岩手県盛岡市は財源の確保などを目的に123の事業の見直しを進めています。市民生活に影響する事業も様々あります。
見直しを進めている123の事業のうち、例えば、いわて盛岡シティマラソンの負担金3500万円、老人クラブなどが利用する敬老バス運行業務委託料500万円、額は調整中ですが放課後児童クラブの利用料補助金などといった事業について、見直しや廃止とすることで支出を削減する方針を10月24日に示しました。
11月21日の市議会全員協議会で、市は各事業を見直す理由について説明しました。
このうち2025年、約7000人が参加したいわて盛岡シティマラソンについては、「さんさ踊りなどと比べて交流人口拡大の費用対効果が低い」としています。
また、夏の風物詩である「盛岡・北上川ゴムボート川下り大会」も度重なる赤字の補填や職員の負担を理由に「継続は困難」としています。
こうした説明に対し、議員からは厳しい声が相次ぎました。
太田隆司市議
「既成事実をつくれば、それで進んでいくかのような印象を持った。そういった意味でも非常に急ぎすぎでは」
兼平孝信市議
「もうちょっと丁寧に各団体と(話し合って)1年くらいかけてやっていかないと成し遂げられるものではない」
内舘茂市長は「現状のままでは市の貯金にあたる財政調整基金が5年後にマイナスになる」と危機感を示した上で次のように述べました。
盛岡市 内舘茂市長
「市民の皆さんの話をよく聞き、今後しっかり判断をしていきたい」
事業の見直しは唐突な印象もありますが、背景にはやはり財政難があります。
市では2026年度からの5年間、一般会計で年間9億から37億円の歳入不足が生じるとの中期財政見通しを示しています。
このままでは財政が立ち行かなくなるとして、事業見直しの方針が示されたわけですが、それによる支出の削減効果について、市では7億6000万円に上るとしています。
ただ、事業の見直しには市民の理解は欠かせません。
見直しの対象となっている2つの事業の現場を取材してきました。
冬のにぎわいを生み出そうと中心部で行われているイルミネーションは、市民や観光客の目を楽しませる存在となっています。
街の人からは「やっぱりきれいだなって。心が明るくなる感じがしました」「すごく素敵、観光地だなって感じで」などの声が聞かれました。
市では駅前通と肴町の商店街のイルミネーションについて、負担していた500万円を2026年度から廃止する方針です。
それについて街の人は…
「それはもったいないかもしれない。せっかく観光客が増えてきたのに」
「イルミネーションあっての冬だと思うのでなくなるのはちょっと寂しい」
なお、駅舎周辺のイルミネーションは見直しの対象とはなっていません。
一方、盛岡市山岸の放課後児童クラブ「サンガキッズ山岸」は、小学1年生から6年生約80人が利用しています。
放課後児童クラブの利用料について市では2020年度から低所得の世帯を対象に児童1人あたり月最大1万7000円を補助してきました。
2024年度は212人に対し2372万円を補助してきましたが、この補助金が見直しの対象となっています。
サンガキッズ 佐々木あおい所長
「初期費用や様々な面で料金がかかるというハードル・敷居が高くなる。子どもたちが盛岡で育って、盛岡で子育てがしたいと未来も思えるような、持続できるような関係が残っていくような財政を期待している」
市が放課後児童クラブの運営団体に聞き取りを行った結果、自己負担が増加した場合、半数以上のクラブで、退所や利用控えが発生すると予測しているということです。
市では各事業の関係者に対し、見直しについての聞き取りを行っています。
反対意見もあったことから、市では放課後児童クラブ利用料補助金や盛岡シティマラソンなど32の事業については今後も協議や調整を進めていくとの方針を示しました。
つまり32の事業は見直しの方針が変わる可能性もありますが、それ以外の事業は2026年度から順次見直す方針です。
市では2026年2月に最終的な見直し内容を決定するとしています。
市の財政を成り立たたせるために一部の見直しは必要かもしれませんが、市民の思いが置き去りにならないよう丁寧な対応が求められています。