夜行などの高速バスで隣席に他の乗客が座らないよう、2席分予約して出発直前で1席をキャンセルする“相席ブロック”という行為が横行していて、高速バス各社を悩ませている。
高速バスで横行"相席ブロック"
一般的に新幹線や飛行機に比べて運賃が安く、夜行便を利用すれば、高騰している宿泊費を節約できるため、学生や若年層を中心に根強い人気がある高速バス。しかし、その安さの裏では、長時間「隣に人がいると落ち着かない」「知らない男性に隣に座られるのは嫌」などの抵抗感を持つ利用者も少なくなく、その結果、相席ブロックという行為に及ぶという。

相席ブロックとは、高速バスや夜行バスの座席指定システムを利用して、自分の席だけでなく、隣の席も予約し、出発直前に臨席の予約を携帯電話などでキャンセル、隣の席に他人が座らないようにする迷惑行為のことだ。

高速バスは、乗車直前のキャンセルでも、払い戻し手数料が100円程度という金額であるため、この迷惑行為が全国的に相次いでいるという。

ブロック「前後左右は当たり前」
こうした相席ブロックは、隣の席だけにはとどまらないと『ジェイアールバス関東株式会社』の 営業部担当者は語る。「最近では、自分の前後左右、計5席くらいとるのが当たり前となっていて、もうそれが毎日、特に長距離路線で頻発している状況です。もっと酷い場合には、1階と2階のあるバスでは、1階部分を全部抑えてしまうパターンも確認している」。

更に、福岡を中心に高速バスを運営する西鉄でも同様の被害について頭を抱えている。広報課の樽見優さんは、「これまでにも同様の行為というのはあったが、件数として増加した印象があるのは、2021年頃から」と話す。

払い戻し手数料改定で対策も
バス会社の損失に直結する相席ブロック。西鉄は、2023年10月に、予約決済の期限の変更。2024年12月にも払い戻し手数料の改訂という対策をとった。
WEB、コンビニ、共に予約日を含め3日以内だった決済期限を、WEBは即時決済、コンビニは、予約当日の午前0時までに変更。

そして、直前でも110円だった払い戻し手数料は、乗車日が近づくにつれて段階的に価格が上がる仕組みに改訂した。前日と当日のキャンセルは、運賃の50%としている。

対策の効果もあり、迷惑行為は少なくなったが、完全にゼロになったとは言えないのが現状だ。「1人でも多くのお客様にご乗車いただきたいので、お客様1人1人にご協力いただきたい」と西鉄は広く利用者に呼び掛けている。

相席ブロックについて、法律の専門家は、刑事的には『業務妨害罪』に該当する可能性があるとし、利用するつもりのない席を予約し、直前にキャンセルすることで他の利用者の予約を妨げ、会社の売り上げを損なう行為であると説明。この場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があると話す。また、バス会社が実際に損害を被った場合は、『不法行為』として損害賠償請求が理論上可能だと警鐘を鳴らす。

長時間移動における利用者の快適性と安全確保をいかに図るか。事業者の座席予約の際の工夫や配慮。加えて利用者側の公共マナーとしての過度な“自己防衛対策”は、控える必要があると言えそうだ。
(テレビ西日本)
