高市総理の台湾有事をめぐる発言を発端に、日本への圧力を強める中国。
19日、中国の「北京日報」が、新たに専門家の見解として伝えたのは…
「日中関係の緊張が続けば、中国は新たなパンダの貸し出しをしない」
日本のパンダはゼロに?上野動物園は長蛇の列
現在、日本にいるパンダは東京・上野動物園の2頭のみで、2026年2月には中国へ返還される予定…。日本政府は次なるパンダを要請しているが、貸し出しが停止され、ゼロになる可能性があるというのだ。

その一報を受け、上野動物園のパンダ舎を取材すると…

ディレクター:平日にも関わらず多くのファンで賑わっています。

園のスタッフによれば、開園直後から普段より多くの人が詰めかけたという。
22日、開園直後に駆け付けた女性が撮影した映像には…“70分待ち”

パンダを見に来園したももさん:
見納めっていうのがあるから、そういう思いで見てたら、なんか泣けてくるというか…パンダさんもう1回、日本に連れてきていただきたいなという…

パンダファンの男性:
(日本で)一生パンダが見られなくなっちゃう可能性も出てきたような感じがするんで、覚悟しておかないといけないのかな。パンダに罪はないので…

人が増えた場所もある一方で…中国外務省が日本への渡航自粛を呼び掛けてから、22日で9日目。
実際、どのくらい影響が出ているのか?各地の人気スポットを取材した。

まずは神奈川県。
人気アニメの“聖地”として、特に中国人観光客が殺到してきた鎌倉高校前の踏切。

22日、訪れてみると…人の多さにさほど変化はない。

東京・浅草もこれまで通り、人であふれていたが…取材を進めると、切実な悲鳴も聞こえてきた。
多くの中国人観光客が来るという茶道体験教室…
浅草 茶禅 竹田理絵氏:
(予約表)40名の団体様が4組入っておりましたが、こちらの中国の団体様、全てキャンセルになりました。

不安は地方の観光地にも…取材したのは、和歌山県白浜町。
2025年6月、中国に全頭を返還した“元・パンダの街”だが…美しい白砂の砂浜や、歴史深い温泉を求めて、外国人に人気の観光地でもある。

2024年に訪れた外国人のうち、約40パーセントを占めるのが中国人なのだが…

22日、白浜町を訪れてみると…
Suntide Cafe&Bar Shirarahama 店員:
外にもご飲食ができる席がございまして、中国の方がほぼ全部埋めることがあったんですけど、今は少なくなってきた

絶景の夕陽をのぞむ、白浜のシンボル円月島も、様子が一変したという。
白浜海底観光船・津多定代表:
普段、円月島の穴に夕日が入る写真を撮るのに、その道沿いにたくさんいらっしゃいますね。ほとんど、今日(22日)もそうですけどいないですね。

温泉宿を訪ねると、ここでもやはり…

紀州・白浜温泉むさし 女将 沼田弘美さん:
大きな団体をいただいておりましたので(中国客)69人の方だったんですが、そういう(渡航自粛の)ニュースが出た当日にですね、キャンセルになりました。30ルーム以上抑えていたかと思います。

中国から予約のキャンセルが相次ぎ、その数は150件に上るという。

聞けば、2025年はパンダの返還で客が減り…
夏は歴史的な猛暑で客が減り…
今度は中国からの観光客が減る事態に…
紀州・白浜温泉むさし 女将 沼田弘美さん:
同じ中国ですから、皆さん、パンダと一緒に帰ってきていただければなお、嬉しいんですけれども…

野村総合研究所・木内氏の試算によると、渡航自粛が1年続いた場合、日本の経済損失は、1兆7900億円に上る。イベントの中止や渡航自粛の呼びかけ、日本産水産物の事実上の輸入規制など、圧力を強める中国。
この先、どんな事態が待ち受け、中国とどう向き合っていけばいいのか?

そのヒントを求め、過去を振り返ると、こうした事態は日本だけではなかった。
2017年に中国が韓国に反発
2017年、韓国は北朝鮮の脅威に備え、迎撃ミサイルシステムTHAAD(サード)を配備。

すると中国政府は、そのレーダーの探知範囲に中国が入っていると猛反発。

国際政治学が専門のスティーブン・ナギ教授によると…
国際基督教大学スティーブン・ナギ教授:
中国から韓国への観光客が全部キャンセルして、また韓国からのKポップのイベントとか全部キャンセルしました。

それは、まさに今の日本と似た状態だが…当時、中国国内ではさらにエスカレート。
棚に並んだ韓国商品を壊す中国の女性たち:
こんなものいらない!出て行け!
女性たちが叩きつけていたのは、韓国製の商品。
中国各地で韓国製品の破壊行為や…不買運動などが起き、大きな混乱を呼んだ。
さらに…
2020年は中国がオーストラリアに反発
5年前、中国・武漢から世界へ新型コロナウイルスが拡大。その時…
国際基督教大学スティーブン・ナギ教授:
当時の(オーストラリア)首相スコット・モリソンさんが、コロナがどこで始まったか?国際検査を求めるスピーチをして、中国すごく怒った。
原因調査を求められた中国が猛反発。オーストラリアからの大麦や、ワインなどに高い関税を課した。

ナギ教授によれば、他にもカナダやフィリピン、リトアニアなどが同様の経済圧力を受けてきたが…各国は中国にどう対応したのか、そこには、ある共通点があった。

国際基督教大学スティーブン・ナギ教授:
まずはそういう中国に抵抗する。これは必ず必要。2番目は輸出のマーケットを広げます。

各国は経済圧力に折れず、中国に頼り切らない貿易戦略などを取ってきたという。
どう対応すればいいのか?
Mr.サンデーが話を聞いたのは…同志社大学法学部教授・山上信吾氏。
高市総理の非公式の勉強会で講師を務めた経験もある外交分野の“影のブレーン”だ。
そもそも、中国が反発しているあの発言…
高市首相:
武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうる。

これを語った狙いについて、山上氏は…
同志社大学法学部・山上信吾教授:
あの答弁ね、まさに抑止を効かせようという思惑から出た発言だと見てるんですよね。台湾がもし中国共産党のものになれば、東シナ海全体が中国のものになる。抑止力を効かせるためには、日米同盟が機能してるっていうことも大事だし、いざとなったら日本はしっかりと対応するんだよというメッセージを出さなきゃいけない。

中国側は発言の撤回を求めているが、高市総理は21日も…
高市首相:
いかなる事態が存立危機事態に該当するかということにつきましては、政府の立場は一貫しております。以上です。

一貫して“折れない”姿勢を強調した。一方で、経済圧力により、日本経済への打撃が懸念されているのも事実だが…

同志社大学法学部・山上信吾教授:
中国こそ今、日本経済を必要にしてるんですよ。中国経済がもう減速してスローダウンしている中で、今はもう威圧を加えて、我慢比べをしているという状況、この中国の威圧に立ち向かっていくかっていうのは、今、国際社会全体の課題なんですよ。中国の圧に負けてごめんなさいと、発言、撤回します、みたいなことやったら、日本、国際社会での笑い者になりますよ。今、深刻な瀬戸際にあると思っています。
(「Mr.サンデー」11月23日放送より)
