２０２５年を様々な角度から振り返るシリーズ。
第２回は「気象」です。平野気象予報士がお伝えします。
２０２５年も、猛暑や大雨などに翻弄された一年になりました。以前と比べると、気象はどんどん「極端化」しているようです。
気象庁に専門家が集まり、異常気象の分析検討会が開かれました。
ここで議題になったのが、２０２５年の夏の暑さです。
異常気象分析検討会 中村尚会長
「おととし、去年と、顕著な高温になりましたけど、それをさらに上回る高温の記録になったということです。これは異常気象だと思います」
とどまることを知らない夏の暑さ。
２０２５年の夏の平均気温は、記録的に高かった、２０２３年、２０２４年をも上回り、観測史上最高を記録。（※仙台のデータ）
全国で４０度超えが続出し、宮城県内でも、多くの地点で、３５度以上の猛暑日が、過去最多となりました。（※１９地点中１５地点）
今年、なぜここまで極端な暑さになったのか。
そこには、過去には見られなかった、ある現象が影響していました。
仙台管区気象台 南敦地球温暖化情報官
「今年は、７月の梅雨前線が現れる状況の時から、すでに夏、真夏のような大気の状態になった」
２０２５年は、梅雨の期間が半月ほど短く、宮城県内では、７月の雨量が、平年の１割以下にまで落ち込んだところもありました。
大崎市の鳴子ダムでは、３１年ぶりに貯水率が０パーセントとなるなど、渇水に見舞われました。
こうした「空梅雨」が、気温の上昇に拍車をかけたとみられています。
仙台管区気象台 南敦地球温暖化情報官
「早い時期から暑い状態になったというのが、猛暑日が増えた要因になると思います」
さらに、暑さを底上げしているのが、近年の地球温暖化です。
気象庁の分析によると、今年の記録的な暑さは、地球温暖化がなければ起こりえなかったことが明らかになっています。
仙台管区気象台 南敦地球温暖化情報官
「地球温暖化が進むことで、ベースの気温がどんどん上がっていきますので、より極端な暑さも起きやすくなりますし、極端な暑さの例として、猛暑日や熱帯夜の発生が、今後もどんどん増えてくるだろうと見込まれます」
そして、暑さの「極端化」とともに指摘されているのが、暑さの「長期化」です。
２０２５年、仙台では、観測史上最高となる３７．４をを記録しましたが、この気温が出たのは、本来であれば暑さが落ち着くはずの９月でした。（※９月２日）
実際、夏はどれほど長くなっているのか、仙台の気温をもとに検証しました。
夏は最高気温２５度以上、冬は１０度未満が、３日続いたところを期間の区切りとし、その間を秋と定義します。
そのうえで、２５年間の平均値を比較しました。
その結果、１９５０年代から９０年代にかけては、大きな変化がないのに対し、２０００年代は、「夏」が３０日程度長くなっていました。
一方で、「冬」に入る時期は、あまり変わっていません。
夏は長く、秋は短くなっているという体感もあながち間違いとは言えなさそうです。
仙台管区気象台 南敦地球温暖化情報官
「地球温暖化が進むことで、平均気温が上がりますので、暑い時期はより長くなると言えると思います」
夏の暑さが、極端化・長期化する一方…
記者リポート
「宮城野区中野の産業道路付近です。道路が冠水していて私の股下まで水が上がってきています。あちらには動けなくなった車両が何台も立往生している状況です」
１０月、仙台市の沿岸部などで、１時間に１００ミリの猛烈な雨が降り、大規模な浸水被害が発生しました。
２０２５年、県内は、「空梅雨」だった一方、「記録的短時間大雨情報」が３回発表されるなど、何度か、局地的な大雨に見舞われました。
こちらは、１時間に５０ミリ以上の「非常に激しい雨」の発生回数を示したものです。
１９８０年代、９０年代は、稀な現象でしたが、２０００年代に入ると、毎年のようにどこかで発生しています。（※気象庁の統計より）
こうした極端な大雨が増える背景には、地球温暖化による気温の上昇があるとみられています。
仙台管区気象台 山中力主任予報官
「気温が高くなると、大気中に含むことのできる水蒸気の量が大きくなります。そういう性質があるので、一度に降る雨の量が、それだけ多くなるという性質があります。なかなか（雨が）降りにくいけれども、一度降るとたくさんの量の雨が降る。そういう傾向になってきていると思います」
そのメカニズムを、「ししおどし」を例に考えてみます。筒が細い「ししおどし」は一度に溜められる水の量が少ないため、頻繁に傾きます。これが気温の低い状態です。
つまり、雨の降る日は多くなりますが、一度に降る雨の量は少なくなります。
一方、筒が太い「ししおどし」は、一度に溜められる水の量が増えるため、傾くまでに時間がかかります。
これが気温の高い状態で、雨の降る日は少なくなりますが、一度に大量の雨が降ることになるのです。
気象庁は、近年増加する局地的な大雨への対策を進めています。
２０２６年には、「線状降水帯」の発生を、２、３時間前に予測する、「直前予測」の運用を始める予定で、早い避難行動につながることが期待されています。
仙台管区気象台 山中力主任予報官
「雨の降り方が極端になってきています。一度に多くの雨が降って、災害が発生したりということが、最近多くなってきています。いざ大雨になった時に、どういった避難行動をとるのかというところを、普段から、家族とかで、話し合っておくとか、そういった準備をしていただくことが重要かなと思っています」
こうした極端な現象は、まだまだ予測が不十分で、いつ、どこで、どんな現象が起きるか、正確な予測は難しい状況です。
あらゆる可能性を排除せず、最悪のケースも想定する。柔軟な対応がとれるようにシミュレーションしておくことが求められると思います。
