台湾有事を巡る高市総理の国会答弁に反発を強める中国。
先週金曜には、中国外務省が中国国民に日本への渡航を避けるよう呼び掛けました。
この状況に“落としどころ”はあるのか。関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」で元外交官でジャーナリストの風間晋さんは「“落としどころ”は『日中共同声明の精神』に戻ること」と発言。
「台湾は『中国の不可分の一部である』という立場を日本は十分理解し、尊重する」としている内容を高市総理が踏まえて対応することが“落としどころ”になると解説しました。
■台湾有事「存立危機事態になり得る」巡り中国の反発続く
今月7日、高市総理が国会で、台湾有事について 「戦艦を使って武力行使を伴うのであれば、存立危機事態になり得る」と答弁しました。
翌日、中国の薛剣(セツ・ケン)駐大阪総領事は SNSにて「汚い首は斬ってやるしかない」と投稿しました。 (※現在は削除)
先週金曜日、中国外務省は「日本に滞在する中国人の安全に重大なリスクがある」として、中国人に対し、日本への渡航の自粛を呼びかけています。
■「渡航自粛呼びかけは『まだまだ切れるカードはある』という中国側メッセージ」
まずこの状況について風間さんは「渡航自粛の呼びかけは、『まだまだ切れるカードはある』という中国側のメッセージ」と説明しました。
【元外交官・ジャーナリスト 風間晋さん】「とりあえず中国としては、これを機会に、高市総理に日中関係の基本っていうのを1から勉強し直してもらいたいということではないかと受け止めています。
『渡航の自粛要請呼びかけ』というのは、基本的には『もし状況が悪くなったら、中国側にはまだまだ切れるカードがいくらでもありますよ。次から次へとありますよ』っていうのを意識させるために、まずここから出てきたということだと思います」
【青木源太キャスター】「日本の外務省のアジア大洋州局長が中国に行きましたけれどもこれはどういう意図なのでしょうか?」
【風間さん】「まさにこの事態をどう収束・収拾できるのか、落としどころはどこなのか、それに関して中国側がどんな考えを持っているのかを探りに行っているわけです。
(局長が出向くということは)全然異例じゃないんですけれども、やっぱり今回みたいなときは、日本が出向くっていうところが、やっぱり今の問題の本質的な側面を示しているわけです」
■“伏線”は先月末の「日中首脳会談」翌日の高市総理・台湾代表の会談から…
またFNN上海支局長だった関西テレビ・江口茂解説デスクは、高市総理の国会答弁よりも前、先月末のAPEC首脳会議の際に行われた日中首脳会談の頃から“伏線”があったと指摘しました。
【江口解説デスク】「先月末に日中首脳会談があった時には、中国は高市さんというのは対中強硬派だという警戒もあったんだけれども、割と話し合いが上手くいった。
でもそのすぐ翌日に高市さんは台湾の代表と会って、それをSNSにアップしています。
これを中国側はかなり良くないと受け止めて、今までも台湾の代表と総理大臣が会うことはありましたが、こういう発信をするのは異例です。
ここでまずボタンのかけ違いが始まって、そのあと日本に帰って、あの国会答弁なので、これは習近平国家主席は面子をつぶされたということで、だんだんとヒートアップしている状況なんですよね」
■中国外務省報道官の『日中共同声明を守れ』がヒント?
【青木キャスター】「落としどころはあるのでしょうか?」
【風間さん】「落としどころは実は1つのヒントになると僕が思ったのが、中国外務省の報道官が自分のX(SNS)に『日中共同声明を守れ』っていうメッセージを載せたんです。
中国の官僚が自分の判断で、Xで発信するわけがないので、そこはやっぱり外務省なり、中国政府なりの方針に基づいて、メッセージを出してるんですよ。
日中共同声明、1972年の国交正常化のときの声明の眼目は2つあって、『中国の唯一の合法政府は中華人民共和国政府である。つまり台湾じゃない』というのが1番目で、これは日本は承諾しています。
2番目は「台湾は『中国の不可分の一部である』という立場を中国が重ね重ね表明して、日本は『それを理解して、尊重します』という言い方をしているんです。
合意というのではなく、『中国がそういうお立場にいることはよくわかりました』っていう内容なんです。
でもそれを向こうの外務省の報道官が言ってるのは、総理が変わったからといって、政権が変わったからといって、約束は約束でちゃんと守ってくれっていう部分なんです。
逆に言えば、『高市総理がそこをちょっと踏み出しちゃってるんじゃないの』という懸念がある、あるいは懸念を持ったふりをして、『ここで一丁、念を押してやれ』ということで、今の状況になっている」
■「日中共同声明『それはわかっています』という言い方をするのは1つのやり方」
【青木キャスター】「ということは、高市総理側が表明を改めてしたほうがいいということですか?」
【風間さん】「それが1つの落としどころになりうるって僕は思っています。高市さんは今更謝罪もできないし、発言撤回もできない。じゃあ何か違うやり方でこの状況を収めるにはどうしたらいいかっていうのを考えた場合に、ある意味、日中共同声明の精神に戻る。そこを『ちゃんとやります。それはわかっています』という言い方をするのは1つのやり方かな、と。
【青木キャスター】「日本の外務省の局長が中国に行ってるじゃないですか。帰って外務大臣、そして高市総理に報告が上がって、何らかのアクションが日本側からあるかもと?」
【風間さん】「“一往復”で果たして、そこまで進めるかどうかってのいうは大いに疑問ですけど、何回か行き来があって、『それではこういう形で落としませんか』というところまで運べばいいなっていう話」
【江口解説デスク】「今月G20があって、そこで習近平国家主席は出てこないんですけれども、(ナンバー2の)李強首相が出てくるので、高市さんと中国の首相の間で何かやりとりがあるかっていうことは今注目されています」
(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」2025年11月17日放送)