今知りたい、旬の情報を届ける「サキドリ」。今回お伝えするのは広島が生産量日本一の「カキ」です!
例年に比べ20日ほど遅いシーズン到来となりました。海域によっては「死んだ個体が増えた」とも言われる今年のカキ。広島が誇る冬の味覚の異変を「サキドリ」します。
(10月23日放送分を加筆修正しました)
【宮司】
「肉太のうましをカキを…」
先週、広島市の米田海産ではシーズン到来を前に安全とカキの成長を願う神事がありました。
「お!ここ見たことあります」
先週、かき打ち場はガランとしていました。
例年なら10月1日から出荷を始めていたはずですが…
【野川諭生キャスター】
「本来であればこの時期はフル稼働をしているというのが本来の姿ですよね」
【米田海産・米田礼一郎 社長】
「おととしまではこの時期は始まっていたんですけれども、去年から解禁を遅らせようということでやっていますので」
生産者たちが特に懸念しているのが夏場の猛暑です。
複合的な要因がありますが県内の生産者たちは出荷開始のタイミングを2年連続で20日ほど遅らせました。
【野川諭生キャスター】
「夏場の暑さが続いていると生育のところに影響が出ると」
【米田海産・米田礼一郎 社長】
「そういうことですねカキがいつまでも夏だと思っているので身太りをするスイッチが入るのがずれ込むので。決してずれ込んだのはカキが悪いということではなくてずれ込んだ分いいものが出せると前向きに思ってもらえたらと思います」
長年携わってきた生産者も実際に水揚げしてみないと殻の中身は分かりません。
米田海産も手探りの中初日を迎えましたが…
【五十川記者】
「いままさにとれたカキなんですがプリプリです。大きいです」
大きさにばらつきは見られましたが、成長を待った分大きな身もありました。
かき打ち場も、ようやく活気を取り戻しました。
【米田海産・米田礼一郎 社長】
「やっと始まってうれしい気持ちもある反面、いまからよくなってくれるといいなというまだ分からないことなので今からですね。おいしいと言ってもらえるのが一番うれしいですね。そう思ってもらえるようにみんなで頑張ります」
<スタジオ>
VTRで紹介した猛暑の影響ですが広島湾の水温は今年8月、30℃を超えた日もありました。
10月の最新データでは24.6℃。
秋が深まっても、まだ平年より1.8℃高い状況が続いています。
その「暑さ」が県内の生産量に影響を与えています。
県内各地の生産者と取引をしている広島市内の水産加工会社です。
シーズンが始まって状況が見えてきました。
立派に育ったカキも入ってきますが、やはり全体の入荷量は落ち込んでいるといいます。
【カネウ・村田泰隆社長】
「今年の場合は全国的にこういう傾向で瀬戸内海が窮地に立たされているという状況ですね。適正価格でというビジネスになると思うんですね」
<スタジオ>
【加藤雅也キャスター】
「生育状況」「価格」が心配されますけれども野川さん、やはり味が気になります!
その質問、待っていました!旬の味を「サキドリ」してきましたよ!
【野川諭生キャスター】
「いい香り!!!たまりませんね」
毎年、シーズンに合わせ広島のカキを出している鉄板焼きの店「鉄焼酒家風神」です。シンプル・イズ・ベスト!今シーズンのカキを使った「バター焼き」をいただきました。
【野川諭生キャスター】
「すごい!持った感じずっしりとした感じいただきます。最高においしいです。とってもおいしいですよ。そんな話を聞いたのがどこかに飛んでいってしまうくらいの…濃厚な旨味ですし身もプリプリしていて例年と私は何も変わりは感じないですよ」
旨味も大きさも寒~い冬がピークですがシーズンはじめでも大満足でした。
【鉄焼酒場風神・田村陸 店長】
「例年とさほど軽くなっていることもないですし、焼いたときにも全然変わらなかったので結構おいしいものができているとは思います」
【野川諭生キャスター】
「これからお店でも出していくことになると思うんですが、価格的な面はいかがですか!」
【鉄焼酒場風神田村陸・店長】
「前年よりも少し値段が上がっていたりするので同じ値段を据え置いてもちょっと数が減るかもしれないんですけど…」
<スタジオ>
スタジオに用意しました。
召し上がってみてください!
(試食)
水揚げされたカキの1つ1つは美味しいと分かってもらえたと思います。
ただ、今シーズン県内はさらなる異変が起きています。
最後に、苦悩しながら海に向かうある生産者の思いに迫りました。
これは県内の海です。
水揚げされたばかりの大量のカキが加工されることなく堆積場に捨てられていました。水揚げされたときすでに死んでいました。
いま、県内の複数の生産者に異常事態が起きています。
【森尾水産・森尾龍也 代表】
「10月入ってからの段階で8割以上死んでいたのでいまもまた進行して9割超えになっているんじゃないかな。いつ死に始めたかはあれじゃけど見た感じで言えば9月後半くらいから死に始めた感じ」
突如、異変が起きた地区の一つ東広島市安芸津町。
森尾水産では水揚げしたカキのおよそ9割が口を開けて死んでいました。
もう育つことはありません。
【森尾水産・森尾龍也 代表】
「もうほとんど生きているカキが3つ4つくらいしか全部口を開けている。死んでいなかったら大豊作なんじゃけどね」
海水温だけとは言えない明確な原因が突き止められていない状況で、森尾水産は来シーズン用の若いカキにまで影響が広がりました。
どうにか立て直そうと、今シーズンの水揚げをしながら来シーズンの仕込みもやり直しています。
【森尾水産・森尾龍也 代表】
「まともに人件費すらまかなえない。来年度も同じような状況だと思うんで何年続くかによっては少々の補填では近い将来、4~5年先にはやめざるを得なくなる」
<スタジオ>
これが死んだカキなんですが、こういう風に水揚げされたときから中身が入っていなんですね。深刻ですよね。
県の水産海洋技術センターは「これまで経験がないことで情報を集めている。原因は分からない。対応を検討中」としています。
また、広島大学名誉教授で海の生態系や環境に詳しい山本民次さんは「カキにとって水温が高くなったことに加えエサ不足に陥った可能性もある。水温が高い海水面を避けようと下のほうにカキを深吊りすると今度は貧酸素になって死ぬ」と指摘します。
渡地たちが愛するカキ文化を守っていくためにも抜本的な対策が求められていると言えそうです。
ここまで「サキドリ」でした。
「高水温」と「高塩分」が影響した可能性
(11月13日追記)
今シーズン、県内各地で養殖のカキの死滅が相次いでいる問題で、県は23日、その原因について海の「高水温」と「高塩分」が影響した可能性を明らかにしました。
県の水産海洋技術センターで過去の文献などを基に調べたところ、夏以降、高水温と高塩分の状況が長く続きカキが弱ったとみられる見解を示しました。
県内の海水温が平年より高く本来よりも塩分濃度が高かったことでカキの実に負荷がかかり、夏から秋にかけてカキが大量に死んでしまう原因につながったのではということです。