18日、審理の最終日を迎えた安倍晋三元首相銃撃事件を巡る裁判。
殺人などの罪に問われている山上徹也被告に対し、検察側が求めたのは無期懲役でした。
また、午後1時過ぎから始まった裁判の冒頭、安倍元首相の妻・昭恵さんの意見陳述書が代理人によって読まれました。
そこには、事件や夫への思いなどについて書かれていました。
安倍昭恵さんの意見陳述書:
私にとっては政治家の安倍晋三であるとともに、かけがえのない、たった1人の家族です。喪失感は一生消えることはありません。
3年前、選挙演説中の安倍元首相を手製の銃で撃ち、殺人などの罪に問われた山上被告。
2025年10月の初公判では事実関係を認めました。
弁護側はこれまで、山上被告の母親が旧統一教会に約1億円もの高額献金をしていたことを挙げ、「宗教被害」が事件につながったなどと主張。
一方、検察側は不遇の生い立ちがあったとしても被害者とは無関係で、極めて著しく悪質な犯行と指摘。
刑の重さが主な争点となっていました。
18日の公判の冒頭、代理人によって読まれたのが安倍元首相の妻・昭恵さんの意見陳述書です。
その中では、事件後の心情について「突然の夫の死は衝撃的で目の前が真っ暗になり、かなり長い間夢の中にいるようでした。街を行き交う家族連れなどを見ると、自然と涙が止まらなくなります。どれだけ悲しくても、負の感情が湧き出しそうになると俯瞰(ふかん)してそうならないようにしてきました。私にとっては政治家の安倍晋三であるとともに、かけがえのない、たった1人の家族です。喪失感は一生消えることはありません」と記されていました。
また、「被告人がどんな態度で、どんな表情で夫を奪ったのか直接知りたく、被害者参加制度を利用して出席しました。被告人は私の目の前で謝罪することはありませんでした。控室で夫のことを話していると、涙があふれ出ました」と、12月3日に被害者参加制度を利用し出廷したことについても触れました。
さらに意見陳述書で昭恵さんは、山上被告に向けて次のようにと求めました。
安倍昭恵さんの意見陳述書:
夫は国民が日本人であることに「自信をみなぎる国にしたい」と言っていました。私は前を向いて夫の志を紡いでいきます。被告人には自分のした罪を正面から受け止め、きちんと罪を償うように求めます。
検察側は「生い立ちはそれ自体を考慮すべきではない」「プライドの高さから来る人生に対する不満があった」などと指摘した上で、「犯行から3年を超える年月がたち内省を深める時間はあったと思うが、謝罪を一切述べることはなかった」などと、山上被告を非難。
「著名な政治家に対し、暴力で社会の変革を求めたことは法治国家において絶対に許されない」として無期懲役を求めたのです。
この時、山上被告は表情を変えることなく手元の資料を見つめていました。
一方、弁護側は「被告が罪の重さを理解し納得して受け止めることが、社会にとっても良い解決になる。違法とされた勧誘により兄弟は経済的損失を被った。山上家の子どもへの加害者が誰かは明確である」とし、「最も重くても懲役20年までにとどめるべき」と主張しました。
そして、裁判長に「何か述べることはありませんか?」と問われた山上被告は首を振りつつ、「ありません」と答えました。
元首相が多くの人の前で銃撃され死亡するという、社会的に大きな影響を与えた事件。
判決は2026年1月21日に言い渡されます。