歴史的な株高となった10月相場が終わった。日経平均株価は4万円台から5万円台へと駆け抜ける展開となったが、11月に入り、国内上場企業の決算が本格化する。

3日連続で最高値更新…10月月間の上げ幅は最大

10月31日の日経平均株価の終値は5万2411円となり、初めて5万2000円の大台にのせて、3日連続で史上最高値を更新した。

アメリカでアップルやアマゾン・ドット・コムなどの好決算を受け株価指数先物が上昇するなか、東京株式市場でも半導体関連銘柄などの買いに強気姿勢が広がった。

10月30日の日銀金融政策決定会合後に進んだ円安も、輸出関連株の追い風となった。

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日銀は6会合連続で政策金利を据え置いた。植田総裁は会見で、利上げ判断をめぐり「来年の春季労使交渉の初動のモメンタム(勢い)について情報を集めたい」と述べ、市場関係者の間では「日銀は追加利上げに慎重で、12月の利上げの可能性は遠のいた」との見方が広がった。

アメリカでは、FRB=連邦準備制度理事会のパウエル議長が10月29日の会見で、12月の追加利下げについて「既定路線でない」との姿勢を示していて、日米金利差は開いたままになるとの見方から円が売られやすい地合いが強まった。

外国為替市場の円相場は一時1ドル=154円台半ばと、約8カ月半ぶりの安値水準をつけた。

10月の日経平均株価は、7400円を超えて上昇し、月間の上げ幅で過去最大となった。

10月21日に発足した高市内閣
10月21日に発足した高市内閣

10月相場を牽引したのは、高市政権への政策期待だ。「高市トレード」が強まるなか、4日の高市氏の自民党総裁選勝利直前からの19営業日での上昇率は約15%となった。

AI関連株の「バンドワゴン効果」

株高のさらなる立役者は、AI関連需要の広がりだ。

アメリカでは巨大テック企業の2025年7~9月期決算が出そろい、AI向けの需要が急伸するなか、クラウド事業の基盤となるデータセンターなどへの巨額の投資を競い合う構図が鮮明になっている。

エヌビディアの時価総額は10月29日に一時5兆ドルを突破
エヌビディアの時価総額は10月29日に一時5兆ドルを突破

こうした投資が高水準で続くとの期待から、AI半導体で高いシェアを持つエヌビディアの時価総額は10月29日に一時、世界の企業で初めて5兆ドルを突破した。

アメリカ市場に共振する形で、日本でも関連銘柄に買いが集まり、高性能の半導体のほか、データセンター投資の拡大で、電力インフラなどの需要の広がりも意識されている。

こうしたなか、指摘されているのがAI関連株の「バンドワゴン効果」だ。「バンドワゴン」とは、パレードやマーチング行列の先頭を進む”楽隊車”のことで、楽器を賑やかに鳴らし好材料を示すAI銘柄の買いに乗り遅れまいとして、投資家が次々と追随するような状態になっていることを指す。

過熱への警戒感も

今週は、国内上場企業の決算発表がヤマ場を迎える。AI関連企業の勢いに関心が集まる一方で、自動車や鉄鋼業界などで「トランプ関税」の影響がどの程度広がるかも注視される。

10月31日の日経平均株価は、長期的な株価トレンドを示す200日移動平均線を30%上回り、テクニカル面では、買われ過ぎが意識され、相場過熱への警戒が強まる局面となっている。

先週、日米首脳会談や日米の金融政策決定会合など大きなイベントを通過した日経平均株価は、5万円台を値固めし、上昇への持続力を見せられるかが焦点になる。
(フジテレビ解説副委員長 智田裕一)

智田裕一
智田裕一

金融、予算、税制…さまざまな経済事象や政策について、できるだけコンパクトに
わかりやすく伝えられればと思っています。
暮らしにかかわる「お金」の動きや制度について、FPの視点を生かした「読み解き」が
できればと考えています。
フジテレビ解説副委員長。1966年千葉県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学新聞研究所教育部修了
フジテレビ入社後、アナウンス室、NY支局勤務、経済部にて兜・日銀キャップ、財務省・内閣府担当、財務金融キャップ、経済部長を経て、現職。
CFP(サーティファイド ファイナンシャル プランナー)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、農水省政策評価第三者委員会委員