有明海では11月3日にノリの種付けが解禁されました。10月以降、海水温が下がらず、過去最も遅い種付けとなりました。種付けの時期は年々遅くなる傾向で、温暖化の影響の一つではないかと考えられます。そこで今回の「数字で見る佐賀」は佐賀県の気候変動について考えます。

【鶴丸アナウンサー】
まずは、そのノリの種付け解禁日の推移を見ていきます。
1995年以降の解禁日を見ると、95年からの5年間は10月の6日、1日、2日、6日、9日といずれも10月上旬。その後は遅れる傾向で最近の5年間を見ると、21日、26日、27日、17日。
そしてついに今年は初めて11月にずれ込みました。

種付け解禁日は作業をしやすい大潮であることも考慮されますが、適した海水温まで下がっていることが条件です。
実際、県有明水産振興センターが観測している有明海の10月の海面温度は年ごとの変動はありますが、1980年からの45年間でおおむね1.2度上昇しています。特に、今年と去年は突出して高かったそうです。

【野上アナウンサー】
有明海の海水温が上がっているということですが、佐賀県の気温も上がっているのでしょうか?

【鶴丸アナウンサー】
こちらをご覧ください。
佐賀市の年平均気温の推移を示したものです。1890年から観測データがありますが、100年あたり1.7度上昇しています。

【野上アナウンサー】
年平均気温で1.7度というのは非常に大きいのではないかと思いますが、佐賀県の気温はやはり今後も上がっていくのでしょうか。

【鶴丸アナウンサー】
地球の温暖化は人間活動による温室効果ガスの増加が原因とされています。今後の佐賀県の気温上昇の気象庁の予測について気象台に聞きました。

【佐賀地方気象台 高平憲一気象情報官】
「2024年の温室効果ガス濃度の世界平均濃度は観測史上最高を更新しています。このため、今後も気温の上昇は続くと見込まれます。今後の予測としては、パリ協定の『世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2.0℃より十分低く保つ』という目標が達成された場合、21世紀末の佐賀県の年平均気温は、20世紀末と比べて1.3℃上昇すると予測されています。そして温室効果ガス排出に対して追加的な対策を取らなかった場合は4.1℃上昇すると予測されています」

【鶴丸アナウンサー】
説明にありましたように国際社会で決めた温室効果ガス削減の数値目標を守れた場合「2度上昇シナリオ」と呼ばれますが、今世紀末には20世紀末と比べて約1.3度、そして有効な対策を取らなければ「4度上昇シナリオ」の場合は、約4.1度上昇すると予測されています。
佐賀の年平均気温が100年で4度も上がるとどんなことになるのかと恐ろしくなりますよね。

【野上アナウンサー】
すでに「災害級の暑さ」という言葉が定着していますが、さらに、熱中症対策を強化していくことが必要ですね。それから、農業や漁業にもますます影響が出てきそうですね。

【鶴丸アナウンサー】
はい。温暖化に対応するため県内の農林水産業でも栽培の工夫や、品種改良に取り組んでいます。
例えば今回紹介しているノリは、有明海を含め、全国のノリ養殖のほとんどが「スサビノリ」という種類ですが、県有明水産振興センターではこれとは違う種類のものなどを利用した高水温に強い株の研究・開発を進めているということです。
すぐに今のノリから切り替えるということではなく、10年後、20年後に備えてということです。

【野上アナウンサー】
気温上昇以外にも近年はゲリラ雷雨などが激しさを増し大雨災害も増えているような印象ですが、雨の降り方は実際に変わっているのでしょうか?

【鶴丸アナウンサー】
このグラフをご覧ください。
九州北部地方の1時間に50ミリ以上の雨が降った回数の推移を示したものです。赤い線で示しているように増加傾向が現れています。1時間降水量50ミリ以上というのは「傘が役に立たないような雨」で、これが増えているのは温暖化が原因と考えられています。

【佐賀地方気象台 高平憲一気象情報官】
「雨のもとは水蒸気です。気温が高いほど大気中に含むことができる水蒸気量も多くなります。温暖化により気温が上昇し、大気中に含まれる水蒸気量が多くなると、一度にもたらす降水量が多くなって極端な雨が増加すると考えられています。今年8月10日から11日の熊本県の大雨について、地球温暖化の影響を評価したところ、地球温暖化が無かったと仮定した場合に比べて総雨量が約25%増加していたことが分かりました」

【鶴丸アナウンサー】
今後の予測ですが、今世紀末の九州北部地方の1時間降水量50ミリ以上の年間発生回数は気温でも説明した「2度上昇シナリオ」で約1.6倍、「4度上昇シナリオ」では約2.8倍に増加すると見られます。
そして、今後の台風の傾向についても聞いています。

【佐賀地方気象台 高平憲一気象情報官】
「地球温暖化に伴う水蒸気量の増加や海水温の上昇が影響すると考えられる。その結果、台風強度は強まり、台風に伴う降水量も増加すると予測しています。台風の発生数については、減少するか分からないと予測されていますが、これについては現在でも議論が続いています」

【野上アナウンサー】
「気温が上がる」「大雨が増える」「台風が強くなる」と聞くと子供を持つ親としても今後が心配になってきますね。

【鶴丸アナウンサー】
一人一人が気候変動を自分のこととして理解することが大切だと思いますし、今後、大雨や台風などの自然災害が厳しさを増していくということを改めて認識して備えなければなりません。

佐賀県の気候変動についてお伝えしました。
気象庁・気象台のホームページには今回紹介したような気候変動に関連する情報が公開されています。

サガテレビ
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