る企画、今回は『進か退か』です。新県立体育館の整備が本格化する一方、洋上風力発電事業から三菱商事が撤退。秋田市では新スタジアム整備に向けての動きが議論を呼びました。
◇新県立体育館整備は「清水建設」企業連合 本格工事へ◇
新たな県内スポーツの拠点の整備が前進です。
入札が不調に終わり再入札が公告された新県立体育館の整備・運営事業者が、大手ゼネコン「清水建設」などで組織する企業連合に決まりました。
新県立体育館を巡っては、2024年7月、県が予定価格を約254億円と見込み入札を公告したものの、資材価格や人件費の高騰などで参加を表明していた4つのグループが全て辞退しました。
これを受け、県は事業費用を110億円増額した約364億円で再び公告。応募した3つのグループの中から清水建設などで組織する企業連合が落札しました。
落札額は約325億2300万円。6000席以上を備えるアリーナやトレーニングルーム、フードコートなどが整備される予定です。
現在は敷地の造成などの準備工事が行われていて、2028年9月末の供用開始を目指し整備が進められます。
◇三菱商事 洋上風力発電事業から撤退◇
国のエネルギー政策に大きな影響です。
8月、「能代市・三種町・男鹿市沖」と「由利本荘市沖」を含む国内3海域の洋上風力発電の事業者に選定されていた三菱商事などで組織する企業連合が、建設計画から撤退しました。
県内2つの海域では、着床式の風車103基を設置する計画で2026年3月の着工が予定されていましたが、2025年2月、三菱商事は「計画をゼロから見直す」としていました。
三菱商事は「世界的なインフレにより建設コストは2倍以上となり、4年前の応札以降、事業環境は大きく変化した。実現可能な事業計画立てることは困難と判断した」と説明しました。
9月には、鈴木知事が経済産業省へ要望。
秋田県・鈴木健太知事:
「秋田の経済規模に比べて、プロジェクトが大きいので、その辺りをしっかりと話し、大臣もそこは重く受け止めていると私には見えた」
国は年明けにも事業者の再公募を行う見通しで、極端に安い価格で落札できないよう入札価格の下限を定め、それを下回った場合には失格とすることにしたほか、事業実施の迅速性よりも実現性を重視して審査するとしています。
◇市長就任直後、改革に着手 「外旭川まちづくり」は白紙撤回◇
県都・秋田市では様々な議論が話題になりました。その中心にいたのが、4月に就任した沼谷純市長です。
就任早々、改革に乗り出します。秋田市役所に初登庁した4月14日には、前市長肝いりの政策だった外旭川地区のまちづくり事業について、計画を白紙撤回すると表明しました。
秋田市・沼谷純市長:
「スタジアム・市場・イオンタウンの開発の3つがセットだったのが今までの外旭川の計画だった。いったん白紙にしてしまわないと、スタジアム整備の検討に入れない。スピード感を大事にしてやってきているつもり」
市は事業パートナーのイオンタウンに「白紙撤回」に至った経緯を説明し、了解を得た上で協議を継続しています。
沼谷市長:
「外旭川に消費が移るだけだったら市内の経済・消費が増えずに移動するだけなので、市外から人・金・投資・企業が来るというのが入っていなければ駄目だと話している」
◇「新設」方針示すスタジアム整備の行方は◇
2025年はサッカーJ2・ブラウブリッツ秋田の本拠地となるスタジアム整備に関する議論も注目されました。
スタジアムは秋田市が主体となり、八橋運動公園の第2球技場と健康広場に新設する計画を進めていました。
しかし、沼谷市長は「整備費用が分からないまま新設だけを前提にはできない」として、「ASPスタジアムの改修」と「新設」それぞれの事業費やスケジュールなどの調査を外部の業者に依頼して比較検討を開始。
その結果、改修と新設で費用がほぼ変わらないことが分かり、「新設」を前提に進める方針です。
沼谷市長:
「新設ありきだと市民はそれはそれでどうなのという話になっていたのではないか。コストが新設と変わらない、改修するメリットが長期的に見ると薄い。コスト的な理由で検討して結論を出したので十分意味があったと思っている」
整備費用は収容人数5000人規模でも約142億円。整備主体や費用の負担割合などは、今後、県・ブラウブリッツとの3者で協議することになります。
沼谷市長:
「できることならばスタジアムを少しでも早く整備したい。一方で秋田市の場合は特に財政的に厳しいので、厳しい部分を超えてというと財政破綻につながるので、どこまでできるのか、県もブラウブリッツにもしっかり当事者として関わってもらいたい。国の制度も使いながら考えた時には、県と市が両方整備主体になるのが、公設の場合は前提条件になると思う。そこを協議して整えていくという最後の詰め、7合目くらいまで来ていると思う」
新スタジアムだけでなく、秋田市は卸売市場の再整備や人口減少対策、厳しい財政状況など課題は山積しています。
沼谷市長:
「2026年は長い間解決できなかったことを解決する年にしたい。自分にとっては市長として初めて自分の手で予算編成をしていくので、例えば、ごみ袋の値下げとか、若い世代を応援するための新しい事業・予算とか、クマ対策も終わりがないので、来年度は公約を形にしていく実質的なスタートの年にしていきたい」