政府は、近く策定する経済対策に盛り込む冬の電気・ガス料金補助について、2025年夏の実施分以上に引き上げて実施する方向だ。

1~3月の使用分を補助し、暖房器具を使う頻度が増える1~2月分で重点的支援を行う。

「これまでより金額を上げて」

高市首相は、14日の参院予算委員会で、「寒さの厳しい冬の間、深堀りした支援を行う」として、「これまでよりちょっと金額を上げて支援する」と表明した。

政府による電気・ガス料金の補助はこれまでも行われている。

2025年には石破政権のもと、1~3月分と7~9月分で実施された。

1~2月使用分では、電気代は1kWhあたり2.5円(低圧の場合)、ガス代は1㎣あたり10円が、3月分はそれぞれ1. 3円と5円が補助された。

7月分と9月分では、電気代で2円、ガス代で8円が、8月分では2. 4円と10円が補助されている。

電気を月に400kWh、ガスを30㎣使うことを想定した標準的な家庭では、7月~9月の3カ月間で3300円程度の負担減となった。

“3カ月で6000円程度”軸に

首相が深堀り支援を表明する中、この冬の補助金では、3カ月間で6000円程度、月平均2000円程度負担が減るようにする案を軸に調整が進められる方向だ。

夏の実施分からは倍増となる。

1~3月に使う分のうち、暖房器具の使用で負担が増える1~2月分を重点的に支援する。

仮に、2025年7~9月使用分について実施された補助金を2倍に拡大するとした場合、どう試算されるだろうか。

標準家庭では、3カ月で6600円余りの負担減となるが、実際の額は、居住スタイルや世帯人数などによってまちまちだ。

東京都が公表した2024年の調査では、集合住宅に住む2人世帯の場合、1月の使用量は電気が301kWh、ガスは38.2㎣だ。

1~3月の使用量が変わらないとすると、負担減は約5800円となる。集合住宅の3人世帯では約7500円、戸建て住宅に住む2人世帯は約8200円の負担減という結果になった。

求められる政策効果の検証

これまでも実施されてきた電気・ガス料金の補助だが、エネルギー関連の支出がかさむ中、家計に大きな助けになるとの声が聞かれる一方、問題点も指摘されている。

高所得者にも恩恵が及ぶことから、物価高による実質所得の目減りに対しては、電気・ガス料金など特定の財を補助するよりも、低所得層向け支援を優先すべきだとの指摘が出ている。

会計検査院が提出した2023年度の決算検査報告では、事業の成果実績が把握できていないとして改善を求めている。

電気料金をめぐっては、太陽光や風力発電など再生可能エネルギー普及のため上乗せされている「再エネ賦課金」の上昇が家計を圧迫しているとして、一時的な補助よりも、賦課金制度の見直しを求める声も相次いでいる。

2025年度の再エネ賦課金は、1kWhあたり3.98円なので、4円の補助が行われたとしても、この賦課金を相殺するに過ぎないという計算にもなる。

電気・ガス料金を抑える補助金は、ガソリン補助金とともに、政府主導の「官製値下げ」と位置づけられ、家計の負担軽減に即効性があるとされる一方で、市場の価格形成をゆがめかねない面がある。
政策効果に十分な検証が求められる。

(フジテレビ解説副委員長 智田裕一)

智田裕一
智田裕一

金融、予算、税制…さまざまな経済事象や政策について、できるだけコンパクトに
わかりやすく伝えられればと思っています。
暮らしにかかわる「お金」の動きや制度について、FPの視点を生かした「読み解き」が
できればと考えています。
フジテレビ解説副委員長。1966年千葉県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学新聞研究所教育部修了
フジテレビ入社後、アナウンス室、NY支局勤務、経済部にて兜・日銀キャップ、財務省・内閣府担当、財務金融キャップ、経済部長を経て、現職。
CFP(サーティファイド ファイナンシャル プランナー)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、農水省政策評価第三者委員会委員