岩手県内でクマの出没が相次ぎ、2025年度の出没件数は10月末時点で7608件にのぼり、10月単月では過去最多の3084件となっている。11月に入り岩泉町では住宅街の柿の木に親子連れとみられる2頭のクマが居座り、警察のライフル銃による駆除チームが出動したが駆除に至らなかった。一方、洋野町では県内初となる「緊急銃猟」によりクマが駆除された。県は「ガバメントハンター」の採用を決定し、2026年春からの捕獲を目指す方針だ。

クマ2頭が2日連続で同じ柿の木に

岩手県岩泉町では、11月18日午前6時半頃、住宅街にある柿の木の近くで親子連れとみられる2頭のクマが確認された。

クマ2頭が2日連続で同じ柿の木に居座るクマ
クマ2頭が2日連続で同じ柿の木に居座るクマ
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この場所では前日の17日にも同じ個体とみられるクマ2頭が約13時間にわたってとどまり続けていた。

警察のライフル銃駆除チーム初出動

近くには住宅が複数あり、「緊急銃猟」(自治体の判断で市街地でも発砲できる措置)が実施できない状況だったため、警察はライフル銃でクマの駆除を担うプロジェクトチームの8人を出動させた。

2日連続で同じ柿の木に出没、柿の実を食べるクマ
2日連続で同じ柿の木に出没、柿の実を食べるクマ

チームの出動は11月13日に改正国家公安委員会規則が施行され、警察がライフル銃でクマを駆除できるようになってからは、初めての出動だ。

2日連続で同じ柿の木に居座るクマ
2日連続で同じ柿の木に居座るクマ

チームは午後1時過ぎから対応にあたったが、クマが木の高い位置にいて銃で狙えず、さらに日没となったため、駆除に至らないまま午後4時半頃に対応を打ち切った。

柿の実はほとんどクマに食べつくされた
柿の実はほとんどクマに食べつくされた

2頭のクマはその後も同じ場所に留まっていたが、午後5時半頃に猟友会などによって追い払われたという。

県内初の「緊急銃猟」実施でクマを駆除

一方、岩手県洋野町では11月20日、県内初となる「緊急銃猟」によってクマが駆除された。

同日午前7時頃、洋野町種市の住宅敷地内にある栗の木に成獣とみられるクマ1頭が出没。
クマは栗の実を食べながら現場に居座り続け、警察が現場を封鎖して対応にあたった。

洋野町では県内初となる「緊急銃猟」によってクマが駆除 警察が現場を封鎖して対応
洋野町では県内初となる「緊急銃猟」によってクマが駆除 警察が現場を封鎖して対応

最初の目撃から約9時間後の午後4時頃、猟友会によってこのクマは駆除された。

現場は国道45号線に近い市街地であり、自治体の判断による「緊急銃猟」が岩手県内で初めて実施された事例となった。

盛岡市でもクマによる農作物被害

盛岡市でもクマの出没による被害が報告されている。
11月20日午前7時頃、盛岡市高松のリンゴ畑では、物置小屋に保管されていたリンゴが数ケース分食べられているのが確認された。

盛岡市のリンゴ園に設置されていたわな
盛岡市のリンゴ園に設置されていたわな

このリンゴ畑では11月15日と16日にもクマが目撃されており、警察はクマによる被害とみて調査を進めている。

「ガバメントハンター」採用へ

岩手県内の2025年度のクマの出没は10月末時点で7608件、このうち10月は3084件で1ヵ月あたりとしては過去最多となっている。

盛岡市市街地に出没したクマ
盛岡市市街地に出没したクマ

こうした状況を受け、岩手県は11月21日のクマ対策について協議する県の部局長会議で、狩猟免許を持つ自治体職員、いわゆる「ガバメントハンター」の採用を決定した。

猟友会の会員など狩猟免許を持つ人のほか、自衛隊・警察官のOBなどを想定し、県の職員として複数人を採用。冬眠明けのクマを対象に2026年春からの捕獲を目指すという。

盛岡市市街地の墓地に出没したクマ
盛岡市市街地の墓地に出没したクマ

達増知事は「県民の皆さんには市町村の出没情報に留意し、クマに遭遇しないよう努めていただくほか、放任果樹の処分などクマを引き寄せない対策をお願いします」と被害の未然防止を呼びかけた。

岩手県の達増知事(クマ対策を協議する県の部局長会議)
岩手県の達増知事(クマ対策を協議する県の部局長会議)

県はこのほか、クマ被害対策の基本方針を改定し、出没防止のための研修会の開催や市町村への「緊急銃猟」制度の理解促進などに取り組むとしている。

岩手めんこいテレビ
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