シリーズで伝える『2025くまもとニュースの深層』では6月に発覚したネコの大量死事件、150匹以上のネコが死んだ凄惨な事件はなぜ起きたのか。関係者への取材を通してその背景に迫るとともに、同じ過ちを繰り返さないため私たちに何ができるか考える。
動物愛護法違反の疑いで逮捕された女
6月に凄惨な事件が明るみとなった。動物愛護団体に所属する熊本市在住の女の自宅などから、150匹以上のネコの死骸が見つかった。様々な事情で飼えなくなった人たちなどからネコを預かり、里親探しの依頼を受けていたという。

熊本市からの刑事告発を受けた警察は、9月に動物愛護法違反の疑いで女を逮捕した。逮捕当時、「預かるネコが増えるにつれ費用や手間が増え、だんだん面倒になっていった」と供述していたという。
「かわいそうな命を助けたい」の裏に
事件はなぜ起きたのか、女が所属していた団体の代表に話を聞いた。愛護団体の代表は「ネコの保護依頼があったら『こういう依頼があるけど、大丈夫?いっぱいいるんじゃない?』と必ず聞いていたが、『他の人が空いているので大丈夫です』と言っていた。『今、何匹しかいない』と結構少ない数を言っていた」と振り返る。

長年、ボランティアで保健所に預けられた犬の里親探しに奔走してきたという代表。団体の中で、ネコの保護活動を担当していた女は、団体に内緒で多くのネコを預かっていたという。

愛護団体の代表は「『かわいそうな命を助けたい』という思いだったと思う。いつも口癖のように『私が助けなかったらどうなるの』と言っていた」と話し、「なんで忙しさにかまけて(女の家に)行かなかったんだろう。物資が届いたときに『持っていくよ』と言っても『取りに行きます』と必ず言っていた。どうして無理にでも持って行かなかったんだろうと今でも思う」と後悔の言葉を口にした。

食い止められるタイミングはどこだったか、愛護団体の代表に尋ねると「難しいですね。どこだったんでしょうね。私はものすごく信頼していて、知識もやっぱりある程度あったので、本当に信頼しきっていた。『大丈夫です』という言葉を信じていた」と話す。代表は、今回の事件の責任を取って団体を解散した。
各動物愛護団体は事件をどうとらえる
救うことができなかった157匹のネコを供養しようと、11月には複数の愛護団体の関係者などが慰霊碑を建立した。

動物愛護団体・フィリアの田尻みゆき代表は「『熊本事件』として絶対忘れてはいけない。そうでないと報われない。語り部として受け継いでいきたい」と話し、くまもと犬猫緊急災害チームの山下マキ事務局長は「地域の無関心こそがどんどん孤独に追いやって発覚が遅れるのは社会の問題。行政や保健所、愛護団体、支援センターが情報共有していくことも大事」と話す。

また、公益財団法人動物環境・福祉協会Evaの理事長を務め、動物愛護活動に取り組む俳優の杉本彩さんは「途中から自分が受け入れられるキャパシティーが分からなくなってくる。同情だけで引き受けて最後は救うどころか、苦しめることになる本末転倒のパターンもある。何でも引き受けてくれる『神ボランティア』というようにあがめられると、人間は弱いので承認される喜びに満たされて、断ることができないというケースもある。理由は様々だと思う」と活動の難しさについて指摘する。

家族、そして地域の一員となっている動物をいかに守っていくのか、悲惨な事件を繰り返さないためにも一人一人が自分の事として考える機会としたい。
(テレビ熊本)
