岩手県警の警察官で構成される県警音楽隊が、2025年に結成60周年を迎え、11月8日に盛岡市で記念コンサートを開催した。1965年の発足以来、約3500回の演奏を行い、延べ600万人に音楽を届けてきた。日頃の警察活動と並行して練習を重ねてきた隊員たちは、これまで支えてくれた県民への感謝の気持ちを込めて演奏を披露した。
本業を抱えながら練習に励む隊員たち
岩手県警音楽隊は、警察活動のPRを目的として1965年に発足した。以来、各市町村や学校でのコンサートなど約3500回の演奏を行い、延べ600万人に音楽を届けてきた。
盛岡市内に勤務する警察官で構成される県警音楽隊は22人。全員が通常業務を持ちながら活動している。60周年のコンサートに向けて9月から平日はほぼ毎日練習を重ねてきた。
本番3週間前のこの日は、行進しながら演奏する「マーチング」の練習に取り組んだ。
動きと演奏の息を合わせるため、何度も繰り返していた。
被災地での経験が活動の原動力に
指揮を執るのは、音楽隊に入って20年のキャリアを持つ佐藤貴紀楽長(39)だ。普段は県警本部の県民課で情報公開に関わる業務を担当している。
全員そろって練習できる時間が限られているため、佐藤楽長の指導にも熱が入る。
「各隊員に声がけをして、全員が同じ方向を向いて、県民に良い音楽を届けられるように目指してやっている」と佐藤楽長は語る。
佐藤楽長にとって特に印象深いのは、東日本大震災後の被災地での演奏活動だ。
佐藤楽長は「実際に被災地で演奏して、現地の皆さんから『ありがとう』『元気をもらえました』といった温かい言葉をもらい、逆に励まされた」と振り返る。
この経験を通じて、県民に音楽の楽しさを伝える活動に強いやりがいを感じるようになったという。
1200人を魅了した記念コンサート
60周年記念コンサート当日の11月8日、盛岡市民文化ホールには約1200人の観客が詰めかけた。
開演直前、舞台袖では佐藤楽長が緊張した表情を浮かべ、「今まで音楽隊を支えてきてくれたのは、県民の皆さんだと思っている。60周年を迎えるにあたり、県民の皆さんに感謝の気持ちを込めて演奏できれば…」と語った。
今回は特別に青森県警と秋田県警の音楽隊もゲスト参加し、総勢70人による迫力のある演奏が披露された。
マーチングでは、映画「インディ・ジョーンズ」のテーマ曲「レイダース・マーチ」など6曲をメドレーで演奏。佐藤楽長も、力強い指揮で演奏をリードした。
コンサート終盤にはディズニー映画「アナと雪の女王」の楽曲メドレーも披露され、岩手県警のカラーガードも舞台を盛り上げた。
観客になじみの深い曲を中心に、合計13曲を届けた県警音楽隊。
観客からは「演奏を聞いて、楽しい気分になった」「明るい感じで、勢いがあって良かった」などの声が聞かれた。
未来へつなぐ感謝の音色
無事にコンサートを終え、佐藤楽長は「2カ月にわたる訓練の成果が十分に発揮できた。笑顔で元気いっぱい演奏してもらい、隊員には感謝の気持ちでいっぱい」と満足げに語り、表情を緩ませた。
佐藤楽長は「県民の皆さんの期待や信頼を、70年80年と引き続き愛される音楽隊であれるよう、これからも頑張っていかなくてはと思う」と新たな決意を語った。
60周年の節目を迎えた岩手県警音楽隊は、これからも県民に寄り添い、音楽を通じて安心と笑顔を届けていく。
