高齢者施設の「あいどる」です。長野県塩尻市のデイサービスセンターに通う96歳の女性は、認知症を患いながらも施設で使う雑巾を1日1枚ほど手縫いで作り重宝されています。また、明るい性格でムードメーカーにもなっています。
■雑巾作りが毎日の「張り合い」
小さい針の穴に糸を通し、手際よく雑巾を縫っていきます。
作っているのは、塩尻市の甲斐沢濱子さん。96才です。
甲斐沢濱子さん(96):
「(手際がいいですね)そんなことない、おら下手くそだけど一応、針仕事はどうやったって雑巾なんか誰だってできる」
2年前から週に4、5日ほど市内のデイサービスセンターに通う濱子さん。
認知症を患っていますが、目もよく見え、手先もしっかりと動きます。
趣味だった裁縫の腕前を生かして施設で1日1枚ほど雑巾を手縫いしています。
甲斐沢濱子さん:
「(どんなことを考えながら縫っている?)真っすぐに縫わなきゃいけないと思うし、糸が短くなればそこで止めなきゃいけないし、そこでつながなきゃいけないじゃん」
縫っているのは施設で使うための雑巾。こまめな消毒や清掃が必要となるデイサービスセンターで重宝され、濱子さんにとっても毎日の「張り合い」となっています。
■歌と踊り大好き「ムードメーカー」
黙々と縫っていた濱子さんですが―。
甲斐沢濱子さん(炭坑節):
「掘って、掘って、また掘って」
「炭坑節」を歌いだしました。
甲斐沢濱子さん:
「(炭坑節お好き?)好きもなにもねえが、おら年寄なもんでさ。踊りだって踊ったよ。今だって盆踊りやれって言われればやれるよ」
休憩中にも―。
歌と踊りが大好きな濱子さん。ほかの利用者にも教えているそうで、すっかりみんなが踊れるようになったそうです。
甲斐沢濱子さん(炭坑節):
「月が~出た出た、月が~出た~、よいよい」
甲斐沢濱子さん:
「楽じゃん、覚えれば。毎日やることさ、お茶の時に、ただお茶出すっていうより、みんな寄ってくる」
施設利用者(86):
「(濱子さんと一緒に過ごすとどんな気持ちになる?)いい気持ちになる」
施設職員:
「デイサービスセンターのムードメーカーで、いない日と全然違う。盛り上げ役です。たくさん歌も歌ってくれますし、『掘って掘って(炭坑節)』も教えてくれますし、それだけじゃなくて、昔の知恵とかもたくさん教えてくださる」
雑巾づくり、歌と踊り、そして、ほかの利用者や職員との会話が元気の秘けつのようです。
■「うれしい、また作りたくなる」
濱子さんは自宅でも雑巾を作っていて、家族からの相談もあり、施設の隣の「ふれあいセンター」に2025年9月から販売コーナーも設置されました。
ふれあいセンターの利用者:
「最近はそういうこと(雑巾手縫い)なかなかできていないね。いいですよ、やっぱりね」
甲斐沢濱子さん:
「うれしいよ、自分で作ったの(売れて)また作りたくなるよ。だってみんな喜ぶ」
売り上げは材料のタオルの購入費用に充てられるということです。
■「ほめてもらって悪いね(笑)」
雑巾を縫って、歌って、踊る、濱子さん。これからも「ムードメーカー」として施設を盛り上げます。
施設職員:
「濱子さんが話しかけてくれたりとか、歌ってくれたりで、すごく盛り上げてくれるので職員もすごく助かってるというか、すごく明るくなるの」
甲斐沢濱子さん:
「ほめてもらって悪いね(笑)」
施設職員:
「本当のこと(笑)」
濱子さん:
「月が~出た出た~、月が出た~、よいよい」