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(写真)ポーラ化成工業株式会社 テクニカルディベロップメントセンター 新剤型技術領域担当 リーダー 中谷 明弘 研究員



ポーラ・オルビスグループのビューティケア事業を支えるポーラ化成工業株式会社では、昨今の気候変動を踏まえ世界的にも注目される、画期的な日焼け止め製剤を開発。2025年9月のIFSCC※1世界大会で発表し大いに反響を呼んだ。今回は、その研究をリードした新進気鋭の研究員が、着眼から完成までの道のりや、この研究にかけた想いを語る。


※1 IFSCC:国際化粧品技術者会連盟


|日焼け止めが落ちる瞬間、肌の上では何が起きているのか

「理想の日焼け止めを開発したい」


日焼け止めは学生のころから使っていて、使用感や効果への不満をよく感じていました。研究員になってからも心地よい使用感と、汗や水に強い耐久性を両立できるのか試行錯誤を続けながら、「日焼け止めが落ちる瞬間に肌の上で何が起きているのかを見てみたい」という思いがずっとあったのです。そんな中、化粧品とは関係のない異分野の研究会で OCT※2技術に出会いました。これは光の性質を利用して表面から物の内部を断面画像で見る技術で、たとえばコーンスープの缶を外側から計測すると内側に残っている粒の断面まで鮮明に映し出せます。この装置で見た映像は衝撃で、肌に乗せた日焼け止めの膜も詳細に見ることができるのではないかと心が奮い立ち、早速、技術開発を行っている横浜国立大学を訪ねました。


※2 Optical Coherence Tomography(光干渉断層撮影)



|OCT技術で見えた、日焼け止めの「リアル」

OCT技術による観察の様子、日焼け止めを塗った肌の表面にOCTの光をあてることで、肌の断面画像を取得することができる


既存の装置のままでは厚さ1ミリにも満たない日焼け止めの膜を見るのは難しく、大学の研究室と共にさまざまな技術調整を繰り返して、ようやく可視化を実現※3しました。さらに特記すべきは人工汗による評価設定※4を開発したことです。それまでは大量に汗が流れる過酷な状況を評価の度に作る必要がありましたが、人工汗を膜の上に垂らすだけで膜の剥がれ具合などの評価が可能となります。実際にさまざまな膜を見てみると、今まで落ちないと思っていた日焼け止め剤でも、時間が経つとまるごと肌の上から剥がれていたり、汗によって溶け出したりと、日焼け止めが落ちていくリアルなしくみが確認できたのです。これらの分析結果をもとに、次に、汗に強く心地よい日焼け止めを実現する新素材の開発に取りかかりました。


※3 参考リリース:『汗で刻々と変わる日焼け止め膜の観察方法を確立』(2025年8月27日)

※4 参考リリース:同上 【補足資料 2】 人工汗を用いた、簡易かつ効率的な評価法の開発



|強く、しなやかで、肌に心地よい素材を求めて

伐採された竹は十分に乾燥の上、粉砕して竹チップ(左)に。その後製紙メーカーにてパルプ化し、竹セルロースファイバー水溶液(右)に加工される


広くアンテナを張ることで出会えた新素材

開発の過程で、膜を強くしながら界面活性剤に代わる新素材を異分野も含めて探していました。界面活性剤は油と水をなじませますが、水に溶けやすいため、汗や水で膜が流れやすくなるという欠点があります。そこで着目したのが植物のファイバー素材。ミカンやキノコなども検討しましたが、最終的に辿り着いたのが竹由来のセルロースファイバーでした。竹は乾燥するとしなやかで強い膜を作り、水に完全には溶けません。この素材を生み出した鹿児島県を訪ねて、地域の課題を感じるとともに未来素材※5を生産するパワーも感じたのです。当社の攪拌技術によって油を乳化できる、つまり界面活性剤に置き換えられるということもわかり、実践的な「ファイバー乳化」の技術を確立。「この素材なら、強くてしなやかで、社会にも貢献できる」──そう確信しました。


※5 参考リリース:『世界的に権威ある化粧品技術者学会にて発表 ついに実現 「汗に強く」×「心地よい」理想の日焼け止め技』(2025年9月12日)

【補足資料】竹由来のセルロースファイバーについて


立ちはだかった壁は、肌への密着性

竹由来セルロースファイバーから生成された膜は、みずみずしい塗り心地や、汗でふやけない撥水性など本当に素晴らしかったのですが、残念ながら肌への密着性が不十分でした。肌表面に強い膜が生成されても、汗が流れるとその膜ごと剥がれてしまったのです。この密着性の課題を解決する方法はなかなか見つからず、このままでは関係各所の期待を裏切るのではないかと不安になったことを覚えています。最終的には、密着成分として最適な種類の「脂肪酸」を最適な配合率で組み合わせると、高い密着性を実現できることを見出しました。このときは本当に嬉しかったですね。



|理想の日焼け止めが、私たちの暮らしを変えていく

フランス カンヌで開催された、第35回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)世界大会でポスター発表をする中谷研究員



「アメージング!」 世界大会で感嘆の声

今回IFSCC※1世界大会で発表した際に、海外の皆さんが口々に「アメージング!」と言ってくださり、大変誇らしかったです。日焼け止めの膜をリアルに分析できる技術や、「ファイバー乳化」によって実現した理想の膜生成はもちろんですが、その場でサンプルを試していただくとそのみずみずしさに声を上げて驚かれていました。いずれは製品化して、この日焼け止め剤の効果の高さと心地よさに「なんだこれは!」と驚いていただきたいと思っています。昨今の過酷な気候の中、日焼け止めの必要性を認識しつつも、ベタベタするから塗りたくないと使用をためらっていた方や、お子さまや男性にも、きっと日焼け止めを毎日の習慣にしていただけるはずです。



化粧品の可能性を最大限に広げることを使命に

今回の研究の今後の目標としては、植物ファイバーそれぞれの特性を活かし、ファイバーで乳化するという独自技術を、スキンケアをはじめさまざまな製品に応用していきたいと思っています。私たちが研究する化粧品には無限の可能性があり、生活に豊かな彩りをもたらします。だからこそ、化粧品の研究者として、私は化粧品の可能性を最大限に引き出し、人々の暮らしや文化、さらには世界をもっと良くしていきたいと常に思っています。「この時代に生きていて良かった」と感じていただける価値を、自分の会社やチームから発信したいと強く願っています。




株式会社ポーラ・オルビスホールディングス

https://www.po-holdings.co.jp/


関連ページ

https://www.po-holdings.co.jp/rd/story_0001/

https://www.po-holdings.co.jp/rd/index.html




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