2025年を様々な角度から振り返るシリーズ。第3回は、高値が続く「コメ」についてです。
家計への影響から「コメ離れ」も懸念される中、専門家は今後、「コメ余り」によって価格が下がる可能性を指摘します。
一体いつまで続くのでしょうか。コメの価格高騰が、止まりません。
記者リポート
「新米がずらりと並んでいますが、中には5000円を超える商品も見られます」
コメの価格が上がり始めたのは、2024年の夏頃。記録的な猛暑で不作となり、もともと5キロ2000円前後だった店頭価格は、じわじわと上昇。
その後も品薄感が続いた結果、3月には4000円台に突入する事態となりました。
こうした中…
記者リポート
「備蓄米を積んだトラックが、県内の精米工場に到着しました」
市場の混乱を抑えようと、政府は備蓄米を放出。
5月には備蓄米の随意契約による売り渡しも始まり、発売当初店頭には行列ができました。
整理券をもらえなかった人
「きょう買えません。米どころ宮城なのにショックですよ」
購入した人
「今まで5千円近くだったのですごく助かる」
価格の安い備蓄米が出回ったことで、一時的に下がりましたが、その後再び過去最高値の水準に。
通常、新米が出回り始め流通量が増えると価格が下がる傾向にありますが今年は下がりません。
買い物客
「前は2000円くらいで買えたでしょ。今2000円じゃ買えないでしょ」
「買うの控えちゃう。せめて3000円台になってくれればいいんだけど…」
理由の一つに「概算金」があります。
「概算金」は、コメを集荷したJAが農家に支払う前払い金で、農家の当面の資金確保が主な目的ですが、「コメの流通価格を形成する指標」とも言われています。
JAは、2025年産米の供給の不安感から、民間の集荷業者に買い負けしないよう、2025年、概算金を相次いで引き上げ。
宮城県内では、新米1俵60キロあたりの金額が、「ひとめぼれ」で3万1000円など(「ササニシキ」3万2300円「つや姫」3万1100円)2024年のおよそ1.6倍となり、それが新米の価格にも反映されているのです。
とはいえ、農家の思いは様々です。
農家
「いままであまりにも安すぎたので、これくらいの値段が妥当なんじゃないかと私は思います」
「喜んではいられないと思うんだね。他の経費が高くなってることだし」
コメの流通に詳しい専門家は、次のように指摘します。
宮城大学 大泉一貫名誉教授
「市場原理を入れてくれば、納得せざるを得ない金額が出てくる。ところがコメの世界にはマーケットがない。マーケットのない中で消費者、生産者が納得のいく価格を設定するというのは、土台無理な話」
魚や野菜が市場で競りにかけられるのに対して、コメの取引は、売り手と買い手が直接交渉して価格を決める、「相対取引」が主流です。
大泉名誉教授は、より透明性のある市場の構築とコメ農家の供給体制そのものを支える制度も必要だと話します。
宮城大学 大泉一貫名誉教授
「今(コメ価格が)非常に高くてバブルの状態だが、価格が安くなったときには(コメ農家への)収入保険や直接支払いといった、セーフティネットを張っていかなければならない」
今後、コメの価格はどうなっていくのか。
農水省が発表した2025年の主食用米の生産量と、向こう1年のコメの需要量の見込みを比べてみると…生産量がおよそ747万トンなのに対し、需要量は694万トンから711万トンと、生産量が需要量を30万トン近く上回っています。
大泉名誉教授は、今後、コメ余りを回避しようと、値下げする動きが出てくる可能性が高いと指摘します。
宮城大学 大泉一貫名誉教授
「(コメの)適正在庫と言われているのが180万トンから200万トン。ところが2026年6月には、230万トンくらいの民間在庫が残るだろうということで、過剰で推移するという見通しを農水省は示している。そうすると3月ごろの決算期の前にキャッシュを持っておきたいというのが、会社経営者としては当然の発想になってくるので、損切りをしてでも現金に変えるという行動が出てくると思う」
今後の価格について、大泉名誉教授は、5キロあたり3500円から4000円程度と、今の価格から500円から800円くらいは下がるのではないかとの見通しを示しています。
消費者も生産者も大きく翻弄された2025年。
私たちの主食をどう守り、どう持続させるのかが、問われています。