長野県松本市で60年以上続く「大衆食堂」。看板メニューはカレーです。提供スピードの早さ、変わらない味、先代の父親から引き継いだ2代目夫婦が伝統を守り続けています。
松本市蟻ケ崎にある昭和レトロな店構えの大衆食堂「キッチンモーリ」。
看板メニューは「カツカレー」。
洋食中心にさまざまなメニューがありますが、多くの客が「カレー」を注文します。
市内から:
「辛かったり、スパイスの香りが強いわけではなく、誰でも子どもでも食べられるかなと思って」
店を営むのは森健悟さん(76)と妻の育世さん(72)。夫婦で67年続く食堂を守り続けています。
キッチンモーリ 2代目店主・森健悟さん:
「あっという間でもあったかもしれないけど、やみくもにやっていたのでそれだけ年代を経た」
「キッチンモーリ」は1958年に先代の父・森英司さんが松本市大手に1号店をオープン。
当時、周辺にはバス停や映画館があり、待ち合わせに利用する客が多くいました。
そこで、先代の英司さんは「1分ナンテ待たせるもんですか!」と書かれた看板を設置。
すぐに提供できるカレーを看板メニューにすると人気となりました。
キッチンモーリ 2代目店主・森健悟さん:
「忙しい人にはすぐ召し上がっていただける。それをもってアピールしようと」
人気店となった「キッチンモーリ」。1967年には蟻ケ崎に2号店を構えます。
健悟さんは慶応大学を卒業後、都内の高校などで英語教師をしていましたが、店を継ぐため1978年に帰郷。
英司さんのもとで店を手伝いながら料理を学びました。
キッチンモーリ 2代目店主・森健悟さん:
「なんとなく自分の家で商売をやっていると、それ(店)をやるという方向でやってきた」
1981年に育世さんと結婚。2002年、先代が引退する時に1号店を閉め、今は2人で2号店を切り盛りしています。
妻・育世さん:
「2人でやっているから、どっちが欠けてもできない。だんだん年を取って、話した時に『そうだね』『そうじゃない』とか言ってくれる相手がいるのはありがたい」
2人は先代からの伝統を守り続けています。1つが提供の早さ。
今も「1分ナンテ待たせるもんですか!」の看板を設置しています。
(記者リポート)
「実際には何秒で提供されるのか、検証してみます。それでは、カレーライスお願いします。よーいスタート」
健悟さん:
「はい、お待ちどうさま」
(記者リポート)
「早い、タイムは、30秒切っています。あっという間に来ました」
客が他にいないときでしたが、注文から提供まで約30秒です。
さすがにカツカレーは1分以内は難しいということです。
そしてもう一つ守り続けているのがカレーの作り方。
オーブンで焼き上げた自家製のルーにケチャップ、ウスターソース、隠し味のしょうゆを加え、鶏ガラのスープで煮込みます。
キッチンモーリ 2代目店主・森健悟さん:
「ただソースだけじゃ日本人の味には淡泊だから、隠し味としてしょうゆを入れる」
どこか懐かしい味のカレーに仕上がります。
この味を求めて常連客が集います。
一番人気は、サクっと揚げた豚ロースのトンカツにカレーを合わせたカツカレーです。
10年通う常連客:
「いつも同じ味でね、おいしい。長年来ているので、味に慣れちゃった」
約60年ほど通う常連客:
「昔からの味、これがほんとのスタンダード、俺に対して。今だとカレー屋さんもスープだとかいろいろやるけど、これが純粋ですよ」
5年通う常連客:
「奥さんも明るいし、気楽にしゃべれる」
どこか懐かしい雰囲気の店と60年以上変わらない味。
夫婦ともに70歳を超えましたが、体力が続く限り店を続けたいと話しています。
妻・育世さん:
「長いことやっていると、30年、40年ぶりとていう方もいて『やっていてありがとう』なんて言われたりね。やれるところまでという感じですかね。元気でいれば、やり続けたいな」
キッチンモーリ 2代目店主・森健悟さん:
「さまざまな人に味わっていただいて、満足していただいて、楽しんでいただければありがたい」