岡山県鏡野町の山田養蜂場の本社ギャラリーで開かれている近代ヨーロッパの名画のコレクション展が話題となっている。なぜなら、疑惑の渦中にある作品も展示されているからだ。

◆養蜂場のギャラリー「バルビゾン派」と呼ばれる絵画展示中

公開されているのは19世紀のフランスで生まれたバルビゾン派と呼ばれる絵画。

バルビゾン派とはミレーやルソーなどフランスのバルビゾンという村に集った画家たちのグループで、村の風景や農民の生活ぶりを描いている。

ジャン=フランソワ・ミレー「シャイイ高原の女羊飼いと羊の群れ」
ジャン=フランソワ・ミレー「シャイイ高原の女羊飼いと羊の群れ」
この記事の画像(6枚)

◆ある作品に注目が…

山田養蜂場では新たに収蔵したコローの「霧の朝」公開している。同社社会活動室の黒瀬かおり室長は「コローらしい銀色のような灰色のような煙ったような美しい色合い、霧の中、朝日に輝く木々がとても美しい作品なので、直に見てもらい美しさを楽しんでほしい」と話す。

バルビゾン派から現在までのフランス絵画の変遷が分かりやすく並べられている中、ある作品にも注目が集まっている。

ジャン=バティスト=カミーユ・コロー「霧の朝」
ジャン=バティスト=カミーユ・コロー「霧の朝」

◆作品の額縁から現れたのは…贋作(がんさく)に貼るラベル

それが、1900年代前半、パリで活躍していたポーランド出身の画家・モイズ・キスリング作の「モンパルナスのキキ」だ。山田養蜂場が2013年に東京の美術館から購入したもので、作品にはキスリングの息子直筆の鑑別書があったと言うのだが…。

作品の額縁を開けると、1枚のラベルが現れた。ヴォルフガング・ベルトラッキ氏が贋作(がんさく)を作ったときに貼るラベルだと言うのだ。

ベルトラッキ氏が贋作を作ったときに貼るラベル
ベルトラッキ氏が贋作を作ったときに貼るラベル

◆ドイツの贋作師に確認すると「自分が描いた」

山田養蜂場によると作品はドイツの贋作師、ヴォルフガング・ベルトラッキさんの作品ではないかとされていて、2025年4月、広島県福山市の展示会に貸し出している際、関係者に贋作の疑いを指摘されたという。

その後、本人に確認したところ「自分が描いた」と話したのだそう。

キスリングの他の作品に記されたサインを見比べてみても…。

上)・贋作とされる作品 下)キスリングの作品
上)・贋作とされる作品 下)キスリングの作品

◆「贋作かもしれないと思うと…」美しい作品の展示は続け、科学分析へ

取材に対し黒瀬室長は、「驚いた。まさか自分たちのギャラリーにも(ベルトラッキ氏の)作品があるとは思ってもみなかった。美しい作品なので贋作かもしれないと思うと悲しい気持ちになった」と心情を打ち明けた。

山田養蜂場は同社ギャラリーで10月17日から11月9日まで開催している展示会で贋作の疑いがある作品として展示を続けるが、今後、科学分析を行うことにしている。

山田養蜂場社会活動室 黒瀬かおり室長
山田養蜂場社会活動室 黒瀬かおり室長
岡山放送
岡山放送

岡山・香川の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。