今年は秋が短く、急激な気温低下に体が慣れていない。特に入浴中の事故には十分な注意が必要だ。高齢者入浴アドバイザー協会の鈴木知明代表理事は「過去3年間の平均都道府県別浴槽内死亡率10万人当たり富山県が何とワースト1位」と警鐘を鳴らしている。

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富山県の深刻な入浴事故の実態

富山県では昨年、入浴中に亡くなった人の数が192人に上り、14年連続で100人を超えている。10万人当たりの死亡率は全国で最も高い数値となっている。これらの事故の多くは、暖かい部屋から寒い脱衣所や浴室へ移動し、さらに熱い湯船に入ることで血圧が急変動し、ショック状態になる「ヒートショック」が原因だ。このヒートショックが転倒や溺死につながるケースが多いという。

鈴木代表理事は「従来の対策だけで(ヒートショックは)減らない、なので進化型と名づけて進化型のヒートショック対策を」と提案している。特に60歳以上が注意すべき「進化型ヒートショック対策」とはどのようなものだろうか。

進化型ヒートショック対策の3つのポイント

1.ぬる湯での長湯は禁物

「ぬる湯だから安心ではない。肩まで5分経ったら1度出てください」と鈴木代表理事は強調する。40度以下のぬるめのお湯でも、20分以上浸かると9割以上の人が眠気を感じるという。浴槽で眠ってしまうと溺れる危険性があるため、お風呂に浸かる時間は5分を目安に。一度出て体や頭を洗ってから再び5分入浴し、これを3〜4回繰り返す方法が推奨されている。

2.動きはスローモーションで

お風呂から出るときの動作も重要だ。「急にお風呂から立ち上がるとめまいや立ちくらみが起こる。1回休んで立ち上がって今度は下を向きながらなるべく急がないで(お風呂から)出る。これが重要」と鈴木代表理事は説明する。手すりを持ちながらゆっくりと立ち上がり、一旦浴槽の淵で休んでから出るようにするべきという。

3.段階的な入浴を心がける

「1〜2分座ってお湯を膝や腰あたりで慣らす。1〜2分経ったらゆっくり肩まで入る」と段階的な入浴方法を鈴木代表理事は提案する。半身浴から始めて全身浴へと移行し、5分経ったら一度出て、体を洗う間に好みの温度に追い炊きをするとよい。

入浴は健康状態のチェックポイント

「入浴は一連の色んな動作を知らず知らずのうちにやっているのでフレイル(健康と要介護の間)チェックが可能」と鈴木代表理事。服を脱ぐ、立ち上がる、しゃがむなど、毎日のバスタイムで加齢に伴う体の変化に気づくことも大切だという。

従来の対策も忘れずに

上記の「進化型対策」に加えて、脱衣所や浴室を温める、高齢者は一番最後に入らないなどの従来からの対策も引き続き重要だ。

富山県は18日からぐっと冷え込み、山間部では雪の予報も出ている。急な寒さが予想される今年の冬、安全な入浴を心がけ、家族で声をかけあって対策を講じることで、心も体も温まる入浴時間を過ごしたい。

富山テレビ
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