絶滅のおそれがある野生動植物の国際取引を規制するワシントン条約の締約国会議が24日、中央アジアのウズベキスタンで始まった。EU=ヨーロッパ連合などは、二ホンウナギを含むウナギ全種類の国際取引の規制強化を提案していて、投票国の3分の2以上が賛成すれば採択される。
全ウナギを取引規制の対象に
EUなどの案は、ウナギの全種類について、国際取引を厳重に規制しなければ絶滅のおそれがある「付属書2」に掲載するというものだ。対象となった場合、国際取引自体は可能だが、科学的な助言などに基づいて、輸出国当局が発行した許可書が必要になる。
付属書2は、すでにヨーロッパウナギを対象にしているが、二ホンウナギなども加え、全種類の取引を含めるというのがEU側の提案で、稚魚や成魚、かば焼きなどの加工品も含まれる。
二ホンウナギは、東アジアに広く分布していて、日本で養殖されているウナギはほとんどが二ホンウナギだ。一方、ヨーロッパウナギは、主に北大西洋やヨーロッパの河川に生息する。稚魚は二ホンウナギと比べて大きめで、身に脂がのっているのが特徴とされる。
ヨーロッパウナギは乱獲により、資源量が激減し、2009年に付属書2に掲載されたが、EU側は、取引規制がない二ホンウナギなどがヨーロッパウナギと偽って取引され、密輸が横行していると訴えるとともに、二ホンウナギの資源量も減っているとして、6月にウナギ全種類の取引に網をかけることを提案した。
“最後のロビー活動に全力を”
EU側の提案以降、FAO=国連食糧農業機関で科学者による審査が実施され、ワシントン条約事務局は10月、EUなどの案について「採択を勧告する」との最終評価を公表した。日本政府は、ウズベキスタンでの会議を最終的なロビー活動の場と位置づけ、採決の段階まで加盟国への説得に全力を傾ける方針だが、10月の最終評価の内容が巻き返しの材料のひとつになるとみている。
EU側の案について「採択を勧告する」とした最終評価では、判断のポイントを、二ホンウナギと、すでに付属書2の対象となっているヨーロッパウナギとの、外見をめぐる「類似性」に置いた。二つのウナギの識別が難しく、ヨーロッパウナギが二ホンウナギなどとして取引される「ロンダリング」が横行していると指摘、全種類を付属書2に含めれば、適切に取り締まることができるとした。二ホンウナギについても規制を強化しないと、ヨーロッパウナギの資源管理を実効性あるものにできないという見方だ。その一方で、二ホンウナギは「取引を厳重に規制しなければ絶滅のおそれのある種にはあてはまらない 」とした。日本側は「資源が回復傾向にある」と訴えてきた主張に沿った判断も示されたと受け止めるとともに、「DNA検査などで二つのウナギの識別は難しくない」として、「規制により稚魚のシラスウナギの取引価格が高騰し、かえって密漁や密貿易のリスクを高める」と訴えていくことにしている。
“日中問題”影を落とす可能性
こうしたなか、高市首相の台湾有事をめぐる国会答弁に中国側が反発している問題が影響する可能性が出てきている。
2024年の日本国内のウナギ供給量はおよそ6万940トンで、うち7割を生きたウナギやかば焼きなどとして、主に中国から輸入している。日本は、主要漁獲国である中国などと共闘して、養殖場内での稚魚の数量に上限を設けるなど国際的な資源管理を徹底している姿勢をアピールし、採択阻止にこぎつけたい考えだったが、会議の場での連携してのロビー活動は望み薄となったとの見方が強まっている。
EU側の案が採択されれば、2027年6月から規制が導入されることになる。国際取引には、輸出国当局が発行した許可書が必要になるが、業界関係者が指摘しているのが、中国側の発行手続きをめぐる懸念だ。許可書の発行手続きが複雑になり費用が高くなったりして、コストが輸入価格に上乗せされれば、ウナギ価格が上昇するおそれがある。
締約国会議では、委員会での1回目の採決が11月27日、本会議での採決は最終日の12月5日に予定されている。
ウナギの国際規制をめぐる動向は、一段と予断を許さない状況になってきた。
(フジテレビ解説副委員長 智田裕一)