住民の願いがついにかなった。
札幌市豊平区にある「水車町」の読み方が10月29日から「すいしゃまち」に変更された。
遂に実現―“ちょう”から“まち”へ
「午前10時です。信号機の表示板に貼られた『Suisha-cho(すいしゃちょう)』のシールが今はがされました。後ろから『Suishamachi(すいしゃまち)』の文字が現れました」(水上孝一郎 記者)

10月28日まで行政上の読み方は「すいしゃちょう」だったが、29日からは「すいしゃまち」だ。
これまでの読み方に長年もやもやしていたのが、他でもないこのマチの住民だ。
「昔から皆さん、『すいしゃまち』『すいしゃまち』というふうに読んでいましたんで、製粉だとかなんとかで水車が8基あったんですね」
「水車のあるマチということで『すいしゃまち』という理解しかなかったもんですから、ある日突然、『すいしゃちょうなんだよ』って言われて『おやっ?』と思って」(いすれも旭水町内会 会長 高橋恒夫さん)

読み方が食い違ったワケとは?
今から120年ほど前の明治時代、豊平川のかつての支流・水車川沿いには多くの水車小屋が建っていた。
水車の力を使って精米や製粉が行われていたのだ。

1950年、町名が変更されたとき、行政が告示した文書には漢字のみが書かれていた。
住民はこれを「すいしゃまち」と読んだ。

しかし1979年に告示された文書には「すいしゃちょう」と読み仮名がふられていた。

ちぐはぐな状態は続く。
札幌市が設置した信号機の表示板を見ると、2016年は「Suisyamachi(すいしゃまち)」。

ところが2017年、どちらが正しいのか、住民が市に問い合わせたところ、市はあわてて「Suisha-cho(すいしゃちょう)」に変更した。

「(Q:『すいしゃちょう』って読む人はいますか?)私は一人も会ったことないですね。いないです」
「(Q:ほぼほぼ『すいしゃまち』だと?)そうですね。ここの旭水町内会と隣の第14分区町内会っていうのが水車町の一部を持っていて、お互いの町内会の集会で、やっぱり『すいしゃまち』だよねっていう話になって」
「なんとかこれを取り戻そうという機運が高まってきたというとこですかね」(いずれも高橋さん)

このマチを「すいしゃまち」という愛着のある読み方にしてもらおうと、高橋さんたち町内会は住民1000人以上の署名を集め、市に要望書を提出。
10月6日、市議会で名称変更が全会一致で可決された。

住民も“まち”派が多数
「(Q:語感、響きは?)『すいしゃまち』が好きです」
「(Q:理由は?)なんかやわらかい感じがしますよね。『すいしゃちょう』っていうとカタいっていうかな。無理してつけたなっていうイメージがある」
「『まち』の方があの親しみがあっていいなと。なんか優しさを感じる」
「なんか『まち』の方がっぽいなと。(Q:この地区っぽいってことですね)『まち』っぽい、『ちょう』っぽくないなと思いました」(いずれも水車町の住民)

自らの手で表示板を変更―「感無量です」
町内会館でも高橋さん自ら古い表示板を外し、住民が愛する読み方になったものに付け替えた。
「やっとこの日がきた。『すいしゃまち』という呼び名に関しては愛着があります。それがこうして取り戻せた。町内のみなさんの熱い思いが実って感無量です」(高橋さん)
そこに住む誰もが“しっくりくる”「すいしゃまち」。
マチの歴史に新たな1ページが刻まれた。

市内には他にも様々な読み方のマチが
「水車町」以外にも札幌市内にはいろいろな読み方がされるマチがある。
 
例えば、北区の「麻生」。
正式は「あさぶ」と読むが、住民の中には「あざぶ」と読む人も。
東京の麻布(あざぶ)の影響で、濁点がつくと思っている人も多いようだ。
麻生連合町内会は「にごらない『あさぶ』を伝え続けていきたい」と話している。
さらに、南区の「南沢」。
正しくは「みなみさわ」だが、長く住む人たちは「みなみのさわ」と読む。
周辺に「中ノ沢」や「北ノ沢」など、「の」がつく地区が多いためだということだ。
ただ近くにある大学に道外から進学した学生の中には「みなみさわ」と読む人もいるそう。
南沢地区町内会連合会は「それぞれの好きな読み方を尊重できれば」と話している。

 
       
         
         
        