新潟県見附市で6日、フリージャーナリストの池上彰さんの講演会が開かれた。池上さんは現在の日中関係や物価高の現状などの時事問題について解説。2026年への影響にも触れた。

■“存立危機事態”とは?池上彰さんが解説

見附市で行われたフリージャーナリスト・池上彰さんの講演会には、市民約800人が会場を訪れた。

池上さんは「どうなる今後の日本!池上さんに聞いてみよう!」をテーマに講演。冒頭で取り上げたのは、高市首相が衆院予算委員会で発言した「存立危機事態」について。池上さんは、そもそも「存立危機事態」の詳細について説明。

「当然日本は国家ですから、外国から攻撃されたら自分の国を守る権利はあるわけです。これを個別的自衛権という言い方をしています。その一方で、日本と非常に仲のいいアメリカが、例えばどこかで攻撃された時、日本がアメリカを助けに行きますと、これは日本の自衛隊が海外で戦争することになるんです。これは、日本国憲法9条で、日本は戦争を放棄しているわけですから、これはできないということになるわけです。でも、アメリカにしてみれば、日本が何かが攻撃されたら、助けに行ってあげるのに、アメリカが攻撃されたら、日本は助けてくれないのかという、そういう不満が出てくる。そこでどうしようかと考えた結果が、存立危機事態というところになったわけです」

こうした説明を踏まえて高市首相が発言した背景やそれに対する中国の反応について分かりやすく解説。また、この日中関係については2026年以降も続くとの見通しについても語った。

「これからどうなるのかということですけど、とにかく習近平国家主席としては、何としても高市さんの発言を撤回させたいと思っているわけですけど、高市さんはそれは撤回しませんよね。高市さんにしてみれば間違ったことを言ったわけじゃなく、ちょっと分かりやすい説明をしてしまったというわけですから、当然撤回なんかしないということは、これから当分またこういう状態は続いていくだろうということです。ですが、中国の一般の国民にしてみると、やはり日本の海産物を食べたいし、日本に旅行に行きたいしというそういう思いはものすごく高まっているわけです。いずれどこかの段階で、日本への嫌がらせをやめざるを得ないだろうとは思うんですが、中国も本当にメンツを大切にする国ですから。とにかくメンツが潰されたと思っているから怒っているわけで、そのメンツがどのように回復するのか、そのためにはまだまだ時間がかかるだろうということですね。なので、年を越してもまだしばらくこの日中関係が今のような状態は続くだろうということです」

■「物価は上がらない、給料も上がらない30年間が異常」

その後、話は「物価高」の現状について及んだ。

「30年間も物価は上がらない、給料も上がらないというこんな状態に慣れてしまっているわけですけど、この30年間の方が異常だったんだということです。これから、物価も上がるけど給料も上がる、給料も上がるけど物価も上がるという、そういう状態にこれから戻りつつある。それに私達は慣れることができるのかどうか。まずは物価が上がった後で給料が上がってなんとか追いつこうとするということは、それまでの間、辛い状態にはなるだろう。今これだけ物価が上がってしまってどうなるんだろうと思うわけですけど、この後遅れる形で給料が上がってくるという、来年はそういうことが期待できる。とりあえず、そういう心構えで新年を迎えていただければ」

物価高によって企業の賃金は上がる見通しを示した一方で、経営者にとっては厳しい状況であるなど、日常生活に直結する話題に、訪れた人たちも池上さんの言葉を熱心に聞き入っていた。

■トランプ関税でアメリカが混乱に!?

世界各国で取材をしている池上さん。トランプ大統領について時間を割いて説明した。特に強調したのが、「トランプ関税」の動向についてだ。トランプ大統領が世界各国に発布した関税措置により世界が混乱に陥ったが、現在はアメリカ国内が混乱に陥っていると話す。その要因が、アメリカで行われている裁判だという。

「大統領には本来関税を引き上げるという権限はないんですね。アメリカで関税をいくらにするかっていうことを決めるのが議会なんですね。今回トランプさんは議会を通さないで自分で勝手に、相互関税だ、25%だ50%だって言ってこういうことをやってたわけですから、これはおかしいだろうと裁判になりまして、地方裁判所、それから控訴裁判所まではトランプさんが負けたんですね。そして現在、最高裁判所でこれは憲法違反かどうかという審理が行われています。もしこの相互関税は憲法違反であるってなった場合、これまで世界中の国々がアメリカにいろんなものを輸出している時に、それだけ関税という形で、お金を取られているわけですけど、それを全部取り戻すということになるわけですね。アメリカ大混乱ですよね。これだけの税収があるぞ、なんて言っていたら、それを全部お返しなさいと言ったら、大変な騒ぎになるわけです。そして当然、海外からいろんな商品が入ってくると、アメリカの企業が当然関税を払うわけですから、アメリカ国内での様々な輸入品の値段が上がっているわけです。そうするとアメリカの消費者はその高い値段でいろんなものを買っている。関税が憲法違反だっていうことになったら、その関税を全部戻すっていうことになったら、じゃあ我々がお店で買った高い値段で買ったものの差額を返せと裁判が次々に起きるかもしれないというわけです。そうするとアメリカは大混乱に陥るかもしれないというのが現在の状態なんだということです」

■「好奇心を失ってはダメ」

メディアで細かく報じられていない情報や、話題になっている時事問題について分かりやすく伝えた池上さん。

最後には、「好奇心を失ってはダメ。好奇心を持つことは若さを保つ秘訣でもある。また、新たなことを勉強する姿を子どもや孫に見せることで、子どもや孫も勉強するようになる。自分も勉強して子どもも勉強したら、一石二鳥。勉強し続けることが必要だ」と話し、勉強し続けることの大切さを説いていた。

NST新潟総合テレビ
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