過失割合は75:25に
事故現場は8〜10度の下り坂で、夜間は視界が悪く、交差点の手前には「とび出し注意」の文字が道路に書かれていた。
また、犬は黒っぽい毛色の小型犬で、伸縮性のあるリードでつながれていたため、交差点内を比較的自由に動ける状態だったという。
バイクの運転手は、制限速度30キロの下り坂を時速20〜30キロで走行。徐行義務がある場所だったが、減速せずに交差点に進入し、犬に気づかないまま接触した。
一方、女性は、交差点の中央付近で犬が排便するのを待っており、バイクの接近に気づかず、リードを手繰り寄せるなどの対応ができなかった。
判決は事故の原因について、原告のバイク運転手に徐行義務違反や前方不注意の過失があったと判断。しかし、事故当時現場はかなり暗い状態であり、黒色が多い小型犬であった事や、飼い主の女性が通行する車両からは見にくい場所に立っていた事を勘案し、「飼い犬の存在に気付くのに困難な面があったことは否定することができない」と認定した。
一方、被告の飼い主女性については、車道の真ん中で犬に排便させ、一定時間そこに留めていた事、通行車両について注意すべき状況にあったのに直前まで気が付かなかった事などから、注意義務を怠ったと認定した。
裁判所は双方に過失があるとしながら、犬の飼い主の過失の方が大きいと判断。
結果として、過失割合は、原告の運転手男性が25%、被告である飼い主女性が75%とされた。
双方に賠償支払いを命じる判決
東京地裁は10月、ケガをした運転手である原告の請求のうち、慰謝料を130万円、バイクの修理費17万2546円を認めた。
その上で、被告の過失割合75%をかけて、弁護士費用11万円を加えた、総額121万4410円を支払うよう、被告である飼い主の女性に命じた。
一方、被告女性の請求のうち、犬の価値を40万円と認定。さらに、犬を失った精神的な苦痛について、10万円の慰謝料を認めた。合計50万円に原告の過失割合25%をかけ、弁護士費用2万円を加えた14万5000円の支払いを原告に命じた。
ペットの死に慰謝料を認定
ペットは法的には「物」として扱われる。通常、物を壊された場合には損害賠償は認められても、慰謝料請求は認められない。お気に入りの車が交通事故に遭ったとしても、相手に修理費用等は請求できるが、車が壊れた事による慰謝料は認められないのだ。
しかし、判決では「息子が亡くなった後に飼い犬を飼うことになり、それ以降飼い犬に対して家族同然の愛情を注いでいた」ことや、犬が亡くなったことで飼い主は大きな悲しみを抱え、警察官との会話も困難なほど狼狽した事などを踏まえて、「相当の精神的苦痛を受けた」と認定。
慰謝料をもって償うのが相当と判断し、慰謝料支払いを命じた。
