“最後の仮装行列”はクマ出没で中止

ハロウィン直前の宮城・大崎市で、地元の高校生たちが楽しみにしていた恒例行事が中止に追い込まれた。理由は、クマの出没だった。

「ぴえん…」高校生が泣いたハロウィン

大崎市の岩出山高校で毎年行われてきた「仮装行列」。生徒と教職員が思い思いの衣装を身にまとい、地域の商店街を練り歩く、文化祭前の名物イベントだ。

しかし、今年は様子が一変。
付近でクマの目撃情報が相次いだため、学校はやむなく中止を決定した。
体育館に集まった全校生徒124人は、せっかく準備した衣装のまま記念撮影だけで終わることに。

3年生の生徒たち:
「せっかく準備したのに、悲しかったです。ぴえん」
「自分たちはすごく楽しみにしてたのに…」
「中止を聞いてショックでした」
「街を回れなくなったのは残念だけど、気持ちは一つになれたと思う」

3年生にとっては最後の仮装行列。中止の知らせに肩を落としながらも、クラスごとに写真を撮ったり、友人同士で仮装を披露し合ったりと、短い時間を笑顔で過ごした。

仮装行列が中止となり記念撮影する生徒たち
仮装行列が中止となり記念撮影する生徒たち
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「生徒と職員の安心安全が一番」苦渋の決断

岩出山高校の熊谷武彦校長は、「生徒と職員の安全を最優先に考え、職員全員で中止を決断した」と説明する。

「生徒にとっては非常に残念。私たちも楽しみにしていた。
でも全体で写真撮影ができたのは、せめての思い出になったと思います」

近所の住民からも「せっかく子どもたちが一生懸命準備していたのに残念」と惜しむ声が聞かれた。

個性あふれる衣装も広く披露できず…
個性あふれる衣装も広く披露できず…

“過去最多”のクマ出没 生活圏に迫る脅威

大崎市岩出山周辺では最近、民家の敷地内でクマが出没し、玄関の網戸がゆがむなど被害も出ている。
宮城県によると、10月22日までの県内のクマの目撃件数は513件。
これまでの過去最多を大きく上回るペースだ。

宮城県は「クマ出没警報」を11月末まで延長し、初めて「人身被害対策強化期間」も設けた。

大崎市周辺でもクマの被害が相次いでいる
大崎市周辺でもクマの被害が相次いでいる

“非日常”が日常に クマと人との境界が消える秋

「ぴえん」で終わった高校生たちの仮装行列。
笑顔と涙の裏で、クマの脅威が地域の行事や日常生活を脅かす現実が浮かび上がる。

「怖いけど、楽しい思い出にはしたかった」
そんな声に、秋の宮城を包む複雑な空気が滲んでいた。

仙台放送
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